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水川青話 by Yuko Kato

時事ネタやエンタテインメントなどの話題を。タイトルは勝海舟の「氷川清話」のもじりです。

・アンドリュー・スコットがファンやプライベートや役者としての夢について

2013-11-16 14:41:33 | Andrew Scott

BBCが11月28日に冷戦スパイドラマ「Legacy」を放送するのに合わせて、ソ連のKGBスパイとして出演するアンドリュー・スコットのインタビュー記事が11月15日付の英インディペンデント紙に載りました。


アンドリューの発言がある程度まとまった形で掲載されるのは、そんなにしょっちゅうないのと、「らしいなあ」とニコニコすることを色々言っていて面白かったので、発言部分で目に留まった部分のみを訳します。全訳ではもちろんないです。「ですます」の感じがしないので敬語にしていないし、不要に語尾をいじりたくないので「だよ」「だよね」とかあまり足してません。まして「だぜ」をや。その結果、ちょっとぶっきらぼう気味な訳になってます。



ちなみにインタビュー場所はロンドン・BFIのレストラン。映画「When Harry Met Sally(恋人たちの予感)」の一番有名な場面のお店に似てるからと、ニッと笑って一番有名なセリフ「I'll have what she's having」をアンドリューが。映画未見の方にはぜひ観ていただきたいので場面の解説はしません。意味としては「彼女と同じものを」。

◆ 俳優のインタビュー記事はひどいものが多くて……と言うアンドリュー(うん、これよく言ってる)、これはそうなりませんように、と。

「演技について話をするのって、話を矮小化してしまうことがあるし、退屈だったりするから。でももちろん(自嘲的にニヤッと笑いながら)、僕はそうじゃない。僕の話はものすごく面白いから。僕の言葉はどれも名言だ。スパイスの効いた名言に次ぐ名言。まるでオスカー・ワイルドと同席してるみたいな……僕の方が髪型はいけてるけどね!」


◆ 「シャーロック」のモリアーティのおかげで自分のキャリアは何段階かステップアップしたと認めるアンドリューは、クロワッサンをつつきながら、「『シャーロック』で全員のキャリアが変わったし、それは本当に喜んでる。重役たちは見知った顔を見たいわけだから、自分が何かに適役かどうか確かでなくても選んでもらえたりするので」と。

「こんなに大人気のテレビ番組に出るっていうのは、すごいことだった。本当にびっくりした。たくさんの人が第一話でいきなり番組のファンになってくれて。あり得ないくらいの反応だった。今でも道端で呼び止められるんだ。色々な人があの番組について、僕に話しかけてくる」

◆ 記事いわく「『シャーロック』ファンがいかに熱い集団かは業界でも有名」だけれど、アンドリューは「ファンはクレージーだっていう一般的な印象があるけど、そんなことない」と。「とても礼儀正しいし、一線を越えてきたりしない。ファンレターはたくさんもらうし、もちろん中にはちょっと気持ち悪いのもあるけど、だいたいはとても感動的でクリエーティブなんだ。自分が描いた絵や、自分オリジナルの『シャーロック』のストーリーとかを送ってくれる。いろんな人にとって現実逃避の手段なんだろうし、それは素晴らしいことだ」。

 「僕は人が大好きなんだ。だから敵に回したくない。いつも人に囲まれて騒がれてる俳優仲間が、そういうのを毛嫌いするようになるのを見てきたけど、自分のことはあけっぴろげにしないで内に秘めておけば、ある程度まではコントロールできる。僕が尊敬するタイプの役者は、いろいろな役柄やジャンルの間を渡り歩いていく。僕もそういう役者になろうとしてるんだ。そう思うなら、自分の私生活については慎重にならないと」

◆ モリアーティがなぜこんなに強烈な印象を与えたか。「いわゆるお約束な悪役じゃなくていいから。ウィットたっぷりで、観る人はそこが好きなんだと思う。シャーロックとはまったく対等の好敵手だし。すごく気まぐれでくるくる変わるし。モリアーティ以来、いろいろな役のオファーを受けたけど、それはモリアーティの中にいろいろなキャラクターが含まれてるからだ。常に変わり続けてるから」。

◆ 新作ドラマ「Legacy」では、1974年という冷戦のまっただ中にあって、MI6にいる旧友チャールズと対立するKGBスパイ、ヴィクトルを演じる。ヴィクトルは何者なのかはっきりしないので、その曖昧な部分を演じるのが特に楽しかったとアンドリュー。「彼が何者なのかよくわからないっていうのが好きなんだ。辛い状況に置かれてるヴィクトルに感情移入してもらうのは大事だけど。家族のいる人間なんだって感じてもらうのは大事だ。でもヴィクトルもチャールズもつかみどころのない奴だ。誰が何に味方しているのかがはっきりしない。白黒がはっきりしてないから、だから陰影だらけの作品になってる」


◆ アンドリューのロシアなまり英語は素晴らしいと記者。それはどうやって身に着けたのかというと……。

「ロシア人が、第二言語として英語を話してる映像ってそんなにたくさんはないので、だからYouTubeでウラジーミル・プーチンのビデオを見始めてたんだ。でも今年の夏にプーチンが反同性愛法を導入した。そこで僕はゲイのひとりとして、ルドルフ・ヌレエフのビデオに切り替えた。これもある意味でヌレエフ的『亡命』とも言えるな」(訳注・Rudolph Nureyevはロシアの偉大なバレエダンサー。1961年にソ連からフランスへ亡命)。

