みのる日記

サッカー観戦記のブログです。国内外で注目となる試合を主に取り扱い、勉強とその記録も兼ねて、試合内容をレポートしています。

サラゴサ × セビージャ

2007年01月08日 | サッカー: リーガ
06/07 リーガ・エスパニョーラ 第17節: レアル・サラゴサ 2-1 セビージャFC
(2007/1/6)

■ 抜群の攻撃力を誇るチーム同士の対戦
国内サッカーがひとまず一段落し、欧州に集中できる日々がやってきましたね。他国に先駆けて、スペインがリーグを再開させています。
現在、個人的に虜にされてしまっているチームがセビージャです。勢いに溢れる豪快さと迫力さで、見ていて面白いです。面白いだけでなく、強いのです。レアルをも粉砕しました。その後の年内の残り2試合でも、決定力を見せ付ける計7得点の連勝で2006年度を締めました。暫定ながらも首位に立って休暇に入り、昨年は最後までセビージャとしては最高の一年となったわけです。
組織的なせめぎ合いにも負けない中で、個人技が躍動し、勝負強さまで備わってくるという、上位チームとしての風格が漂い始めています。そんなセビージャのにわかウォッチャーの私としては、5位のサラゴサとのこの一戦は見逃せません。サラゴサは、新指揮官のビクトル・フェルナンデス監督が掲げる超攻撃的サッカーがリーグ開幕からいきなり炸裂。MFアイマール、MFダレッサンドロ、FWディエゴ・ミリートのアルゼンチン・トライアングルが形成する前線が猛威を振るっています。昨年末の最後の2試合は無得点と息切れしてしまいましたが、それまでは勝っても負けても全試合で得点を奪い続けてきたのです。攻撃の安定度ではセビージャにも全く引けを取りません。壮絶な打ち合いも期待される、興味深いカードです。

サラゴサはこの試合も基本形の4-2-2-2です。
GKセサール・サンチェス。DFは4バックで左からファンフラン、ガブリエル・ミリート、セルヒオ、ディオゴ。MFの後方にはサパテルとジェラール・ピケ、前方では左にアイマールと右にダレッサンドロが位置します。ツートップはディエゴ・ミリートとエベルトンです。
2枚のFWの下にアイマールとダレッサンドロという2人のアタッカーを置く積極的な姿勢に変化はありません。年末のビルバオ戦で軽傷を負ったセラデスは結局間に合わず、この日は若きセンターバックのピケが代役としてボランチを務めました。

一方のセビージャも確固たるものとして築き上げている4-4-2。
GKにパロップ。DFは左からダビド・カステード、エスキュデ、ハビ・ナバーロ、ダニエウ・アウヴェス。MFは左からアドリアーノ、レナト、ポウルセン、ヘスス・ナバス。FWはカヌーテとルイス・ファビアーノです。
昨年からのほぼ不動となったメンバーをこの日も揃えてきました。絶好調のツートップはもちろんのこと、大爆発中のアウヴェスからも目が離せません。

■ サラゴサの2得点の後に押し寄せたセビージャの大波
前半戦で目立ったのがセビージャのアドリアーノのキープ、ならびに中央のレナトの活躍です。特にレナトは開始直後からワンタッチでのスルーパスに、タイミングよいボールのカットなど、セビージャに効果的にリズムをもたらす選手でした。彼らを主軸として主導権を握るセビージャの前に、サラゴサは一度だけディエゴ・ミリートへの放り込みを成功させた以外は、ホームながら一方的に攻め寄せられていました。

しかしながら前半14分に転機が訪れました。サラゴサがセットプレーからの一発を沈めたのです。ダレッサンドロのコーナーキックからのクロスを、ディオゴがバックヘッドで合わせます。これがキーパーのセービングも一歩及ばない左ギリギリの枠内へと飛んでいき、ゴールになりました。ややフリーであったことは事実ですが、難易度の高いシュートを決めてみせたディオゴを褒めるべきでしょう。サラゴサが先制です。

