ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

安来市立加納美術館で「みるみるとみてみる?!」開催

2019-02-16 12:21:56 | 対話型鑑賞


2019.2.9(Sat.)13:30~ 安来市立加納美術館「愛しき島根」展
鑑賞作品「ふるさと参り」細田和子 1995年 出雲市蔵
ナビゲーター 春日美由紀
鑑賞者 スタート時大人5名 途中から大人1名子ども2名参加
 
 加納美術館での鑑賞会は今年度に入って展覧会で言えば3回目です。しかし、今回の展覧会の鑑賞会の参加者は「対話型鑑賞」が初めての方がほとんどだったので、鑑賞法について最初に軽く説明してから始めました。細かいところまで表現されている作品だったので最初に近づいてみてもらったりして、しっかりとまず作品をみてもらいました。

鑑賞会の流れ(○鑑賞者 ☆ナビゲーター)※「文字起こし」ほぼ対話を忠実に再現
○あの大きな白いのはしめ縄だと思う。で、出雲大社かなと思って、でも、向かって右下の白い階段のようなものが何なのかわからない?
☆これは、出雲大社のしめ縄ではないか?出雲大社に行かれたことはありますよね?で、それとリンクする。でも、この白い階段状のものが何か分からない。疑問のものが何なのかが鑑賞を終えるころに分かっているとよいと思います。そんな風に、みたことから考えたことや感じたことを。
○とても色がたくさん使ってある。たぶんしめ縄の後方の大きな赤い丸は銅鏡だと思う。様々なところに配置されている黒い円、大小あるが、それが何かちょっと怪しげだなあと気になる。
☆大きな丸は銅鏡。黒い丸は6つありますね。何なんだろうと思う疑問がふたつ。階段状のものと黒い丸のものは何を表しているのでしょうか?分かっていくといいと思います。他にいかがでしょう?
○月みたいなものが二つある。三日月が二つあることから、黒い丸が皆既月食?何年か何百年に1回来ることから時間とか歴史の流れ・・・。
☆月と思われるようなものから、この丸いものは月で、真っ黒になっているところは月食。丸いものの謎をひとつ彼女なりに解いてくださった説をご披露してくださいました。他に?
○階段の直線ありますよね。上のしめ縄の曲線あり、力強さ、下の噴水らしきもの。この噴水の意味はまだちょっと分からないですけど、出雲大社の社であろう屋根の上の紫の曲線。あれをみると、安心する。竜のようにも見えるし、人間がもがいているようなシルエットにもみえるし、その紫が非常に清純なきちっとした絵の中に込められたほっとするような人間的な温かみ、暗いんだけど温かみがある、清純な直線もあれば、なんか温かみ、月なんかは自然界だけど、人間奥底の本当の姿。あれをみて和むというか、そういう気持ちにあの紫の部分をみて、全体を和ませる。いろんなことがあるんだけど、人間の奥底にある楽しさというか温かみを感じさせるから、この作品にとってこの紫の部分は大事。という気持ちでみさせてもらっている。
☆そんな風に自分の考えや感じたことをなんでも(発言を促す)
○皆さんがおっしゃられることは、本当にそうだと思って、でも、これ、噴水のやつって何なんだろう?と。(左下の白い部分。)
☆なんかこれ謎?出雲大社にまつわるものかな?何にみえてます
○自分は樹だと思う。
☆どこから?
○樹の本体。幹。
☆リアルな樹じゃなくて、シンボライズしている?
○枯れた樹?節じゃないけど、模様。なんでここに樹があるのかな?と思う。
☆噴水にもみえる?
○噴水にもみえるけど、長い階段の支えの木なのかな?大社だというと、長い階段にみえてくるので、支えてきた樹じゃないか?
☆出雲大社はかつて45Mもの高さがあったと言われていますから、その高さを支えた柱ではないか?ということですか?
○植物的に、今日が寒いからかもしれないけれど、樹氷かな?冬は寒いじゃないですか?この辺は。歴史的なものがたくさんある。時が凍る。時の冷凍食品。凍結して今に至る。記憶の中で凍結されている。そういう色合い白だったりするので、幽霊じゃないけど、実態は無いけど、記憶だけが凍結されている。時の流れを感じさせる。ような印象。
☆白いところから、氷で、凍るで、凍らされたものは時間で、時間が閉じ込められている、すごい長い歴史があるけど、閉じ込められて今もある。表されているものは、柱だったり、そのころの階段だったり、樹だったり、時間と共に太くなったり、伸びていくようだったり上昇するような・・・。
○閉じ込められて、今もある。実態は無いかもしれないけれど、幻、
☆幻ではない、もう少し、幻と言うとはかない感じがするけど、もう少し強い存在。
○氷っぽく
☆色から、時間がもしかしたら、閉じ込められている。いかがでしょう?よろしかったでしょうか?他に?
○社のところにある水平線は、海、水平線、夕焼け、大社の浜のイメージ、表したんじゃないかと思う。大社の浜と大社は切っても切れない関係にある。
☆ほかにいかがでしょうか?
