難しいことを自分の言葉で語れるようにならないと本物ではない。高校生向きに有効需要の原理をいかに分かりやすく説明するか。ちょっと挑戦してみたい。
結論を先に書く。
有効需要の原理とは、企業は売れる分しか作らないということである。
この当たり前すぎることを最初に主張したのがケインズであり、それを上のような平易な言葉で表現できるようになるまで私は40年以上もかかった(汗)。
1.不景気はなぜ起きる
今、失業者が一人もいない完全雇用下での社会全体の総供給を「総供給*」とあらわし、総供給*=500兆円とする。
ところが、1年間で500兆円作っても、もし400兆円分しか売れないとすると、企業は生産量を少なくし、売りきれる400兆円分しか生産しなくなる。
すなわち、実際に供給される「総供給」は400兆円となってしまい、社会全体で100兆円分の生産設備と労働者が遊んでしまうことになる。つまり、社会全体の総需要の大きさが、社会全体の総供給を決めるのである。こうして失業者が大量に発生し、不景気が生じる。(不完全雇用均衡)
現実の総供給= f ( 総需要 )
=400兆円
総供給* > 現実の総供給
(500兆円) (400兆円)
では、不景気を治療するにはどうしたらいいか。
答えは簡単である。社会全体の総需要(ケインズはこれを有効需要とよんだ)をあと100兆円増やせばいい。そうすれば
総供給* = 現実の総供給
(500兆円) (500兆円)
となり、失業者が一人もいない理想状態を実現することができる。
2.有効需要の構成要因
では、有効需要(=総需要)とはなにか? 答えは次の4つである。
① 消費
② 投資
③ 政府支出
④ 輸出-輸入
減税を行い消費を増やし、金融緩和を行い投資を増やし、赤字国債を発行し政府支出を増やし、円安に誘導して輸出を増やす。
そうすれば景気は回復する・・・・・はずである
3.それでも景気が回復しないのはなぜか?
ここから先はおまけである。1.2で述べたように原因も治療薬もわかっているのに、日本は長期不況から脱出できない。なぜか?
今の日本では
① お金をもっている団塊の世代が、老後に備えてお金を使おうとしない。
一方、若い人は非正規雇用が多く、お金がなくて使えない。
② 企業は海外ばかりに工場を建て、国内に投資しない。
③ 政府の借金能力も限界に近付きつつある。
(麻薬は最初は効いても、しだいに効かなくなるのと似ている)
④ 輸出も、新興諸国の追い上げの影響で、伸び悩んでいる。
また、日本企業が海外に生産拠点を構えるようになって、
海外で生産した日本製品を日本に輸出する「逆輸入」が増えている。
結局、①消費も増えない、②投資も増えない、④輸出も増えない
頼れるのは ③政府支出だけなのだが、それも限界に近付きつつある。
4.人口オーナス期に入る
今後日本は人口減少社会が本格化する。今から思えば、日本が戦後の経済成長を実現できたのは、人口ボーナスによるものではなかったのか。
団塊の世代が大量に都会に出てきて、住宅を買い、必要な電気製品を買い、車を買った。今とは違って、金額がけた違いに大きいものばかりだ。企業はそうした需要にこたえて生産を増やし続けた。その結果、日本は繁栄した。
しかし、今は人口減少社会の入り口に立っている。人口構成の変化が経済にとってマイナスに作用する状態を人口オーナスという。
経済の成長エンジンは投資の量である
人口が減れば家は親のをもらえばいい。家も家電製品も車も売れなくなる。日本の投資の量は減るばかりである。日本の経済力が低下していくのは避けようがない。50年単位で世界を読む必要がある。その中で2014年はどのような年になるのか。
麻薬を打ち続ける経済は、いつまでも続くわけではない。