ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

新国立劇場バレエ団『シルヴィア』10月28日(日)

2012年10月30日 | Weblog

Nさんから新国立劇場バレエ団 シルヴィアの二日目の観劇記を

寄稿頂きました写真は英国芸術フェスティバルのポスター。

米沢唯さんの高い集中力と切れないスタミナに脱帽いたしました。」

とのことです。

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新国立劇場バレエ団『シルヴィア』10月28日(日)

庭師/エロス:八幡顕光
伯爵夫人/ダイアナ:堀口 純
伯爵/オライオン:マイレン・トレウバエフ
家庭教師/シルヴィア:米沢 唯
召使い/アミンタ:菅野英男
ゴグ:野崎哲也
マゴグ:江本 拓
ネプチューン:細田千晶
マーズ:長田佳世
アポロ:さいとう美帆
ジュピター:寺田亜沙子
新国立劇場バレエ団『シルヴィア』2日目を鑑賞した。
シルヴィアは米沢唯さん、
最後までスタミナが切れず溌剌としたヒロインを好演していた。
踊り1つ1つが大きく尚且つ雑にならず、
決して長身ではない身体でありながら見栄えがあり、
奏でられている楽器の如 き
音楽性豊かな踊りに終始魅せられた。

アミンタ役の菅野英男さんとは何度もペアを組んで
すっかり定着しつつあるが、
今回も幸福感一杯のグラン・パ・ド・ドゥを披露し
観ているこちらまで心温まる思いがした。

ダイアナの堀口純さんも素敵であった。
強さを前面に出していた昨日の湯川さんとは好対照で、
透明感のある輝きを放ち、
内に秘めた芯の強さを静かに感じさせる女神だった。

エロスの八幡顕光さんも好演で、
観客と舞台との間の距離をぐんと縮めつつ
変幻自在に物語を引っ張っていた。

オライオンはマイレン・トレウバエフさん、
実に濃厚で邪悪そうでありながら
シルヴィアによる誘惑で
彼女の指示に生真面目に従う姿は妙に面白く
客席のあちこちで笑いが起こっていた。

ふと思ったことは、
オライオンは森の野蛮な住人という設定であるが、
インテリアコーディネーターの才能があるのか
住処はいたく洗練されていることである。
全体覆う大きな岩壁の窪みを生かして蝋燭を万遍なく配置し、
日本の百物語状態にはなっていない。
女性の彫刻の頭部分は向かって左手に置いて
スペースを存分に活用、
暖炉も手作りし、前に置いている寛ぎ用の椅子は
柱の切れ端、丁度木の丸太のようなもので
座り心地が良さそうである。
荒っぽく見えても几帳面な一面もあると想像、
強面な住人がせっせと家作りに勤しむ姿が思い浮かび
どこかユーモラスだ。

3幕は吹奏楽のコンクールなどでもしばしば演奏される
バッカスの行列で幕が開く。
青い海に白い神殿、古代ギリシャの世界観に溢れている。
ダイアナに率いられる中に
ネプチューン、マーズ、アポロ、ジュピター、4人の女神がいて
踊りの見せ場を作っている。

ネプチューンの細田さんは研修所出身で
今シーズンよりファーストアーティストに昇格、
音楽をたっぷり使っての鷹揚とした踊りが美しかった。
マーズの長田さんは戦いに赴くような激しい踊り、
アポロのさいとうさんは可憐で軽やか、
ジュピターの寺田さんは長い手足を存分に生かした鋭くも優雅な踊りで
4人それぞれのキャラクターが持つエッセンスがしっかりと表現されていた。
プティパ作品のディヴェルティスマンのように
1人踊っては拍手、レヴェランス、ではなく
途切れることなくリレーのようにソロの踊り、そしてコーダへと続く構成で
冒頭のファンファーレから一気に駆け抜ける疾走感を失わない。
物語ではダイアナの従者達が女神の神々しさを称える場面であるが
観客もまた、拍手で舞台上の女性ダンサー達を称賛していた。

音楽についても挙げておきたい。
ドリーブの美しい曲の数々を
東京フィルハーモニーが品良く膨らみ豊かに演奏していた。
ガラなどで有名なパ・ド・ドゥのアントレ部分のワルツは
2幕の序奏に入っているが、
雷光のような重厚感ある部分からそれがおさまったかのように
静かな旋律に続くところは特に出色、
ゆったりと寄せては返す波のような優しさに満ちていた。

さて、次は31日(水)、バーミンガムロイヤルバレエより
佐久間奈緒さん、ツァオ・チーさんがゲストとして出演する。
看板ダンサーの名演を楽しみに待ちたい。
そしてエロスは福田圭吾さん、オライオンは厚地康雄さんで
ともにバーミンガムに在籍していたお2人である。
(福田さんはローザンヌのコンクール入賞後留学、
厚地さんは新国立入団前まで在籍)

バーミンガムの空気がそのまま伝わってきそうな
ダンサーで固められた舞台が今から楽しみである。



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3 コメント

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いつもありがとうございます (バレエファン)
2012-11-05 21:50:09
Nさん、管理人さん 
いつも新国立バレエ団の演目をタイムリーに観劇記UP頂きありがとうございます。
シルヴィアを是非見たくなりました。
久し振りにこちらに立ち寄りました。
これからも是非バレエの観劇記お願いします。
返信する
お礼遅れ申し訳ありません (管理人)
2012-11-14 23:07:33
バレエファンさん
何時もコメントありがとうございます。
お礼遅れ申し訳ありません。
今後共是非時々お越しください。
返信する
ありがとうございます (N)
2012-11-17 21:27:02
バレエファンさん、お礼が遅くなりましてすみません。
この度もコメントいただき
ありがとうございます。
シルヴィアをご覧になりたくなったと拝読し、
大変嬉しくなりました。
今シーズンも寄稿して参りますので、
どうぞ宜しくお願いいたします。
是非またお立ち寄りくださいませ。
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