○下から上に、下から上に湧き上がっている、炎のメラメラって感じも、水の蒸気が湧き上がっているように思える。出雲は雲、雲が特徴の気候。水蒸気、炎みたいな、下から湧き上がっていくイメージを閉じ込めた。
☆水蒸気も炎も下から上に湧き上がっていく、樹もそうですね。雲も湧くって言いますしね。出雲はほんと稲佐の浜の方から雲が湧き上がってくるのを見たことがある方も多いと思います。そういう気候風土というのも込められているんじゃないかと。みなさん、下方の方ばかりに注目されているのですが、このあたり(上方)しめ縄がバン!!とあるのですが、この辺りにも注目していただいて、このもくもくとしたものは何でしょうか?
○桜かな?ぼんやり見た時に思っている。でも、桜だとして、何でそこに桜があるのかな?
☆自分の考えに自分なりに疑問を感じている。考えてみてもらっていいですか。
○樹ですよね?
☆樹だと思われたのはどこから?
○そこに枝があるように見える。何か出雲大社にゆかりの樹があるのか?それを表したのか?でも、それが桜かどうかはわからない。
☆ここに枝が分かれたように見える線がありますね。ゆかりの樹を象徴している。確かに。ほかに?
○下のはギザギザしてみえるので、上のは、丸っこくて、曲線にみえるので、蛇のうろこのようにも見えるのでヤマタノオロチ?
☆こちらのエッジはギザギザしているけど、こちらのは丸っこい。から、うろこのように見えるから、出雲大社に引き付けて、ヤマタノオロチではないか。と、なるほど。スサノオの尊も祭られていますし。という意見も出てきました。どうでしょう?
☆子どもに向かって、「何かみえたら言ってね。」と発言を促す声掛けをする。
☆いま、下半分しっかりみていただいて、いま、上の方もみていただいています。最初の疑問はこの辺りで、階段ということで納得された方が多いかなあと思っているのですが、この黒い丸は、月食という意見も出たのですが、何かこのものの見え方色々あると思うんですけど、どうですかね?・・・しばし沈黙・・・1.2.3.4.5.6つありますね。どうでしょう?月なら月だとして、なぜ月があるのか?という風なことも考えられるといいかなと思うのですけど?
○月とは違う解釈なんですけど、人魂みたいな、だまし絵的みたいな、または、目、見つめる瞳、ここに描かれているものは植物だったり建物だったりしめ縄だったり、人以外、こっちを見返している目。魂的なものが浮遊している感じ。しめ縄、明らかにしめ縄、しめ縄って結界?力強い。
☆見てるのは?誰ですか?
○昔からの人、いにしえ人?
☆神ですか?
○神ではない。出雲神話の神は人間臭いから、神様的な扱いだけど昔の有力者だったりして、時間も凍っているから、こちらの方から、さあ、あなたは出雲の人でしょ?さあどうする?て言われている。
☆しめ縄は?いにしえ人と現代人がみている、結界ですか?
○いや、しめ縄は鎮めている。向こうの荒ぶる力を閉じ込めている。で、お前はどうなの?と問いかけている。または、覗くと向こうの世界が見えるタイムトンネルの入り口?
☆という意見も出ました?どうでしょう?
☆あなたはどう見えますか?黒い丸?(子どもに問いかける)
○幽霊、魂?
☆あっちの世から、こっちの世に来ている魂のようにみえる。
☆盛り上がってきているところですが、そろそろ時間になります。最後に、まだ、何もお話しされていませんが(と、沈黙の鑑賞者に発言を促すが)
○遠慮しときます。(と、固辞される。)
☆みなさんのお話を聞いて、いろんなことがいっぱいいっぱいになっていますか?
☆では、ナビも鑑賞者の一人ということで、最後に私も気が付いたことをお話しさせていただきたいと思います。
 みなさんのお話を聞いていて、一人でみていたのとは違って、何か広がったなあというか、私もホントこの黒い丸は何なんだろうって不思議だなあと思って見てたんですけど、月のお話を聞いて、そもそも夜の国、黄泉の国を司どれって言われたわけじゃないですか、で、やっぱり月なのかなあとか、そう思うとこれは月ではなくて、太陽を月が隠しているのかなあ、月食じゃなくて日食?かな?とか思って、お日様の国じゃなくて月の国、闇の国だから、それで、そこが象徴されているのかなとか思って、六も何かを象徴しているのかな?ああ、出雲大社の家紋は六角形だって思いながら、だから六個あるのかなあとか思いながら皆さんのお話を聞かせていただいていました。で、あと一つ、この会を始めるにあたりまじまじみて気付いたことが一つあって、しめ縄、このしめ縄の線って粗密があるじゃないですか、この密なところの陰の付け方がが鳥にみえて、鳥が羽ばたいているようにも見えて、このしめ縄もしめ縄なんだけど、さっき時間の話をしたんですけど、脈々と受け継がれる歴史のある場所で、時の止まったような部分もあるけれど、未来に向かって羽ばたいていく、飛翔していくということも一緒に描かれているのかな?と皆さんのお話を聞きながら考えていました。短い時間ではありましたが、楽しいひと時を過ごすことが出来ました。ありがとうございました。

