走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

医療の主体とは その8

2023年03月23日 | 仕事

シリーズはどんどん長くなるので忘れないように各回のサマリーを書いておきましょう。

1日目 真の患者中心のケアとは心がけているでは不十分

2日目 医療職は全知全能でも神でもない

3日目 人間は誰しも主体性を持っている

4日目 患者の理解力を高める因子1-患者家族がリラックスできる環境づくり

5日目 患者の理解力を高める因子2-ヒエラルキーを避ける努力

6日目 患者の理解力を高める因子3- Trauma Informed Practice

7日目 患者の理解力を高める因子4- 医療者側のスキル1- 一方的な情報伝達を避ける


興味を持ってもらうために脅し(因果関係OOすると/しないとXXなる/ならない)はよく使われるフレーズ。脅しは全くの効果なし。人間というものは不思議な生き物で自分の都合の良いように受け取る。99%の人が死ぬと言われても自分は1%の方で生き残ると思うもの。コロナパンデミック渦で人間の行動にそれは現れていましたよね?


そして脅しはヒエラルキーへも、トラウマを再燃させることにもつながります。以上のことから脅し(因果関係)は避けるべき。


では、どうやって興味を持てる話し方をするのか?その部分を話す前に、何故、患者に対する説明や教育が必要なのか?それは4日目に書いたように、平均寿命は伸びて慢性期疾患と生きて行く人が増えたから。その人たちが自分の病気を理解して、どう共に生きて行くのか理解しなければ、医療は破綻する時代になったから。慢性期疾患について医療者は患者の生活習慣を変えないといけないと思います。「変える」は言うが易し行うは難し。タバコに百害あると分かっていてもやめられない。もう運転はできません、と言われても車なしの生活は考えられない。生活習慣の変化、英語ではChanging Behavior と言います。このセオリーは2015年の論文によると82もあります。それを土台として代表的なモデルと言えば3つ。


Transtheoretical model 別名 stage of change これは皆さんも良くご存知かと。あとは

Information–motivation–behavioral skills model とかBehavior change wheel & COM-B model とか。この辺を話していると長くなるので端折ります。


で、私がよく使うテクニックは2つ目のモデルから生まれたカウンセリングテクニック。シンポジウムでも話したように、儀宝さんも言われていたMotivational Interview です。簡単で応用が効くので重宝しています。トレーニングを受けて本当に良かったと思っています。これを使うと患者の興味のあることしか話さない形となり、自分がベラベラと一方的にサンタクロースの大きな袋みたいな知識の押し売りを避けることができるからです。


日本語の説明がないかな?と思って探してみると、日本語では「動機づけ面接」と呼ぶらしい。私的にはピンとこない日本語名だな、と思いますが、、、。興味のある方は検索してみてくださいませ。


ま、やり方はたくさんあるので実用的で使いやすいものを一つぐらいは身につけないと、今の世の中では生活習慣を変えることはできないのでは?と思います。私はカウンセラーではない!それはカウンセラーに任せれば良い!!!と思いますか?でもカウンセラーは病状説明や生活指導はできませんよね。治療者としてカウンセリングのスキルを取り入れて効率よく指導教育を行う。それができないから、患者の理解力は上がらない、と言っているのです。本を読んだり、レクチャーを聞けばセオリーやコンセプトは理解できますが、実践できるようになるためにはやはりトレーニングが必要だと私は思います。実際、stage of change を知っている医療者やボランティアは多いのに、それをどう会話の中に取り込むか?できる人は少ないのでは?ここを勘違いしないように。


続く


冒頭写真: 10ピークスと氷で覆われているレイクルイーズをバックに。右側を拡大するとホテルが認識できます。



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