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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ロビン・フッド

2010-12-27 21:04:19 | 映画(ら)
評価点:45点/2010年/アメリカ

監督:リドリー・スコット

渡りに船、映画。

12世紀末、長い十字軍遠征に辟易しながらも、ロビン・ロングストライド(ラッセル・クロウ)は優秀なアーチャーとして帯同していた。
フランスの城を落としながら、物資を得ていたイングランド王、リチャードは敵の矢に討たれてしまう。
王冠を直ちに本国へ届ける名を受けたロバート・ロクスリーだったが、その道中待ち伏せに遭い殺されてしまう。
そこへロビンがたまたま出くわし、ロバートになりすますことを思いつく。
仲間たちとともに凱旋し、リチャード王の死を知らせたロビンは、ロバートから頼まれて地元へ剣を返しにいくことにする。
リチャード王を失ったイングランドは、国政を何も知らないジョン王に任せることになるが…。

批評にはしていないが、「グラディエーター」は二度見にいった。
リドリー・スコットと、ラッセル・クロウのタッグで、しかも歴史スペクタクルを描くのはこれが二度目だ。
そこに、ケイト・ブランシェットが加わり、盤石の体制となった本作だが、周りの前評判はいまいちだった。
きっとおもしろくないだろう、というのがほとんどの人の印象だった。
もちろん、僕もその一人で、絶対におもしろくないだろうけれど、やはりどうしても義務的に見ざるを得ないというのが、ハリウッド映画で育った悪い習慣だ。

ほとんどなきに等しい期待を振り絞って、重たい病み上がりの体を引きずって映画館に向かったのだが。

もし、この映画を候補に入れている人がいるなら、特に大きなモティベーションがないなら、候補から外すことをおすすめする。

▼以下はネタバレあり▼

ロビンフッドって誰? 何?
というくらいの知識しか僕は持ち合わせていない。
知っているのは、これもまた映画で、昔あったケビン・コスナーの「ロビン・フッド」くらいしかない。
義賊で、人の為に圧政から税を奪っていたとか、弓の名手だったとか、本当に実在しているか分からないくらい微妙な存在だとか程度だ。
そんな僕でさえ、この「ロビン・フッド」はひどいと思う。

監督曰く、この映画で新しいロビン像を描きたかったらしい。
だが、僕に言わせれば、どんなロビン像を描きたかったのか、さっぱりつかめない。

映画の展開が終始、渡りに船、棚からぼた餅、寝耳に水、だからだ。
もっと端的に言えば、一歩足を出したらたまたまそこに道があった、というくらい行き当たりばったりで、ご都合主義的な展開が続く。
書くと単なるあらすじになるが、仕方がない。
少しだけあらすじを書きだそう。

弓の名手のロビンが、たまたま出くわしたロバートさんの剣を受け取り、たまたま王冠をイギリス政府に届けることになる。
たまたまそのロバートさんの剣に書かれていた文句に聞き覚えがあり、実家まで尋ねると、いきなり息子になれと言われる。
とりあえず了承すると、町があれていたので人助け、すると、いきなりその主人が言うには「お前は人々をまとめる力があった父親を持っている」らしい。
イギリス政府があれてきたので、各地が乱れているところへ、たまたま訪れたロビンは、とりあえず適当に話をまとめて、諸侯の心を打つ。
そして、ジョン王に約束させて、フランス軍を迎え撃つ。
フランス軍は用意周到に攻めてきたはずが、たまたま荒れ狂う波にもまれて、体調不良。
船酔い中にイングランド軍が責め立てて、裏切り者へ矢を射るとたまたま命中する。
そして、ジョン王は、約束を守ってくれるのかと思いきや、思いつきでロビンを裏切り、ロビンは反政府組織のリーダーとなっていく。

いや~なんとも偶然って重なるものですね。
と、納得できるわけがない。
運命というものを信じないわけではないが、あまりにも作られすぎている。
事実がどうだったかなんて問題ではない。
話が線となって、線が重なり伏線が生まれ物語が紡がれる、そんな物語性が皆無だ。
ただ行き当たりばったりで話が進んでいき、たまたまそうなった、という印象しか受けない。
ロビンの「ロビン性」なる点が見つからない。
なぜなら、ロビンは何もしていないからだ。
ただその場に居合わせて自分の好きなように振る舞っただけだ。
彼は何の課題も克服しない。
父親に言われたことを諸侯にもう一度告げるだけだ。
だから全然かっこよくない。

何かと闘っているのが、かっこいいのだというのは、「エクスペンダブルズ」のミッキー・ロークが教えてくれたが、ロビンは渡りに船を演じただけで何もしていない。
失ったものもない。
町を燃やされるかと言えば、それも未然に防げてしまう。
「グラディエーター」で見せた悲壮感はかけらもない。
だから、話が重くないし、怒りなどの感情がこちらに巻き起こってくることがない。

マリアンに関して言えば、本当に強引な展開だ。
あの状況でロビンを好きになるマリアンはどうかしている。
大官にやたらと反抗して貞操を守っているかのような振る舞いはどこにいったのだろうか。
解せない。

そもそも、ロビンのかっこよさは、弓の名手であったり、義賊であったりする点だったはずだ。
それが弓を使うシーンがあまりに少ない。
何ヶ月も訓練して弓をつかえるようになったとパンフレットにあったが、まさに無駄骨だ。

だからアクションにしても見所が少ない。
ラストのフランスとの戦争など、なぜかマリアンや神父まで登場して、何でもありのごった煮の状態になってしまう。
なぜあそこでマリアンが登場してきたのか、全く理解できない。
剣の名手だとか、剣術を習っていたといった設定はなかったはずだ。
とってつけたような見せ場の演出に、もう僕は笑うしかなかった。

そしてお約束なのか、どうなのか、ジョン王の「奴はアウトローだ」宣言。
ちょっと二重人格か、健忘症かなにかの病気かと疑った。
彼がそう心変わりしてしまった内面もまったく描けていないので、見ている方はきょとんとするしかない。

なぜこんな脚本になってしまったのか、スコットは猛省するべきだ。
それにしても、諸侯をまとめたり、リバティを声高に宣言したり、ちょっと国際情勢を睨んだ脚本になっている(いや全然なのだけれど)点はおもしろい。
さすがハリウッド、無駄の最先端を走っている彼らを止めることは誰にもできない。

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