五十年も前のこと。
カシアス・クレイがソニー・リストンを倒して世界ヘビー級チャンピョンになり、世界中のテレビを見ていた人々にデビューしたのは私が21、2才の頃だった。ボクシングを見て興奮するのが大好きな私は、もちろん、この試合を見てとても興奮した。筋肉が2倍もあるようなソニー・リストンを無名の若い男性が倒したのだから。
半年後にリターンマッチが行われた。世界中の誰もが、今度はカシアス・クレイが倒され、ソニーリストンが勝つと思って見ていた。ところが予想を裏切ってソニー・リストンがリングに長々と寝たのである。世界中は呆気に取られた。カシアス・クレイが世界中に認められた日である。
その後、カシアス・クレイは何度も何度もチャンピョンを防衛した。
中でも私が、すごいと思って思い出せるのは、オリンピック金メダルのジョージ・フォアマン(名前を突然思い出した、ジョー・フレイザー。あとで確認します。→ 間違っていた。ジョージ・フォアマンが正しい)、との数度にわたる防衛戦です。カシアス・クレイはもう下り坂だったはず。でも、全部、カシアス・クレイが勝った。この頃は、カシアス・クレイは名前を変えてモハメド・アリと名乗っていた。
カシアス・クレイの戦術は際立っていた。試合中に口汚く相手を罵るのである。
「お前みたいなウスノロは俺が蝶のように舞い蜂のように刺してやる」とか何とか。
冷静に戦おう、と思っている相手が思わずカッとなって冷静さを失い、カシアス・クレイの術中にはまってしまうのである。
モハメド・アリは防御もうまかった。ジョージ・フォアマンが打っても打っても、アリの新ブロック(寒い寒いと両手を胸に巻きつける格好。検索して見たが、このシーンはカットされており、なかった。残念)、に阻まれてしまう。口汚く罵られ、最後の最後に強烈なアリの反撃を食ってしまう。
防戦一方のアリはパンチが出ない。だが、左右のショートパンチを顎にもらってリングに倒れたのはジョージ・フォアマンだった。フォアマンは倒れているのが自分で両手を高々と上げているのがアリであることが信じられなかった。
天才的だった。あんなに打たれて、当ってなかったのか? 効いてなかったのか? 見ている人の目を疑わせる、そういうことも出来る天才だった。
でも、後年のアリを見ていると、やはり打たれていたのだ。
前々回のオリンピックの開会式だったか、それとも前々前回のオリンピックだったか、アリは震える手でアメリカを代表して登場した。あの震える手に世界は驚いた。
そして今回のイギリスのオリンピックでは、パーキンソン病のために盲目になったアリが登場した。リングの中を蝶のように飛び回り相手を口汚くののしってカッとさせ、蜂のように刺す黒い若者が盲目の老人になった。若き日の面影はどこにもなかった。
カシアス・クレイがソニー・リストンを倒して世界ヘビー級チャンピョンになり、世界中のテレビを見ていた人々にデビューしたのは私が21、2才の頃だった。ボクシングを見て興奮するのが大好きな私は、もちろん、この試合を見てとても興奮した。筋肉が2倍もあるようなソニー・リストンを無名の若い男性が倒したのだから。
半年後にリターンマッチが行われた。世界中の誰もが、今度はカシアス・クレイが倒され、ソニーリストンが勝つと思って見ていた。ところが予想を裏切ってソニー・リストンがリングに長々と寝たのである。世界中は呆気に取られた。カシアス・クレイが世界中に認められた日である。
その後、カシアス・クレイは何度も何度もチャンピョンを防衛した。
中でも私が、すごいと思って思い出せるのは、オリンピック金メダルのジョージ・フォアマン(名前を突然思い出した、ジョー・フレイザー。あとで確認します。→ 間違っていた。ジョージ・フォアマンが正しい)、との数度にわたる防衛戦です。カシアス・クレイはもう下り坂だったはず。でも、全部、カシアス・クレイが勝った。この頃は、カシアス・クレイは名前を変えてモハメド・アリと名乗っていた。
カシアス・クレイの戦術は際立っていた。試合中に口汚く相手を罵るのである。
「お前みたいなウスノロは俺が蝶のように舞い蜂のように刺してやる」とか何とか。
冷静に戦おう、と思っている相手が思わずカッとなって冷静さを失い、カシアス・クレイの術中にはまってしまうのである。
モハメド・アリは防御もうまかった。ジョージ・フォアマンが打っても打っても、アリの新ブロック(寒い寒いと両手を胸に巻きつける格好。検索して見たが、このシーンはカットされており、なかった。残念)、に阻まれてしまう。口汚く罵られ、最後の最後に強烈なアリの反撃を食ってしまう。
防戦一方のアリはパンチが出ない。だが、左右のショートパンチを顎にもらってリングに倒れたのはジョージ・フォアマンだった。フォアマンは倒れているのが自分で両手を高々と上げているのがアリであることが信じられなかった。
天才的だった。あんなに打たれて、当ってなかったのか? 効いてなかったのか? 見ている人の目を疑わせる、そういうことも出来る天才だった。
でも、後年のアリを見ていると、やはり打たれていたのだ。
前々回のオリンピックの開会式だったか、それとも前々前回のオリンピックだったか、アリは震える手でアメリカを代表して登場した。あの震える手に世界は驚いた。
そして今回のイギリスのオリンピックでは、パーキンソン病のために盲目になったアリが登場した。リングの中を蝶のように飛び回り相手を口汚くののしってカッとさせ、蜂のように刺す黒い若者が盲目の老人になった。若き日の面影はどこにもなかった。