ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

対話型鑑賞が政治の場に?!

2014-07-06 08:38:13 | 対話型鑑賞
出雲JCの5月例会で対話型鑑賞を体験した島根県議員珍部氏(出雲JC会員)が6月の定例島根県議会で対話型鑑賞について県の取り組み等について質問をしました。その際の議事録をご紹介します。質問文と県側の答弁は対話型鑑賞についてのもののみとします。珍部氏はこのほかにも学力向上対策についての質問などもおこなっています。

 対話型鑑賞についてお伺いいたします。
 対話型鑑賞とは、美術作品を通じて鑑賞者の観察力やコミュニケーション力を育成する教育カリキュラムであり、鑑賞者同士が語り合い、想像力を駆使して美術作品を読み解いていくことが特徴で、図工や美術の鑑賞方法の一つであります。絵画などの作者やその時代背景、作者がどういった思いや状況でその作品をつくったのか、美術鑑賞には欠かせないこういった情報をあらかじめ聞いたり見たりせず、数名のグループでそれぞれがその絵画などの印象や感想などを対話を通じて掘り下げていき、後でその作品の特徴を解説してもらうという鑑賞法でございまして、この鑑賞法を実施することによって、作品を見る人の自分で考える力、他者とのコミュニケーションをとる力、そしてイメージの中に意味を見出す力といった能力の向上に効果があることから、美術館だけでなく学校や福祉の現場などでも広がりを見せているとのことであります。
 私は頻繁に美術館を訪れ芸術を楽しんだりするタイプの人間ではありませんので、美術館と聞くと敷居が高いといいますか、何となく苦手な印象を抱いておりましたが、先日、この対話型鑑賞を実際に行ってみたことで、純粋に芸術を楽しむことができましたし、美術という分野への苦手意識がやや取り払われたのではないかと感じました。美術への興味のない方でも簡単に行うことができますし、私同様、美術館へ行くことに抵抗があったという人も、時間があれば美術館へ行き芸術を楽しもうかなと思っていただくことができる、おもしろい手法ではないかと思います。
 そこで、この対話型鑑賞は島根県内ではどのようなところでどのように活用されているのでしょうか、まず、お尋ねしたいと思います。
 また、自分で考える力やコミュニケーション力、想像力などの醸成にも効果のある手法ですので、学校や企業などさまざまなところで人材育成のためのカリキュラムとして活用できるのではないかと私は感じましたし、美術鑑賞の楽しさも同時に感じることもできる手法ですので、美術館の利用の向上などにも寄与することも期待できると思います。
 さらなる普及を考えてみてはどうかと私は思いますが、県はこの対話型鑑賞を人材育成のカリキュラムとしてどのように捉えているのか、また今後の活用策についてどうお考えでしょうか、お尋ねしたいと思います。

回答者 環境生活部長(鴨木 朗)
▽対話型鑑賞は県内でどのように活用されているのかという御質問にお答えをいたします。
 対話型鑑賞は、文字どおり対話によって美術作品の鑑賞を深めていく手法でありまして、参加者が作品の中に見えたこと、感じたことを互いに話していく、その過程の中で、一人一人の感性が異なることが認識され、自己の見方も広がり、自分と異なる他者の理解にもつながって、結果的には作品鑑賞が深まるという方法論であります。
 県立美術館及び石見美術館では、具体的に次のような取り組みを行っております。まず、美術館における鑑賞支援プログラムの一環として、一部の企画展やコレクション展におきまして対話型鑑賞の手法を平成19年度以降取り入れております。このほか、学校における美術教育の方法論として対話型鑑賞の手法を応用しようという試みが県内で芽生えつつあります。小中学校の教員の求めに応じまして、美術館の学芸員がワークショップや対話型鑑賞による模擬授業を行っておりまして、近年その回数が増えてきております。

回答者 教育長(藤原 孝行)
▽1点目は、対話型鑑賞についてであります。
 美術作品の鑑賞は、造形的な美しさなどを感じ取り、美術や伝統と文化に対する理解と愛情を深める学習です。その手立ての一つとして、他者の考えを聞きながら自分になかった視点や考えをもつ対話型鑑賞は、有効な方法であると考えています。
 県内では、幾つかの学校で、県立美術館の学芸員を招いて対話型鑑賞の授業を実施しています。また、教育センターでは、対話を用いた鑑賞についての研修を開設しており、今年度も9月に実施することとしています。
 対話型鑑賞は、人の話を理解し、自分の気持ちを表現するという言語活動の一つでもあり、児童生徒のコミュニケーション力の育成にもつながる活動です。児童生徒の実態や美術作品の内容に応じて取り入れていくこととしています。
 また、社会教育においては、各公民館などが実施している講座において、地域にある美術作品に目を向け、対話型鑑賞を活用した事例などについて、社会教育関係者などに対し情報提供を行ってまいります。

 以上が、質問と答弁の全文です。

 珍部氏の質問の中に、対話型鑑賞後に作品の解説を行うことが述べられていますが、それは、氏が参加した場での実態であって、解説を必ずしも伴うものではないと思います。ただ、大人の参加者の場合は、特に男性に多いのですが(私の実践経験から)、作品の薀蓄を聞きたがります。いわゆるネタばらしをして欲しいという要求が強いです。そういう時には、希望者に限ってお伝えすることにしています。それですっきりして納得して帰っていかれます。私がJCのバリュー・アップ委員会で実践した時もそうだったので、5月例会でも実践後にネタばらしをしたようです。ですから、珍部氏は、対話後に作品解説があるものと捉えていると思います。

 県当局者や教育長の答弁については、一般的なものではないかと思います。詳細な現状はまだまだ把握しきれていないのではないかと感じました。しかし、珍部氏が議会で質問してくださったことで、県当局や県教委に対話型鑑賞が認知され、その手法は教育において有用であることが強く確認されただけでも大きな価値のある出来事だったのではないかと思います。私が10月に県立美術館で対話型鑑賞の授業が公開できるのも、この流れの中の出来事として捉え、県内にさらに対話型鑑賞が普及することを狙いたいと思います。

 さて、月曜日はその授業公開に向けて3回目の光中学校への出前授業です。生徒も楽しみにしてくれていますが、私もとっても楽しみです!!
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