MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2587 MT車のメリット

2024年05月25日 | うんちく・小ネタ

 私の車はアニュアル車。イマドキ何でそんなものに乗っているのかとよく聞かれますが、慣れ親しんでしまったものは仕方がない。マニュアル車(以下MT車)にはMT車なりの乗り味もあって、なかなか離れがたいのが現実です。

 特に私は、オートマ車のアクセルから足を離している間の(ニュートラルレンジに入っているような)頼りない状態が大嫌い。街中を走っていても、パワーをかけているのかエンジンブレーキをかけているのか「どちらかにしろよ!」言いたくなるのは、元オートバイ乗りの性のようなものかもしれません。

 とはいえ、先日のようにGWの高速道路で大渋滞にはまったりすると、隣の車線の自動運転と思しき高級車やオートマSUVが羨ましくなるのもまた事実。クラッチを踏む左足がかったるくなってくるのをさすりながら、己れの意固地さを呪ったりしています。

 欧州車の一部を除いて、今ではほとんど見かけなくなったMT車。今後、乗用車のEV化がさらに進めば、トランスミッションすら要らない時代が(そう遠くない将来)確実にやってくることでしょう。

 そんな折、私のようなこだわりのドライバーにも朗報が。4月30日の自動車情報サイト「ベストカーWeb」に、『運転は「ちょいムズ」のほうがいい!? 安全運転には3ペダルマニュアル車のほうがいいってホント!?』と題する記事が掲載されていたので、この機会に紹介しておきたいと思います。

 国内を走るクルマの実に98%がAT車であるといわれる現在、新型車ではマニュアルミッションのモデルを探すことすら難しい。スポーティな走りや燃費面でのメリットがあるといわれていたMT車だが、技術的な進化によってそうしたポイントですら、今やAT車に軍配があがるケースも多くなったと記事は話しています。

 もはやAT車と比べてMT車にはメリットはないのか…とMT車好きの人は落胆するかもしれないが、実はMT車にはもうひとつ、AT車と比較して大きなメリットがあるというのが記事の指摘するところです。

 それは、AT車と比べてMT車のほうが事故を起こす確率が低く、安全性が高いとされていること。実際、2000年に鳥取環境大学・情報システム学科の調査においてAT車とMT車の事故率を比較した結果、全てにおいてAT車のほうが高く、「右左折時」や「出会い頭の衝突」、「追突」では、AT車はMT車と比較してほぼ2倍という高い事故率を記録していると記事はしています。

 高度な安全装備が備わる現代のクルマでは少々事情は変わってくるかもしれないが、ここで言う「MT車の安全性の面でアドバンテージ」とは、具体的にはどんな点なのか。

 例えば、最近は社会問題ともなっているアクセルとブレーキの踏み間違いによる暴走事故。高齢者ならずとも、誰もがその加害者になる可能性があるが、(記事によれば)MT車ではその踏み間違いによる急発進が、構造上起こりづらいということです。

 確かにAT車は、ブレーキペダルから足を離し、アクセルを踏み込むだけで走り出すことができます。しかし一方のMT車は、一度クラッチペダルを踏んだうえで、アクセルペダルで徐々にエンジンの回転数を上げながらクラッチペダルを戻して駆動をつなげなくては走り出すことができません。

 こうして、かなり複雑な手順を踏む必要があるMT車では、意図しない急発進をした場合でも、エンストやクラッチペダルを踏み込むことで、AT車のような暴走を防ぐことができると記事は説明しています。

 最近では、意図しない急発進を防ぐ「誤発進抑制機能」を備えるAT車も増えてきているが、(全ての車に搭載されているわけではないため)構造的に踏み間違いが起きにくいMT車は、安全面での安心感はより高いということです。

 さらにMT車は、エンジンブレーキを使用しやすいことから長い下り坂が続く峠道などでの減速を含めたスピードコントロールがしやすく、フットブレーキの踏みすぎによって発生する「フェード現象」や「ペーパーロック現象」を防ぐことができるのも大きな利点だと記事は言います。ブレーキのトラブルは即事故につながる。それだけに、これもMT車の安全面でのメリットと考えていいということです。

 加えて、(これは私も前々から感じていたことですが)運転時の操作や負担が少ないAT車では、運転に余裕があるぶん、ほかのことに気を取られることも多くなるというのが記事の認識です。

 テレビを見たり、スマホを操作しながらのいわゆる「ながら運転」ができるのも、操作に余裕があればこそ。わき見をしたり眠気が起こったりと、運転をするための手順が少ないAT車では、そのぶん注意力が散漫になって事故につながる可能性もあると記事は指摘しています。

 MT車を運転するには手数が必要で、ほかのことに気をとられる余裕が少ない。「余裕がない運転」というと何だか危険なイメージがあるが、MT車はほかのことに惑わされることなく、運転に集中ができる環境にあるということです。

 AT車しか乗ったことがないという人からすると、「MT車の運転は難しい」と敬遠してしまうかもしれないが、ひとつ間違えば周りの人を傷つける可能性があるクルマの運転は、少々面倒で難しいくらいの方が緊張感を持って臨めるのかもしれないと記事はしています。

 データによれば、令和3年中に運転免許を取得した人のうち、AT限定で取得した人は70%を超えている由。確かにこの数字を見る限り、MT車はやはり「昭和の遺物」、MTを操る技術も日本人の間から失われていくのかもしれません。

 それだけに、「クルマを操る楽しさを感じられる」という感覚的な部分だけで語られがちなMT車の魅力について、安全性という面でもAT車と比較してメリットがあるという点をぜひ忘れないでいてほしいと話す記事の指摘を、私も興味深く読んだところです。