伊藤 計劃さんの「虐殺器官」を読みました。彼の本は、「ハーモニー」についで2冊目。というか、悲しいかな若くして亡くなっており2冊しかないのです。(残念)この本は、最初の本です。
以前、「ハーモニー」を読んだ時、今までの日本人作家にないアイデアと感じ、すごい作家だと思いました。癌でなくなる直前に病室で書かれた作品です。とにかく、普通じゃ想像できないし、今までこういうアイデアと書き方の日本人の本って私は、読んだことないなあって思いました。
そして、今回の「虐殺器官」。こちらのほうが、少しわかりやすい本です。内容は9.11以降の世界のカオスです。アメリカの米軍大尉クラヴィスが主人公。彼は、国からの命令された人物を暗殺することが仕事。そして、その相手は謎につつまれいる、世界で虐殺をおこさせる人物ジョンポール。というのが簡単なストーリーですが、単なる残虐な戦争ものかと聞こえますが、全然違います。ストーリーは、既に未来世界なのですが、複雑な思考が混ざっていて、読み手に一体なに?と先を読みたくさせます。とにかく、改めてすごい作家だと思いました。
この本のなかで、考えさせられて言葉のなかから:
「ある自由を放棄してある自由を得る」「アメリカはプライヴァシーの自由をある程度放棄して、テロの恐怖という抑圧からの自由を得ている」
「マーク・ロスコの抽象画のようにぬり込められた分厚い懺悔」:美大出身の作家で、よく現代アートや現代音楽の作者の名前が思いもしないところに的確な表現ででてきます。
「人間がどんな性格になるか、どんな障害を負うか、どんな政治的傾向を持つか、それは遺伝子によってほぼ決定されている。心臓や腸や腎臓がそうであるべき形で造られているというのに、心がそのコードから特権的に自由であることなどありえない」:う~ん、どうなんだろう。生まれながらにして何かしら、その人間の根本は決まっているような気がしないでもないです。それをどう使うかが人間なのかも?
「すべての仕事は、人間の良心を麻痺させる為に存在するのだ」:なるほどって思いますよね。仕事って何かしら頼まれて行うわけで、どこまで自分で納得しているのか?
「良心とは、人間の脳にあるさまざまな価値判断のバランスのことだ」:深いですよね。
インパクトのあるタイトルですが、すごい本です!
コメントありがとうございます。
「人間がどんな性格になるか~」は、現に同じ家庭で育つ兄弟でも全く違う性格、違う方向性を持つのを見ると、そうかも~と思えてきますね。
「ハーモニー」は題名からして興味をそそられますね。
「ハーモニー」はもっと先の未来の話しで、さらに複雑でした。