診察の中で予想通りに反応がない時は何かを見逃していることが大半。
例えばCOPDのある方にMDIを処方しても症状が改善されない場合、治療をステップアップする前にMDIの使用スキルチェックをする。そうすると使っていない、とか誤った使用方法をしていることを発見する。
彼女もその一例。新しく開けたピアスから感染。外耳が普段の二倍ぐらいの大きさへ。内服抗生物質で軽減はするけど完治はしない。もちろん最初の診察時点で
髪が長いから患部に当たらないようにまとめておくこと
手指消毒をまめに行うこと
患部を触らない。その耳側を下にして寝ることを避ける
枕カバーを頻回に交換する
過剰に抗生物質クリーム等を塗らない(創はドライとモイストの良いバランスがないとなかなか完治しない。クリームやオイントメントでさえ過剰なモイスチャーになることもある)
と抗生物質処方以外の教育もバッチリしてあった。
それなのに完治しない、、、、彼女はもっと内服抗生物質を処方しろと迫ります。
検体を採取して培養してみる。メジャーな菌は出てこなかった。それどころか膣の中にある菌が検出される。
もう一度問診を丁寧に取ると、なんと毎日湯船に入浴していて、その時まだ穴の空いている耳たぶをしっかりお湯につけていた、と判明。
源泉掛け流しではありませんから、溜まっている水は清潔ではありません。それに湯船はどんな頻度で洗ってあるのか?特に滅菌しているわけでもないし、まさに汚水に創部をつけているのと同じこと。流れている水で洗うのは悪くありませんが溜まっている水はダメダメ。
指摘すると、えーだめなんですか?!そうした方が早く治ると思ったのに〜
あのねどうしてプールやジャグジーに塩素が入っていると思う?「傷がある人はご遠慮ください」って貼り紙があると思う?それにね皮膚は私たちの体を守ってくれる大事なスーツみたいなもの。そこに穴が空いているのだから、汚水に浸せば菌が喜んで侵入してきますよ!
知らないことを知らない。
患者の普通は医療者の普通ではない。
深いため息が出る瞬間だった。