みのる日記

サッカー観戦記のブログです。国内外で注目となる試合を主に取り扱い、勉強とその記録も兼ねて、試合内容をレポートしています。

ボルトン × チェルシー

2006年12月01日 | サッカー: プレミア
06/07 プレミアリーグ 第13週: ボルトン・ワンダラーズ 0-1 チェルシー

今シーズンもディフェンディングチャンピオンとして、3連覇に向けて隙があまり見られないチェルシー。日曜日では最大のライバル、マンチェスター・ユナイテッドとの直接対決において、見事な采配から引き分けに持ち込み、ゲーム自体の内容も素晴らしいというサッカーで私たちを魅了してくれました。その首位決戦からわずか3日後、今度は3位のボルトンを相手にするという厳しいスケジュールです。

その現在3位のボルトン。開幕からは非常に粘り強いサッカーで勝ち点を積み重ね、首位のユナイテッドに肉薄する好調な滑り出しでした。しかしながら、そのユナイテッドをホームで迎えた対戦で、完膚なきまでに叩きのめされて惨敗したのがきっかけとなったでしょうか、その後はすっかりと調子を落として白星に見放され続けてしまいました。
ようやく勝利に恵まれたのが、この試合の直前の土曜日のホームゲームです。それも、何とあの強豪アーセナルに対して3-1という快勝だったのです。ボルトン側からは、「今季これまでで最高の内容での大勝利」などとして賞賛する声も出たほどでした。ただ、私はこの試合を再放送で実際に観ましたが、正直に言わせていただくと、それほど有頂天になれるほどの試合運びではなかったように感じられました。アーセナルは主力FWのアンリ、ファン・ペルシが欠場という、飛車角抜きの陣容だったこと。ようやく爆発した新戦力FWアネルカの、単一での個人技による2得点があったこと。アーセナルのシュートを、ことごとくゴールポストが助けてくれたこと。これらの要素も見逃さずに含めて、チーム全体の出来としては今ひとつといった印象を受けました。
目下順位争いのライバルであるポーツマスが敗戦したことや、アーセナルの消化試合数が1つ少ないことなどから、序盤の成績の貯金によって3位まで転がりこんでこれたというのが実情です。果たして、現在の地位に本当にふさわしいのか。ホームで王者チェルシーとの対戦という、真価が問われる一戦です。

ボルトンは両サイドを有効に活用しようとする4-3-3。対するチェルシーは4-4-2で、前線はドログバとシェフチェンコのツートップの下にバラックを置くという、ここ最近固まりつつある布陣です。

前半はチェルシーが優勢でした。と言いますのも、ボルトンは狙い通りに広く展開する動きを見せるのですが、余りにボールの出し手となる選手たちのコントロールが粗いのです。肝心のサイドチェンジのボールを始め、前方にくさびとさせるべく託すパス、そして単なる放り込みまで、ことごとくあらぬ方向へと飛んでいきました。これでは期待のアネルカも、前回の試合に比べては前を向けるシーンが激減してしまい、その個人技を発揮することができません。

こうして支配率を高めることのできたチェルシーは、中央攻撃を中心として組み立てますが、こちらもなかなか崩しきるまでには至りません。色々な原因があったとは思われますが、中でも私はMFバラックが大ブレーキであったためだと主張したいのです。いまだに周囲との連携が合っていないことから、ボールが行き違いとなって攻めが寸断されるのは大目に見るとします。しかしそれ以上に、自身によるキープ力のなさ、ならびに決定機でのトラップミスなどから、チャンスとなりそうなところを何度も潰してしまっていたのはよくありませんでした。チーム全体が中央へと攻め入る状況下においては、ダイヤモンド型の中盤のトップにポジションをとる選手には、通常はその指揮が全面に任されます。決定的な攻撃がまるで実らなかったのは、この役割だった彼に少なからず責任はあったでしょう。

しかしそのバラックが、この試合で唯一となる得点を挙げたのです。前半もロスタイム、コーナーキックからのボールを、バラックはヘッドでうまくゴール内へ流し込みました。全然いいところのなかったバラックでしたが、この一発だけは鮮やかでしたね。

後半も、引き続いて同じような展開でした。ボルトンのFWディウフが、切れ込んでから2度ほど得点を感じさせるシュートを放ったくらいでしょうか。それ以外は、リードしたチェルシーがどっしりと支配して、ボルトンは自ら失敗を続けて自滅するという、変わらぬ内容で試合終了です。チェルシーが勝利しました。

