みのる日記

サッカー観戦記のブログです。国内外で注目となる試合を主に取り扱い、勉強とその記録も兼ねて、試合内容をレポートしています。

セビージャ × バレンシア

2006年11月21日 | サッカー: リーガ
06/07 リーガ・エスパニョーラ 第11節: セビージャFC 3-0 バレンシアCF

リーグ開幕直前に行われたUEFAスーパーカップにて、あのバルセロナを何と3-0で下すという圧勝をしてみせたセビージャ。今シーズンに向けて幸先良くスタートを切ったチームは、その期待感に応えるように、これまで地味ながらも着実に勝ち点を伸ばしていきました。そして第9節には、バルセロナを抑えて首位に立つことにも成功。現在も2位と優勝戦線の中心に存在し、今節は強豪のバレンシアをホームに迎えました。

そのセビージャ、何が好調の要因なのかが広く伝わってきません。と言いますのも、今季セビージャサイドが、クラブ側へと支払われているテレビ放映権の価格が「注目度に比べて低すぎる」として、セビージャの行う試合は全て放送することを許可しなかったのです。この問題は、先月末にようやく契約合意が達成して解決し、第8節からセビージャ戦の中継は再開されています。しかし、重要なバルセロナとの直接対決を含む、それまでの試合の全貌を実際に観ることができていたのは、会場に足を運んだ人たちだけでした。
少ない情報からも調べてみてみると、セビージャはこれまでUEFAカップにも参加する過密日程を、ところどころうまく選手を交代させながら臨む、いわゆるターンオーバー制度を使用。これが、特に中盤の選手たちを中心に、お互いの競争意識を芽生えさせ、出場機会を与えられれば各選手が高いモチベーションで戦うという、相乗効果を生み出していた模様なのだそうです。そしてFWでは、ルイス・ファビアーノといった南米の有力選手たちを抑えて、無名に近いマリ出身というカヌーテが、ここまで8得点とリーグの得点王争いに名乗り上げてきました。こうしたチーム内でのポジション争いが勢いをもたらして、ここまで総得点が19という攻撃力につながっています。

試合は、これ以上負けられないバレンシアの意気込みもあって、白熱の内容で互角の攻防が繰り広げられました。好ゲームが期待されましたが、前半も17分という早い時間帯で、両者の力量のバランスが崩されることになりました。
バレンシアの左MFシルバが、この日マッチアップを続けていた、セビージャの右サイドバックのアウヴェスにひじ打ちをして、退場となってしまったのです。危険行為として、この処分は妥当です。しかし、ここで私個人の意見として申し上げたいのは、このひじ打ちを受けたアウヴェス、実は試合開始早々にそのシルバへ対して、同じようにひじ打ちをぶちかましていたのですね。やや故意とも見られましたが、そのときは何のお咎めもなしでした。こうした影響なども含めて、サイドで対立を続けていたシルバは、つい手が出てしまったのでしょう。許されることではありませんが、上記のアウヴェスに対しても、何らかの罰則は与えられるべきだったと思いました。

そして、この退場となったシルバのファールから与えられた、セビージャのフリーキックです。これをDFのエスキュデ、豪快にゴールへ直接突き刺して先制点を取りました。上々の立ち上がりから一転、バレンシアにとっては悪夢の時間帯となってしまいました。

その後バレンシアは、空いた左サイドの中盤をビジャがやや下がって埋めるものの、ここが弱点であることは明らかです。それをセビージャ側は、今日は右MFとして起用されたアドリアーノが、サイドバックのアウヴェスがとことん突いていって、クロスも上げていきます。そこから決定機につながる場面も出てきました。さらにバレンシアがワントップにせざるを得ない状況でもあり、相手からの脅威が希薄であったセビージャは、ホームの熱気と合わさって、攻撃の勢いをさらに増していきました。サイドチェンジやアーリークロスも活発化。以降は、試合終了まで押せ押せの内容でした。

この展開の中でセビージャは、後半9分にアウヴェスからのスルーパスが決まって、ルイス・ファビアーノが1ヶ月半ぶりとなるゴール。後半26分には、後方のロングボールから、現在の看板選手であるカヌーテまでもが駄目押しとなる点を入れて、3-0。会場に詰め掛けたファンにとっては大満足の圧勝劇となりました。
バレンシアにとって、後半の2失点はいずれも、一番堅いはずである中央をあっさりと破られてのものでした。ですが、1人少ない中で、しかも反撃の点を取りに行かなければならないという状況下では、中盤の守備の支援もなかなか受けられません。その間にも幾度となく襲い続けてくるセビージャの波を前に、センターバックの2人は、つききれる余力が残されてはいなかった感じでした。勝負を決することとなった、これらの追加失点の責任ですが、それを100%この2人に押し付けるのは少々酷だとも思われます。

大半の時間を数的優位の中で過ごすという、恵まれた試合ではありましたが、大勝という結果を飾ってセビージャは2位の座を守りました。スターと呼ばれる選手も不在で、決して個の力が抜きん出ている訳ではありませんが、チーム全体が安定した勢いを保って、静かに着実に歩を進めています。この先どこまで快進撃を続けることができるのでしょうか。

敗れはしましたが、この日強く印象に残ったのが、そのバレンシアの選手たちの不屈の闘争心です。明確な逆境の中でも、右MFホアキンが、そして特に前線のビジャが、最後まで諦めることなく奮闘して粘りを見せました。ビジャは再三突破を試み、シュートまで至るなど、停滞する自軍を何とか盛り返そうとします。途中出場のビセンテからも、何かやってやろうという意思が十分伝わってきした。

このように意気が高く、優秀な選手も多い、好チームのバレンシアですが、残念ながらここ最近の結果は芳しくありません。それに少なからず影響を与えているのが、多発といっていい、主力選手の故障の続出です。
今季から新戦力となりながら、いまだ故障のため出場を果たしていない有力な左DFデル・オルノを始め、好調であった同じく左サイドバックのモレッティも、今月初めに全治3ヶ月の損傷。MFのガビランも十字靭帯断裂で、半年は休養を余儀なくされています。
まるで呪われたかのように、選手へとアクシデントが襲い続けていたのですが、その中でも特に、中盤の要であったアルベルダの離脱は大きいものでした。抜群の安定感と守備力で君臨する彼の代役は見つからず、この大黒柱が不在となってからは、今日までチームは勝利を得ることが出来ていません。こうして好守にバランスを欠き始めたバレンシアは、強力なツートップへとボールを託す、狙い通りの戦術が行えずにもがき苦しんでいます。
そしてこの試合でも、ここ数試合で素晴らしいパフォーマンスを見せ始めていたMFのエドゥが、試合終了間際に右ひざを負傷して、半年はかかる長期戦線離脱へ・・・。もはやサポーターにとっては「笑うほかない」という事態で、私からも気の毒と言えるほど、バレンシアの先行きは暗いものとなってしまっています。


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