走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

医療の主体とは その9

2023年03月24日 | 仕事

シリーズはどんどん長くなるので忘れないように各回のサマリーを書いておきましょう。

1日目 真の患者中心のケアとは心がけているでは不十分

2日目 医療職は全知全能でも神でもない

3日目 人間は誰しも主体性を持っている

4日目 患者の理解力を高める因子1-患者家族がリラックスできる環境づくり

5日目 患者の理解力を高める因子2-ヒエラルキーを避ける努力

6日目 患者の理解力を高める因子3- Trauma Informed Practice

7日目 患者の理解力を高める因子4- 医療者側のスキル1- 一方的な情報伝達を避ける

8日目 患者の理解力を高める因子5- 医療者側のスキル2- Behavior Change セオリーに基づくスキルを身につける


殆どの医療者がそれなりの収入を得ている。明日食べるものもない、電気代やガス代が今月は払えないかもしれない、そんな貧困状況で暮らしている医療者は皆無なのでは?人間自分を物差しにしてしまうので、自分の実体験以外を理解することは難しい。


さ、本題に戻って、シリーズでは患者に理解してもらえない医療者側の因子を書いてきました。次は医療者の物差しについて。低所得、貧困、生活苦などが健康に与える影響をご存知ですか?これについて、本人が努力をしてこなかったから仕方ないと思う医療者は、なんと視野が狭く学のない方だ、と言いたい。貧困が発生するのは個人の責任ではなくてシステム的な取り組みが欠けているから。世界中の課題です。


塩分を制限しないといけないからカップラーメンの摂取を控えてください。


しかしカップラーメンが一番安価で保存も効くから購入しているのなら、どんなに説明しても患者の習慣は変わりません。


1ヶ月ごとの再診に来るように言っているのに何故来ない?この患者は疾患の重要さが分かっていない、と考えていませんか?


車を持っていない、バスのような公共交通機関がない、バス代が払えない、それが理由だったら?


患者家族にレッテルを貼るのは簡単です。しかし行動の背景になっているものを理解しようとしなければ真の解決にはなりません。6日目で書いたトラウマも然り、貧困であることを自ら話す人は多くありません。日本の低所得世帯は増え続けています。この辺りを医療者も実践の場で考慮し、スカラーの立場からは行政への働きかけを行っていなければならない。


長いシリーズで書き続けました。何故私が日本人でも医療の主体になれる、と思う理由が分かっていただけたでしょうか?まだまだ日本の医療者のアプローチを向上できる余地があると思います。国民性と言う言葉で都合よく解決しないでください。患者が自分の意思で自分の生き方を言葉にできるようにサポートしてください。


明日はシリーズ最終回。



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