みのる日記

サッカー観戦記のブログです。国内外で注目となる試合を主に取り扱い、勉強とその記録も兼ねて、試合内容をレポートしています。

パレルモ × インテル

2006年11月28日 | サッカー: セリエA
06/07 セリエA 第13節: パレルモ 1-2 インテル・ミラノ

イングランドにおいて首位攻防戦が行われたわずか1時間半後、イタリアのセリエAでも1位と2位の直接対決の試合が行われました。

今シーズン、イタリア国内で驚きの活躍を続けているのは現在2位のパレルモです。3シーズン前にセリエAへと昇格すると、そこから残留争いはおろか中位以上へ台頭してくる成績を残してきて、ついにこのシーズンでは上位の優勝戦線まで上り詰めてくるようになったのです。
1ヶ月前に、あのミランと対戦した試合では、生き生きとしたサッカーで、アウェー戦をもろともしない快勝をして私に好印象を与えてくれました。その後もチームは勢いに乗り、勝ち点を重ねていきました。私もそれから1、2試合ほど軽く観ましたが、個人技の弱さを運動量でもって相当にカバーする、快活な内容でした。前節は敗れてしまい、首位のインテルとは1勝差で離れてしまいましたが、それまではインテルと勝ち点で並び続けていたという躍進ぶりです。

そんなパレルモというチームを軽くご紹介します。
色々なフォーメーションを持っていて、試合ごとに布陣がよく変更されるのですが、変わらないのが攻撃力です。これを武器として、チームはのし上がってきました。その前線では、今季好調なブラジル人FWのアマウーリをトップにドンと置いて、そのやや後方から、ディ・ミケーレやブレシアーノといった2人のシャドーストライカーが襲うというパターンを多用しています。これはワイドに開く3トップ気味というわけではなく、3人ともが敵陣中央に勢い良く突っ込んでいってかく乱し、ゴールに結びつけるという、やや強引ともいえる戦法が特徴的です。チーム全体もそれを支援すべく、豊富な活動量で中央から押し上げます。直線的で突貫型な、例えるなら猪のような突進力を持ったチームです。
ですが、欠点もあります。失点も多いのです。攻撃陣を筆頭として、余りに中へと集中して突入してしまうので、サイドアタックやカウンターなどから、あっさりと守備を破られてしまうのです。開幕戦から4-3というスコアが物語るように、得点も失点も重ねる、まさにやるかやられるかという派手な試合を勝ちきることで制してきて、ここまでの成績となっています。

そのパレルモに乗り込むアウェー戦で、現在の首位の地位を固めたいインテルです。当初はまさかのチャンピオンズリーグ2連敗という発進で、一体どうなることかとも思われましたが、その後はそれまでの不振が嘘のような安定感を取り戻して勝ちまくりました。現在公式戦は何と7連勝中。水曜日に行われたそのチャンピオンズリーグの第5節でも勝利し、結局は最終節を待たずして突破を決めてしまいました。故障などで選手の離脱が続く中、残された人材をうまくやりくりしてパフォーマンスを保ち、リーグ戦では12試合を終えていまだ無敗という文句なしの1位に立っています。

ホームで、インテルに対してはどんな内容で立ち向かってくれるのか。期待のパレルモは、3-3-2-2と、普段とは少し異なるフォーメーションで臨みます。
インテル側では何と言っても注目なのが、「お騒がせ男」のFWアドリアーノが、ついにイタリアに戻ってからは初となる先発での出場ということです。2戦連続ゴールを決めたクレスポをベンチに追いやって、この重要な一戦に起用されました。

満員に埋まるスタジアムの中で、試合は開始されました。
前半7分、インテルは何でもない後方からのロングボールを、アドリアーノが胸で落とします。それを受けたFWイブラヒモビッチ、30メートル以上はあろうかというところから果敢に強烈なシュートを放ちました。これをキーパーのフォンターナ、まさかそこから撃ってくるとはと虚を突かれたか、セーブすることができません。わきの下をボールがくぐりぬけてゴールインし、この意外な一撃によってインテルが先制です。

今日のパレルモは、どうも右サイドからの攻撃が軸となっていました。得意の中央では、前線へのパスがうまくつながらずに、受けてからもボールのコントロールが定まりません。何より相手陣内での競り合いでことごとくファールを受けてしまい、攻めが寸断されがちです。エースのアマウーリになかなかボールを収められません。それで、唯一元気だった2列目の右にいるディアーナ。彼にボールが集まるようになり、攻めはここのエリアを起点としたものばかりでした。
よって、これまでの突進するような勢いが見られません。一方のインテルも幸先良くリードしてしまったものだから、あまり無理に攻めることはせずに淡々と時間を進めていきます。双方決定的なシーンにまで至らず、予想以上に盛り上がりの欠ける試合となってしまっていました。