この1点はサラゴサにとっては大きなものとなりました。これによって俄然としてサラゴサが勢いを取り戻してきたからです。両ボランチの発揮する展開力から、アイマールの変幻自在で魅惑的なプレーが飛び出します。中盤の活発さはサラゴサ側が上回ることになり、効率よくパスをつないでいってセビージャと白熱する攻め合いを繰り広げました。
そしてとうとう前半の終盤にはセビージャがサラゴサの勢いに屈してしまいます。最後まで抵抗を続けていたのは上下運動の豊富なアドリアーノ、なおもキープにパスにシュートにと中央で輝きを失わないレナト、この例の2人だけでした。これではとても攻めきれたものではなく、セビージャの決定機といえばカヌーテの強烈ミドルという外側からのアタックだけにとどまってしまったのです。
セビージャは逆転に向けて、後半から立て直しが必須となります。

セビージャは後半の頭に、その立て直しに成功しました。アウヴェスの攻守にわたる積極性ある寄せ、およびサラゴサ側のミスなどで、前半と同じく開幕から圧倒していきました。
ですが、またもサラゴサがこの状況下においてたった一つのチャンスを手に入れて、セビージャの出端を折ってしまいます。
後半6分、駆け上がったディオゴにダレッサンドロとディエゴ・ミリートが加わり3人で右サイドを組み立てて、最後にはディオゴのクロスがディエゴ・ミリートの頭に合わさるカウンターが成立しました。そこからディエゴ・ミリートが弾かれても弾かれてもシュート。ようやく3本目で決まり、サラゴサに大きな追加点が入ります。

もう後のなくなったセビージャは、DFを一枚落としてMFマレスカとFWチェンバントンを一挙に投入し、3-4-3と打って出る賭けに出ます。守備面で多大に不安はありましたが、アドリアーノとアウヴェスの両サイドが攻撃専門となってついに得意のサイドアタックを見せることができたために、この賭けは成功したのです。これを前にしてサラゴサ側が4-5-1と守りを固める消極的な布陣としたためです。サラゴサはアイマールただ一人が脅威的となるに成り下がりました。しかも代わって入ったオスカルは攻撃的MFなのです。当然彼は守備で役に立っていたように見受けられず、サラゴサは何とも中途半端な体制となってしまいます。このサラゴサ陣営内で、セビージャが存分に暴れました。

早速まともに影響が出たのは後半25分です。右サイドのマレスカとアウヴェスによるワンツーの崩しにサラゴサはまるでついていけず、アウヴェスにクロスを上げられてルイス・ファビアーノの得点へとつなげられてしまいました。2-1と、1点差に詰め寄られます。
なおもセビージャの猛攻が止まりません。カヌーテ、ルイス・ファビアーノ、チェバントンと中央に集まるフィニッシャーたちへ左右からどんどんボールが供給されていきます。中でもアウヴェスが際立ちました。右から中央に切れ込んでチャンスメイクをすれば、スルーパス、さらには抜群のアーリークロスなどで決定機を次々と演出していったのです。

ただし、これらをサラゴサの守備陣は耐えてみせました。キーパーのセサール・サンチェスとセンターバックの2人が最後の一線を割らせず、彼らを中心にサラゴサはどうにか食らいついていったのです。セビージャは自身のワンサイドゲームを30分も展開したのですが、結局ゴールは1つのみに抑えられてしまいました。

試合終了直前には、ディオゴとルイス・ファビアーノが言い合いを発端としてお互いに殴り合う大乱闘を開始。両者へのレッドカードでもって、この壮絶な試合に終止符が打たれました。サラゴサの辛勝です。

■ 大絶賛にまでは至らないサラゴサのボランチ
流れをガラリと変える先制点を挙げ、追加点の場面でも主役となって右サイドアタックを成立させた、サイドバックのディオゴが勝利の殊勲者でしょう。ただ、最後の乱闘劇による退場は余計でした。高いパフォーマンスを維持している彼の出場停止は、サラゴサにとっては大きな損失だと思われます。

