1 始めに
中国の美術史を、王朝の区分に従い8つの時代に分ける。それぞれの時代の特色を一言で纏める。
2 先史時代から前/後漢
造形技術の確立期。
金属加工の蝋型鋳造法・彫金・象眼、陶芸の高温焼成・釉薬、漆器の技法等が確立した。書道では紙の発明と筆の進歩があった。絵画も発展を見たが、現存する作品は少ない。また、仏教がインドから伝わり仏教美術も生まれた。
青銅器で曾候乙墓の編鐘は大きさと精巧さで類を見ず、青銅器の完成形である。
3 三国・南北時代
芸術の芽生え。
技法の確立と社会の生産性が高まりによる貴族層の誕生を遠因とし、作者を特定できる作品が生まれた。絵画の顧愷之と書の王義之は、芸術性を確立した。
王義之には臨模本しかないが、現在も書の手本である。
4 唐
各分野の芸術が花咲く。
大唐帝国と呼ばれ、世界帝国としの繁栄、農業・商工業の隆盛による貴族以外の富裕層の出現、西アジアを中心とする胡人との交流、仏教の繁栄などがこれに貢献した。。
仏教美術は成熟期を迎え、仏像、仏画に傑作が多い。絵画では山水画が評価を受け、書は個性を主張する書道家が生まれた。工芸品は精巧になり、唐三彩、金属工芸品、漆器に傑作が多い。
明器である唐三彩には写実性の高い作品が多い。
5 五代・北宋
古典として規範となる作品が多く誕生。
唐滅亡後の混乱の後、宋が中国を統一した。この間に貴族層は没落し、封建地主層が力を持ち、科挙による士大夫が芸術の主要な担い手となった。仏教美術は爛熟期で、仏像は写実的となり、石窟寺院も多く営まれた。墨による自然主義の山水画が確立した。中国を代表する青磁・白磁が作られた。
郭煕「早春」に、山水画の様式や手法の確立を見ることができる。
6 南宋
多様な様式の饗宴。
北宋を受け継いだ南宋では華南の特色を取り入れ、宮廷用の画院や官窯が充実し、地主・裕福階級、士大夫、僧侶なども芸術を担った。陶磁器は、輸出品としても繁栄し、名品も多い。絵画も同様である。
建窯の窯変天目碗は、日本にしか残っていない銘品であるが、何万という碗を作っていた中で奇跡的にできた銘品である。
7 元
復古主義の時代。
異民族支配時代で、前の時代に芸術を担った人々は低く見られた。文人画家の台頭が特記されるが、見るべきものは少ない。
黄公望の富春山居図などがある。
8 明
日本に影響を与えた唐、宋と同じく、芸術が花開。
明は経済的に豊かな華南から興り、この豊かさにより、芸術が市民階級にまで及んだ。科挙に伴い朱子学が盛隆を極めた。文人画と陶磁器は宮廷の保護も厚かった。
絵画では「明の4大家」、陶磁器では景徳鎮が有名で、五彩穿花龍文大盤は爛熟の美を持つ。
9 清
伝統美術の終焉。
明の美術を引き継ぎ、後半には西洋の影響もある。絵画に輝きを見せ、次の時代を予感させるが、異民族の王朝の衰退と共に美術は衰えた。
郎世寧の松鶴図の写実、琺瑯彩西洋人物図瓶の琺瑯技法に、西洋の影響が濃い。
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