ほとんどいいかたちを作れなかったパレルモ。このまま前半終了かと思われたロスタイムです。左のピザーノのクロスを、ブレシアーノが難しい態勢ながら見事なヘッドで真横に落とします。これをアマウーリがワンタッチのアウトサイドキックでゴール右隅に決めるという、難易度の高いシュートで同点に追いついたのです。この一連の過程だけは、素晴らしいものがありました。パレルモにとっては、前半でタイスコアに戻せたという、大きな得点です。

これで後半からは俄然勢いを取り戻してくれるかと思われたパレルモですが、残念ながらそうでもありませんでした。
どんな事情だったのかわかりませんでしたが、後半早々にエースのアマウーリを退ける交代がありました。この代わりに投入されたFWのカラッチョロですが、これがまた全くの期待外れで、前線はむしろ弱体化されてしまいました。謎の采配です。
自陣内でもパスミスを連発。右サイドアタックも見られなくなり、チーム全体が中央でだんご状態となる詰まった展開で、リズムは生まれそうにありませんでした。
そして、依然として冷静な立ち回りのインテルに勝ち越し点を与えてしまいます。アドリアーノのドリブルでの駆け上がりを許し、そこからフリーだったMFビエラに豪快な一発を決められて、再びリードされてしまったのです。

何とか反撃したいパレルモは、選手交代を経て大幅にフォーメーションを変更させ、中盤でもスペースを見つけることができるようになりましたが、結局はゴール前へ効果的なボールを配給するまでには至りませんでした。
これの最大の要因の一つは、インテルの選手たちの落ち着いた対応だったでしょう。特に中盤のサネッティ、ビエラ、そして今日はボランチに入ったスタンコビッチです。彼らが要所となるところで確実にボールの出し所を抑え、奪取しては巧みに捌き、パレルモの支配を阻害する大きな障害として存在していたのです。
こうしてホームでありながら、畳み掛けるような攻めを一度も炸裂させることができなかったパレルモ。コーナーキックというセットプレーでのチャンスでも、カラッチョロのヘッドがポストを叩くという運のなさで、とうとう追いつくことはできず。1-2で、元気なく敗戦という結果となりました。

パレルモは調子に波があって、出来不出来が定まらないということは承知していたのですが、残念なことにこの試合では、その悪い方を観ることとなってしまいました。強敵が相手だった事実もありますが、アグレッシブかつ爽快な動きで爆発してきたパレルモのサッカーを、今回は披露してくれませんでした。
今日の試合のためにいくらかメンバーを落として惨敗したUEFAカップは仕方ないにしても、それを含めて公式戦は3連敗となり、チームは下降線をたどり始めています。自慢の得点力も、その3戦でわずか1点と陰りが見えてきました。
思うに、そこにはディ・ミケーレの不在というのも少なからず影響があるのではないでしょうか。故障なのか、コンディション不良なのか。医師に通いつめているとも伝えられている彼は、今日を含めたこの3試合に出場していません。今季エースとして才能を開花させたアマウーリの活躍の陰には、その立役者となっていたディ・ミケーレの存在があったことは事実です。小柄ながらもドリブルで敵を引き寄せ、自身も決定力を秘めているという、チームをけん引してきた選手でした。その彼がいなくなったことと、チームが失速してきたことは、決して関連がないとは言い切れないと考えています。

これで、さらにインテルとの差は広がってしまいました。しかしながら、依然として3位です。ここ数年の急成長で過熱するパレルモの報道に対し、グイドリン監督は「優勝などとんでもない。まだUEFAカップ圏内を狙うチーム」と控えめですが、この連敗にもめげずに盛り返し、その爽快なサッカーで、見事チャンピオンズリーグ出場になるまでの大躍進を遂げてほしいですね。

さて、インテルはまたも白星を挙げました。この最近の好調さを一言で表すと、「安定感」でしょうか。パレルモとは、本当に対照的な流れですね。今日の試合でもそうでしたが、特に中盤の選手たちが落ち着いて取り乱すことがなく、相手の火消しに、自軍のキープにと、持っている高い能力で地味ながらもチームへ多大に貢献しています。この崩れることのない土台で、日替わりに発揮するFW陣の選手たちの決定力でもたらされたリードを守り、連勝という結果につなげてきました。豪華な顔ぶれに比べて、手堅く冷静な試合運びが、今のインテルの支えとなっています。

この日話題の一つであったFWアドリアーノも、意外と言っては失礼ですが、自分から切れ込んで行くという序盤にはまるでなかった積極性が見られ、及第点の出来でした。結果的に2アシストですものね。選手の負傷退場が相次いで交代枠がなくなり、思わぬフル出場となって、体力の無さから最後はバテバテになってしまったのはご愛嬌です。「怪物」と呼ばれていた彼の復調は、インテルにとって朗報でしょう。

今節の結果、インテルは頭一つ抜け出す勝ち点33に。それを追う2位ローマは勝ち点29、3位パレルモは勝ち点27のままとなっています。


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