
特派員Mさんの寄稿でUPしそこねていたものがありました。
カルロス・アコスタのスパルタカスです。ボリショイでじっくりあわせて舞台に立った後でのロンドン公演ですから出来が良かったのは当然ですね。カルロスのスパルタカスは7月9日の当方のボリショイ最後のバレエ観戦の演目で感慨深いものです。
ボリショイ ロンドン公演(at London Coliseum)
6 Aug 2007
「Spartacus」グリゴローヴィッチ版
スパルタカス:カルロス・アコスタ(英ロイヤル・プリンシパル)
クラッスス:アレクサンダー・ヴォルチコフ
フリージア: アンナ・アントニーチェワ
アエギーナ: マリア・アラシュ
カルロス・アコスタのスパルタクスの日とあって、チケットは早くから完売。当日はチケットのリターン待ちの人々が長い列をなしていた。いつも埋まらないと言われているコリセウムの劇場だが、40人ほどの立ち見が入っていた。当日劇場側の判断で立ち見も設けたのであろう。イギリスでのカルロスの人気がうかがえた。
先週までの凝った舞台セットの演目とは違って、シンプルで、どこかオールド・ファッションなライティング。68年のプレミア時代からほとんど変えていないのであろうが、このシンプルさがダンサーを引き立て、狭い舞台もスペースが広く感じられ、セットや衣装ではなく「踊りで見せる」という本来のボリショイらしいバレエとなったことに嬉しく思えた。スパルタクスは2004年のロンドン公演以来見ていないが、今回はキャストも、主に男性主役ダンサーが、随分代わっているので、新しいキャストにも期待していた。
幕が上がるなり力強い音楽、男性主体のダイナミックな群舞に他のカンパニーでは見られないスケールを感じた。
ボルチコフのクラッススは、今ひとつ統率力のないリーダーに見えたが、演目の初日で緊張していたのかもしれない。どことなく音楽に動きが付いてゆけず、メリハリのある動きがこなせていないように見えた。3幕とも踊り続け、難しいリフトやジャンプもたくさんあるので、最初は蓄えていたのかもしれないが、ストーリーが展開して乗ってくると徐々に彼も良くなっていった。
アコスタはロイヤル・バレエで観ていた時にはひときわガッチリとして存在感があるように思っていたが、ボリショイの中に入ると小柄で脚などはかなり華奢に見えてしまったのに驚き。やはりボリショイのダンサー達は皆大きいのだ・・・
彼も最初はどこか力を出し切れていないような印象を受けたが、次第に良くなっていった。アダージョのような哀愁のあるソロのダンスも、アントニーチェワとのパートナリングも、また、力強いグラディエーターとしてのダンスも、使い分けにメリハリがあった。跳躍や回転などの激しい動きの際も、一つ一つのポーズが非常に美しかった。ジャンプの時の後ろ脚が特に印象に残った。スパルタクスとしてはきっちりしすぎるぐらい、基本に沿ったムーヴメントだった。ジャンプの滞空力もひときわ長い。
アラシュは先日のニキヤ役よりもずっと演技にも身が入っていて役作りができていた。ただ、「誘惑」という意味では今ひとつ色気に欠けているようには見えた。踊りは歯切れの良い曲に遅れることもなく、キビキビと踊っていた。
アントニーチェワはこの役では何度か見ているが、いつも演技力がある。体全体で内面から表現できるという意味では、パートナーのアコスタの演技が薄く見えてしまった。アントニーチェワの奥深い表情と音楽性にはいつもながら感動させられる。
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