アイマールの存在感も大きなものでしたね。この日はアドリアーノに攻めでも守りでも全く歯が立たなかったダレッサンドロの分まで、一人で攻撃の指揮者としての役割を果たしてチームを牽引しました。左に右に中央にとどこにでも現れ、自由な動きで創造性豊かなプレーを連発していきます。後半にサラゴサがガタガタになってしまっても、唯一彼だけはセビージャを脅かす存在でした。
彼を含めたダブル司令塔のシステムがサラゴサの守備力低下を招いているとの指摘がされています。ただ私はこの試合を観た限りですが、アイマールは守備能力がそれほど高くはなくとも、守備意識だけは高そうに感じられましたよ。ヘスス・ナバスを始めとして自分のエリアへ侵入する選手にはすかさず立ちはだかり、チェックを怠ってはいませんでした。セビージャの思わぬサイドアタックの停滞に、彼は一役買っていたと思います。

また、サラゴサの保持時において攻撃をスムーズにさせる、エベルトンの貢献的な動きにも言及したいところです。彼は再三中盤へと下がってきては起点となり、うまく左右に散らして中央で組み立ての潤滑油のような働きをしていました。2点目のカウンターもエベルトンのポストプレーが始点となったものであり、サラゴサに縦への深みをもたらしていたのです。

忘れてはならないのがサラゴサの最終ラインでしょう。センターバックの2人はセビージャのツートップを徹底マークして、なかなか攻撃に関与させませんでした。FWも満遍なく絡んだサラゴサとは対照的に、セビージャは彼らの奮闘によって両FWとも孤立しがちだったのが、やや劣勢気味とされた要因の一つだと思います。そして最後のセビージャの猛攻時にもよく踏ん張っていましたね。サイドバックの両者もサラゴサのシステムがあやふやになる以前までは着実に固めていて、ほとんどセビージャのサイドアタックを許していませんでした。

そしてサパテルとピケの両ボランチです。サラゴサの反撃時では的確な長短のパスで前線の活性化をうながしました。運動量も高く、マークを欠かさず、時にはサイドにも顔を見せて、セビージャのプレーに制限をかけ続けます。さらにはサパテルは巧みな奪取と巧みなキープという玄人ぶりで、ピケは相手の変遷へ臨機応変に対処してチェバントンへのカバーリング。解説者の岡田さんも大絶賛した2人です。
ですが、私の個人的な感想を申し上げると、彼らは大絶賛にまで至るかどうかは微妙といった雰囲気でした。確かにプレスを絶やすことはなく、セビージャの攻めを衰弱させていた功労者です。しかしながら、ここ一番という場面での守備は冴えていませんでした。例えば、ピケがアドリアーノとの1対1の場面で簡単にかわされてクロスを放り込まれれば、サパテルも確実に処置してほしいところで失点につながりかねないクリアミスをしてしまいます。いずれも致命的なものでした。また、前半はレナトを、後半はマレスカを中央で自由にやらせていた責任は紛れもなく重いものでしょう。こうした軽薄さを見せない安定感を出し切ってこそ、絶賛という評価にふさわしいのだと思うのです。せっかく献身的に立ち回っていて賞賛したいところなのに、最終的にはどこか心に引っかかる物足りなさを感じました。

■ 試合展開を急変させた双方の采配
最初は押されていたサラゴサでしたが、先制点を取ってから息を吹き返したように復活させたパスサッカーは実に見ごたえのあるものでした。ボランチ2人のミスのない後方のフィードから、時折勢いのよさを見せるダレッサンドロ、神出鬼没のアイマール、アシストに徹するエベルトンらがよくつなぎます。ディエゴ・ミリートを最前線に置いて牽制し、残る5人による連動が十分に機能していました。対するセビージャは、調子の波の大きいヘスス・ナバスがこの日は沈黙、ポウルセンは守備に振り回されっぱなし、ツートップは封殺されていると、ところどころでボール運びがつかえていた感じです。これらが両者の実力差を埋め、サラゴサの躍進ぶりが光ったのでしょう。