とにかくボルトンは、後述するチェルシーの巧みな守備が立ちはだかったことも事実ですが、それに加えて自らのパスミスのオンパレードで流れを逸し続け、全くリズムに乗れなかったというような敗戦でした。中盤で軸となるべきカンポやノーランを始めとして、プレッシャーのない場面からでも、きちんとつなげられるような配球ができないのは、ちょっといただけないような気もします。せっかく戦術どおりにサイドをえぐっても、そこから上がるクロスもほとんどは相当に精度が悪いものばかりで、基礎技術力の低さを露呈するかたちとしてしまいました。残念ですね。何とか、スタートダッシュを成功させたときに見せていた効率的な組織力を取り戻し、この停滞気味の波から脱出してほしいところですね。

対照的に、個人技術が高かったのはチェルシーです。チェルシーですし、当たり前と言えば当たり前なのですけれどもね。この試合では、攻め崩すところまで行けなかったために、仕方なくミドルシュートを連発したのですが、またこれがほとんど素晴らしい精度で脅威的なものばかりだったのです。ランパードが、ドログバが、シェフチェンコが、ゴール枠内へ強烈に襲う一撃を繰り出していきます。ボルトンのキーパー、ヤースケライネンもよくこれらを防ぎきったものです。

チェルシーを観て、いつも思わされるのが、その高い個人技に頼りきることなく、全員の攻守の切り替えへの意識が速いことです。相手にボールが渡るなり、全選手がサッとその対応に入ります。中盤以下はきちんと相手のパスコースを消す配置につき、決してドタバタせずに、無駄のない動きで展開して守りの体制を構えるのです。もちろん、守備においても個々に技術が備わっているのですが、スムーズに機能的に働く組織でもって、この試合でも追いつきたいボルトンを大いに苦しめました。技術力を炸裂させての押せ押せというサッカーはせずに、このように流れに従ってうまく立ち回り、着実に堅実に。チェルシーにとっては普段どおりのこのサッカーで、今日も勝ちきりました。チェルシーを語る上では何を今さらという感じの話でしたが、こうした相変わらずの勝負強さが健在です。これで今季公式戦で勝利した14試合中、1点差での勝利はその半数にもあたる7試合です。前線の構成は変わろうとも、手堅さは不変です。

その前線なのですがね・・・。このブログでもしつこいほどに書いていますが、シェフチェンコとバラックです。とうとうシェフチェンコには、「ミランへレンタル移籍での復帰も可能性あり」との報道も出てくるほどです。この日もやっぱり、2人ともゲームにはさほど絡んでこれませんでした。殊勲の決勝弾を挙げたバラックも、前述の攻撃時での失敗や、守備においてもファール連発など、一人浮いた存在でありました。ゴールすることができて救われはしたものの、総じては落第点であったことは否めないでしょう。出場を確約させる契約でもあるのか、看板選手として出場させたい(させざるを得ない?)クラブ側の思惑があるのか、私たちには到底知ることのできない背景があって、起用が続けられているとさえ思わされてしまいます。
もちろん、私も彼らの素晴らしい能力が存分に発揮されることを強く望んでいます。ですが、ここまで出場機会を与えられて、いまだチームにフィットできないのでは、もうそろそろ「この補強は失敗であった」とチェルシーサポーターからも言われかねない現状です。他の選手の奮闘によるチームの好成績でこの問題は薄れがちですが、仮に彼らが今後もこのままの状態として、果たしてリーグ戦などで切羽詰る成績となってきた場合でも、起用はされ続けるのでしょうか。長い目で見るにしても、限度はあります。

それでは、他チームの試合結果にも目を向けてみましょう。

首位のユナイテッドは、ギグスやスコールズなどの主力を休ませる先発メンバーでもって、ホームでエバートンと対戦しました。
普段とは異なる中盤のため、なかなかいいかたちが生まれませんでしたが、中央でMF陣がこの日唯一うまくかみ合った場面から、最後はロナウドの見事なシュートで先制します。チェルシー戦での負傷が懸念されていたロナウド、元気そうでよかったですね。
エバートンはチームをけん引してきたFWのジョンソン、ケーヒルという二枚看板の不在で、もともと攻め手が欠けていたところに、この失点で一気にトーンダウン。後半には、ユナイテッドのエブラに1得点1アシストの活躍を許し、さらに2失点をしてしまいます。いいところなく負けてしまいました。
ユナイテッドにとっては、選手をうまく温存できての3-0。大きな勝利でした。

3位以下では、まずこのボルトンが敗戦。続いてアストン・ヴィラ、さらにはアーセナルまでもが負けてしまいました。リバプールもホームで、4位だったポーツマスと引き分けるなど、実に3位から9位までのチームに白星がありませんでした。
各チーム、ますますユナイテッドとチェルシーには引き離される結果で、リーグはこの2強だけによるマッチレースという様相を呈しています。


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