(――少し脱線します。アンドリューの言葉として書かれている「being a gay person」という部分を読んだとき、「あ、はっきり言ってる」と、周りがパタッと止まって静かになった感覚を覚えました。一瞬。はっきり言ってるというそのことに、驚いたのです。2012年1月のインディペンデント記事で「ロンドンで10年ほどパートナーと暮らしている。相手は『ある意味で』業界関係者だと。そして『この話はここまで』と(アンドリューは)きっぱり口をつぐんだ」という記述を読んで以来、まあゲイかバイなんだろうと思っていたので、そういう意味での驚きはなかったですが。で、2012年1月の記事では「それ以上は話さないよ」ときっぱりしていた彼が、それから2年近くたって、はっきり「being a gay person」と口にしたので、「おお、ついに」となんとなく感動したのです。そして加えて、この部分をことさらに見出しにとったりしていないインディペンデント紙の記者や編集者をも好感)

そして今回、アンドリューは続けてこのように――。

「ありがたいことに最近ではもう、ゲイだからって人格に欠陥があるとは思われない。でも別に長所じゃない。優しさみたいな。才能でもない。バンジョーが弾けるみたいな。単にそうだっていう事実に過ぎない。もちろん僕を構成することの一部だけど、でもそれがあるから何がどうだっていう風にしたくない。僕はプライバシーを大事にしたいんだ。俳優にとって、それは大事なことだと思う。でもプライバシーを大事にするのと秘密主義は違う。僕は秘密主義じゃないから。だから僕はただ、自分の仕事をしたいだけ。僕の仕事は、いろいろな人のふりをすること。ただそれだけの単純な話だ」


◆ 今後の予定についてはまず、コメディがやりたいと。「人生っていうのは常に、なんらかのコメディの要素がそこにないと。2010年にはオールド・ヴィック劇場で『Design for Living』をやったんだけど、作者のノエル・カワードは喜劇の名手だった。お客さんは毎晩、腹を抱えて大笑いしてた。笑いを待って間をちょっと長引かせるあの感じは、本当に嬉しい、素晴らしいものなんだ。あんなに最高にハイになれる瞬間はない。ドラッグなんてまったくいらない!」

 モリアーティ以来オファーが相次ぐようになったおかげで、「断れるようになった」のも大事なことだとアンドリュー。「断るのは勇気がいるけど、それはある意味で力を手にすることだから。テレビシリーズのレギュラーをいくつかオファーされたけど、断ったのは後悔してない。金と名声を目標にしていなければ、比較的やりやすくなる。アメリカのエージェントたちはよく『これはゲームチェンジャーかもしれない』(訳注・これで何もかもが変わるかもしれない)っていう言い方をする。その裏には、状況がすっかり変わるといいなって思ってるだろうって含みがあるわけだ。でも僕はそう思ってない。今後のプランもない。予想もしない意外なことやランダムなことが好きなんだ」。

「興行収入の数字に惑わされて、これは自分のキャリアに有利だろうって仕事を選ぶ人もいる。もちろん、すごい額の小切手をもらって巨大な豪邸を買うのはステキだけど、僕が思うに、僕たちはどうせそんなに長いことここにいないんだから、せっかくなら有意義なことをやった方がいいんじゃないかな」

記事は、公開が予定されているアンドリューの新作映画を列挙。ケン・ローチ映画「Jimmy's Hall」、トム・ハーディーの「LOCKE」、アイルランド映画の「The Stag」、そしてビル・ナイ、ドミニク・ウエスト、イメルダ・ストーントンと共演する「Pride」。ちなみに「Pride」は1984年の炭鉱スト当時、炭鉱作業員たちとLGBTコミュニティが共闘した実話を描いたもの(さらに追記すれば春にはサイモン・スティーブンズの新作戯曲「Birdland」にも主演)。

「これだけ違ったことが色々できるのは、僕にとって夢そのもの。俳優としての成功とは僕にとっては、誰よりも顔を覚えてもらうことじゃない。一番金持ちになることでもない。バラエティに富んだ色々なことをたくさんできる人こそ、成功した俳優だと思うんだ。たった一つの役だけで有名にはなりたくない」


そして記者は最後に、もはやお約束というか「聞かずにはいられなくて」、モリアーティは復活するの? だって第3シリーズの撮影に参加してるし――と質問。でもアンドリューはもちろん答えず。記事によると「モリアーティがどうなったか、近親者にも明かしてはならないと言われている」そうです。思わせぶりな。

ちなみに付け足すと、夏のコミコンのイベントではモファットさんが「アンドリュー・スコットをまた呼んだ理由は、死体が必要だったから。実際、マネキンを使うよりアンドリュー・スコットを雇う方が安かったんだ!」とか言ってた(笑)。同じイベントではマーク・ゲイティスなんか、「マイクロフトがシャーロックの墓前で爆笑する場面を撮ったばかりだ」とか言ってたし(笑)。もちろんそれは本当かもしれないけれども……。