木炭譚 -Small is beautiful and useful-

環境文化の実践ブログです。大量生産大量消費大規模流通では得られない時間、空間、人間の3つの「間」を大切にした実践日記。

ガンディー獄中からの手紙

2017-03-14 15:45:02 | 読書譚
【「ガンディー獄中からの手紙」中島岳志、NHK100分de名著、2017.2.】
「パリ協定の温室効果ガス80%削減」に向けても示唆に富む主張が満載でした。「よいものはカタツムリのように進む」と題する章で著者は、「・・・アヒンサーとつながった倫理的経済というものが生まれてこなくてはならない。そのためにスワデーシーが重要なのだというのがガンディーの主張」としています。アヒンサーとは「愛」、スワデーシーとは「土地の製品を買うべきとの主張」のようです。「インドは綿花をイギリスに輸出しながら、それを加工した布製品を大量にイギリスから輸入していました。・・・この構造を変えるために、多くの独立運動家たちは「インドでも機械化を進め、イギリス製品に対抗できる高付加価値商品を大量生産できるようにしよう」つまり市場原理で「富の流出」に対抗しようというビジョンを描いたわけです。ところが、ガンディーはこれを否定します。そんなことをやって何になる、同じ市場経済の論理で動くのなら、インドがまたもう一つのイギリスになるだけではないか」。「スワデーシーの信奉者は注意深く自分をとりまく状況に目を配り、たとえ外国製品より品質が劣り、あるいは値段が高くとも、土地の製品を優先することで、できうるかぎり隣人たちを援助することになるでしょう」。さらに、スワデーシーにの根本にはもう一つ、村落社会に対する非常に強い評価と、都市社会に対する懐疑的な念があります。余剰をどんどんつくって欲望あを高めていくのではなく、必要なものを必要なだけ自分たちだけの手で生産する。そうした社会のありか方を、ガンディーは非常に重要だと考えていました。」



「やまと言葉で哲学する:竹内整一、春秋社、2012.10.」 

2016-09-22 21:46:32 | 読書譚
日本文化は地球環境問題解決への原動力になり得る。また、日本文化は「やまと言葉」に顕在化しているとの考えから、表記の図書を読みました。副題は≪「おのずから」と「みずから」のあわいで≫です。内容は以下のとおりです。
【第一部:日本人とやまと言葉】≪・・・日本語では「おのずから」と「みずから」とは、ともに「自ずから」である。そこには、「みずから」為したことと、「おのずから」成ったことが別事ではないという理解が働いている。・・・以上のような言葉遣いがあるゆえに、日本の思想・文化は、繊細で、柔軟・多彩でゆたかな包容力を持っていると評価されもしてきたのであるし、逆に、きわめて曖昧・無責任な雑然とした成り行き主義であると批判されてもきたのであろう。・・・「あわい」という言葉は、「向かいあった二つのもの」が出会い、重なり交わる、あるいは背き逆らう、そうした相乗・相克のダイナミックな状態や関係を表す言葉だということである。・・・それは、「自然」と「自己」、「自然」と「作為」といったような、固定した概念としての名詞と名詞の二項対立として考えることではない。・・・≫ ⇒ 「おのずから」を「地球環境」、「みずから」を「人間社会」に対応させて考えて行動するエネルギーを日本文化の中に見出すことができるのではないかと感じました。
【第二部:やまと言葉で哲学する】31項目の「やまと言葉」についての考察をおこなっています。例えば「さようなら」の項目では≪・・・一般に世界の別れ言葉は①GoodbyeやAdieuのような、神のご加護を願うもの、②See you againや再見のような、また会うことを願うもの、③Farewelのように、「お元気で」と願うものの三タイプに大別される。「さらば」「さようなら」は、そのどのタイプにも入らない。・・・そこには、別れに際して、「さようであるならば」と、いったん立ちどまり、何事かを確認することによって、次のことに進んでいこうとする(逆に、そうした確認がないと次に進んで行きにくい)という日本人の独特な発想があるといわれる。・・・≫
【第三部:無常ということ】11項目を立てて、やまと言葉の感受性を手がかりに考えています。その内の2つの項目に触れると≪「はかる」という営み:・・・文明とは、人間がさまざまに「はかって」きた歴史の蓄積でもあるといえるが、その「はかる」ことがアンバランスなまでに突出して求められてきたのが、近現代の文明、とりわけ科学技術的な考え方ということができる。・・・≫ ≪ゆたかな「有限性」へ:・・・「有限性」に、なお「無限」のゆたかさを感じとるという点において、あらためて継承し発展させ、世界に発信すべき可能性のある感受性のように思う。・・・≫ ⇒ 薪炭林として管理・利用され、かつ、生物多様性をも向上させていた日本の「里山」。有限な地球環境と人間社会との「あわい」で形而上的意味での現代の「里山」づくり、世界各地の環境特性と相乗効果を持つ様々な「里山」づくりの実践がサステイナブル社会実現に必要だとの思いを強く持ちました。