ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

校区内の小学校で対話型鑑賞の実践を行いました

2013-06-30 10:27:30 | 対話型鑑賞
校区内の小学校で「対話型鑑賞」の実践を28日に行いました。
対象学年は1年生と3年生です。
1年生の作品は、小倉遊亀の「径」です。
3年生の作品は、メアリー・カサットの「孫に本を読んで聞かせるカサット夫人」です。
この2つの作品は幼稚園の実践でも使っているもので、園児の反応が良いことから、初めて「対話型鑑賞」を体験する小学校低学年~中学年の児童には好ましい作品ではないかと考え、使ってみました。二つの作品とも描かれているものはシンプルでわかりやすく、色遣いもはっきりしていて美しいと思われるところから選んでいます。
小倉遊亀の「径」はお母さんと思われる女性の後ろに女の子が続き、最後に犬が横向きに一列に並んで歩いている日本画です。お母さんと女の子は傘をさしています。お母さんの腕にはかごが下げられ、中に花が入れられています。女の子の傘の先には巾着袋が下げられています。その袋はお財布か何かが入れられているようで、少し膨らんでいます。最後についてきている犬は柴犬のようです。尻尾を上にくるりと巻き上げ、赤い首輪をして女の子のあとに続いています。この二人と一匹は何をしているところなのか、ちょっと気になります。子どもたちは二人と一匹の様子について発言しながら、この登場人物の関係や何をしているところなのかを考えていきます。様々な意見が出て聞いていて「なるほど」と感心させられるところしきりです。終わった後に感想文を書いてもらいましたが、ひらがなを覚えたてで、書くこともまだまだたどたどしいのですが、しっかりと書いてくれている様子を見てとてもうれしく思いました。感想文が届くのを楽しみに待っているところです。
 さて、3年生は、メアリー・カサットの「孫に本を読んで聞かせるカサット夫人」です。
この作品はやや右寄りに4人の人物が描かれています。中央の白い服の女性がカサット本人ですが、老眼鏡をかけ、赤い表紙の本を手にしています。その本を覗き込むように3人の子供が取り巻いています。カサットの正面にはちょっと年かさと思われる青いチェックのシャツを着た子ども、手前に後姿の、やや髪が長く、ちょっとくせ毛の子ども、そして、一番奥にこちらを向いた(唯一正面向きの)子どもです。本を読んでもらっているのではないかとすぐにわかりますが、子どもたちが男の子なのか女の子なのか、兄弟姉妹だろうけど、誰が年長なのか、様々な意見が出ます。また、この場所はどこなのか?という疑問も、大人なら「家の中」とすぐにわかりそうなものなのですが、意外と多いのが「電車」という意見です。日本の子どもたちにとって、大きな窓で思い当たるのは「電車」なのかな?と思います。この読み取りは、他の幼稚園での実践でも出ました。小学校3年生でもそのような意見が出るということは、日本の住宅事情とアメリカのそれの違いを物語っているのかも知れません。生活体験の中でしか語る言葉を持たない子どもならではのほほえましい意見ではないかと、私はこの読み取りを聞くたびに思います。3年生にも感想文を書いてもらっているので、どんなことが書かれているか読むのが楽しみです。
 さて、この実践終了時に、校長先生とお話しする時間があり、子どもの様子やこの会の様子について語り合いました。今年度この小学校に赴任された校長先生は研究熱心な方で、私たちの活動についてもいくらかご存知で、興味を持っておられました。1年生の授業も参観してくださり、子どもたちの様子についても質問されました。発言の内容や授業態度などについても言及がありましたが、私としてはこのような活動を体験することの意義や、普段の授業ではなかなか実践されにくいことではあるけれど、これからの社会に求められている力(それは言語活動や表現活動につながる力も含めて)を養うところまではいかないまでも、助長することの一端にはなるのではないかと考えていることをお話ししました。
継続して実践できればよいのですが、残念ながら難しいとは思っています。しかし、3回くらいは訪問できるとよいとは思いました。それを実現するには、実践者の熱意とそれを受けてくださる学校側の理解と思います。でも、欲張らず、1度でも実践できたことに感謝したいです。
 この時に、大野先生の「三葉虫」のワークショップについてのPRもさせていただきました。募集・応募チラシも完成したので、チラシを持って月曜日には再訪問しようと思っています。たくさんの参加者が来るといいです。

 では、次回は、今度来県される大野先生が2月に石見美術館で講義された際のレポートが完成しましたので、会員の上坂から報告してもらいます。
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