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南英世の 「くろねこ日記」

徒然なるままに、思いついたことを投稿します。

政治の舞台裏

2016年02月11日 | 日常の風景
以前勤務していた東大谷高等学校の学園長左藤恵(さとうめぐむ)先生が、昨年10月に本を出版された。
『七転び八起き 九十まで』(樹々出版)という人生の回顧録である。
京大法学部を卒業後、司法試験に合格、逓信省(現郵政省)のキャリア官僚として活躍後、衆議院に10回当選。
郵政大臣、法務大陳などを歴任された方である。

この本の後半がむちゃくちゃ面白かった。
当事者しか知り得ない政治の裏話が満載なのである。
曰く

◆ 「そもそも派閥とは、選挙資金を配分する機関ですから、実質的な活動としてはそれほど大したことはしていません。」(p105)

◆ 「何か法律を新しく作るときにも、アメリカがいろいろと口出ししてきます。法案作成時だけではなく、次年度の予算編成の際にも必ず、アメリカから要望書みたいなものが出てくる。」(p126)

◆  「郵政民営化は・・・・おそらくはアメリカの金融業界が、アメリカ政府にプレッシャーをかけたものだと思います。要するに、日本の市場にもっと参入できるように便宜を図れということでしょう。・・・郵政を民営化してしまうことで、郵便貯金と簡易保険を民間と同じ条件にして弱体化させる。そこにアメリカの金融資本がドンと入ってくる」(p127)

◆ 「日本人のほとんどが、アメリカは同盟国なのだから、日本を助けてくれると思っておられるのかもしれません。けれども、アメリカにも国益があります。だから、国益と国益がぶつかり合うところでは、本当にぎりぎりのせめぎ合いをしているのです。」(p139)


また、55年体制が崩壊し、細川内閣が3%の消費税を廃止し、7%の国民福祉税を創設しようとして、すぐとん挫したことに対しても、
◆ 「労働人口が減っていくために税収が減る一方で、費用の掛かる高齢者が増えていけば、日本の財政に大きな問題が起こることは、既定の事実だったのです。国家財政の破たんを防ぐために、細川首相は財源を確保しようとした。けれども、連立政権は一枚岩ではありません。まず社会党が増税に対して正面切って反発しました。・・・・こうなると寄り合い所帯は弱い。・・・細川内閣は死に体となってしまいました。」(p168)

◆ 「当時の労働省は労働組合のことを第一に考えて、労働者に負担を増やすようなことは言わない。厚生省は医師会や薬剤師会の言うなりとまではいわないにしても、その顔色をうかがう。だから医療費を抑えるような施策は打ち出せない。」(p185)

◆ 「もっとも、そうした矛盾を正面から指摘する政治家もいないわけです。仮に、社会保障制度を根底から見直さなければならないとか、将来世代に負債を残さないためには、今すぐにでも年金をカットして、医療費の自己負担比率を高めることが必要だ、などと主張する候補者が、選挙で当選できるはずもないでしょう。」


また、巻末に左藤先生の秘書を20年間務めたという方が書いておられた話も面白い。
◆「この間、先生からお金のことで何か言われたことは、一切ありません。ほかの事務所の秘書仲間は、みんなお金集めに苦労していました。お金を集められない秘書は無能だ、と罵倒する議員もいたそうです。だから、私はみんなからとても羨ましがられていました。」(p205)



郵政民営化にこんな見方があるとは知らなかった。
思わず、TPPをめぐる交渉を思い出してしまった。

このほか、柔らかいエピソードもたくさんあり、大変参考になった。
貴重な本を送っていただいた元同僚のO先生にお礼を申し上げます。