参加者の感想
 和子先生の作品については、たくさんの感想が聞けて、世界が広がってよかったなと思います。
 実はわたしは研究対象がオディロン・ルドンで、「眼球」「瞳」「目」がモチーフになっている作品が多く、どうしても気になってしまうのでした。
 和子先生の作品は、ちょっとファンタジックで、シンボリズム的なものが多いなあと思いました。作家さんご自身にもお話をききたいなと思いました。

房野さんの気付き
○スタート時、初めての方ばかりの鑑賞者にわかりやすく「対話型鑑賞」とはどんなものか、端的に説明した。
○はじめに疑問を伝えたコメントについて、ナビが解答するのではなく、「この鑑賞を通じてその疑問の答えを自分なりに見つけられるといいですね。」と返したのが、オープンで、考え続ける姿勢を貫いていてよかった。
○長くなりがちのコメントやわかりにくい発言に対してのパラフレーズで「〜ということでしょうか?」と確認していたので、「いえ、そうじゃなくて…」という発表者の声を拾って、より思いに添えるようにしていた。
○話題が下半分のモチーフに集中しがちだったので、「上にも注目してみましょう」と視点の広がりを促した。
○最後に一鑑賞者としてのナビの捉えも伝えたが、全体の流れを損なわずに、鑑賞者の解釈を否定しないような内容だったので、参加者は終始楽しみながら作品を解釈できたのではないか。
春日の振り返り
○みる要素が多かったが、解釈はしやすかったのではないかと思う。しかし、イメージが広がる作品で、謎もあり、30分があっという間に過ぎていた。
○2作品目に続けて参加される方が少なかったので、楽しめなかったのか?と幾分反省。一人の男性は「長尺で作品を鑑賞するのは慣れてない。」と言われて帰られた。
○染色作品であったのだが、そこに触れられなかった。
○久々に「文字起こし」をしてみた。「しめ縄」の「結界」の解釈や黒い円を「目」「魂」と捉えた時の解釈の受け止めが曖昧だった。鑑賞者の発言を十分に理解できていなかったのではないかと思う。
○楽しかった。男性の参加者が多くて、それも珍しく、皆さん、各々の感じ方や考え方を発表してくださって、鑑賞会は盛り上がったと思う。本当に楽しいひと時だった。


ありがとうございました。

さて、17日土曜日は、益田の石見美術館で鑑賞会を開催します。ご多数の参加をお待ちしています!!
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