ところが、このサラゴサの出来を根底からぶち壊しにしたのが双方の采配でした。
まずはセビージャが動きました。ボランチのポウルセンの位置取りを下げさせて、守備は彼とセンターバックの3人だけに。そして後は全員が攻撃という捨て身の作戦をとったのです。この采配の中で活きたのがマレスカの投入でした。マレスカはうまく中央でタメを作り、何度も左に右にと効果的にボールを送っていきます。一見するとアドリアーノとアウヴェスの両翼が守備を一切捨てたために強引に突破できたとの感じも受けますが、間違いなくセビージャのサイドアタックを蘇らせたのはマレスカの活躍によるものだったと私は思います。
この急変する状況に拍車をかけたのが、サラゴサのシステム変更です。代わって入ったオスカルは、アイマール以上に守備をしない選手でした。しかも退けたのがエベルトンというのも大きかったように思います。彼は前述したとおり、中央でチームのリズムを整えてはカウンターのきっかけにもなり得る存在でした。さらにスピードがあってウイングもできるエベルトンは、相手陣内の両サイドが広大に空いたあの時間帯でこそいよいよ輝く選手ではなかったでしょうか。もし代えるのならば、アドリアーノにコテンパンにやられていたダレッサンドロの方こそを真っ先に代えるべきだとも思ったものです。こうしてコンダクターを失ったディエゴ・ミリートは完全に孤立。ついにサラゴサはパスワークを続行させるどころか、守備固めもカウンターもままならない、何が狙いなのかもよくわからないまま一方的にセビージャの集中砲火を浴びることになってしまいました。よくぞ守備陣は凌ぎ抜いたものです。

ホームとアウェーでは試合内容の差が大きいセビージャ。この日もアウェーで不完全燃焼に終わるセビージャを観るという、残念なことになってしまいました。ですが、サラゴサの序盤での健闘、終盤での死闘はそれぞれ心に残るものがあり、この試合の観戦価値自体は十分にありました。これだけ色々書いておいて何なのですが、実は今期のサラゴサを観るのはバルセロナ戦に続いてまだ2度目のことです(笑)。それだけに、私はまた新たな好印象のチームを発見したような気持ちで満たされました。今後も快活なサッカーを続けていってほしいと思うサラゴサは、Aマドリードを勝ち点で上回り、再びチャンピオンズリーグ出場圏内へと歩を進めました。


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2 コメント

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またまたお邪魔させていただきます (Mandom)
2007-01-08 22:29:03
またまたTBありがとうございますー。日曜日のサラゴサ×セビリア戦は非常に面白い試合でしたね。特に翌日のマドリー・バルサが低調だっただけに尚更・・・。アイマールは結果バレンシアを出て正解だったと思います、最初は格下のクラブ?と思っていたのですが、いやいや。日本代表も俊輔・ヒデのダブル司令塔の時期が少しあったと思うんですが、ダレッサンドロ、アイマールのようには目だった結果は出ませんでしたね。私のブログにも書いてますが今年のリーガは面白いクラブが多すぎて困ります(笑)ハイライトだけではなく他の試合も見てみたいものですね。
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Re: またまたお邪魔させていただきます (Mandom) (みのる)
2007-01-09 01:06:16
いやー、熱い展開でしたねー。新年早々いいものが観られました。
バルセロナはロナウジーニョもいないはデコもいないは、さらには致命的なエラーを犯すはでサッパリといった印象でしたね。そうですか、観てはいませんが、レアルも低調だったのですか・・・(ていうか完封負けしてる・・・)。

正直に申し上げて、今の今までサラゴサがこんなに良チームだとは知りませんでした。後方6人が献身的に働いて固めてくれるために、アイマールが輝いています。ジーコジャパンにはこうした泥臭い選手が少なく、どちらかと言えばファンタジックな選手ばかりで、司令塔の存在自体があやふやとなるケースが多々ありましたね・・・。

本当に、意外と(失礼?)リーガは面白いのですよね。バルサ・レアルはそれだけで注目の的ですが、私の心はセビージャに移ってしまいました。そしてこのサラゴサです。さらには今、最も面白くなり始めているのがバレンシアでしょうか。アルベルダを筆頭として、けが人が続々と復帰傾向にあります。総合力はもともと高いのですし、もしかするとインテルvsバレンシアがCLで最注目の一戦となるかも知れませんね。
今後もスペインから目が離せません。

コメントどうもありがとうございました。またそちらにも訪問させていただきますね。
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