外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

風邪を引いた大人の幸せ、熱きワイン(vin brule')

2011-10-04 23:58:07 | グルメ
本文に関係ないけど、イエメンの猫。ゴミまみれで、なんかやさぐれてる。


イエメン旅行記は「一回休み」です。


急に寒くなったので、さっそく風邪を引いた。
家の中でもずっとフリースを着ているけど、やっぱり寒い。
夜寝るときは靴下を履いて、フリースを着たまま布団に入り、さらに毛布を掛ける。鼻水が止まらないので、ティッシュが手放せない。ぐすぐす。ふるふる。ぐすぐす。ふるふる。ふる。

灼熱の夏がようやく終わったと喜んでいたら、もう冬将軍が来てしまった。秋はどこへ行ったの?もう戻ってこないの?秋は私の一番好きな季節なのに…。失われた秋のことを考えると、とても恨みがましい気分になる。私は暑いのも寒いのも苦手なのである。
しかし幸いなことに、風邪引きには風邪引きの楽しみがあることを、私は知っている。それはヴィン・ブリュレである。

風邪を引いたと判明したとき、私はしっかり厚着をして出かけ、スーパーでオレンジと赤ワインを買ってきた。ワインはチリのもので、1本600円の安物だが、これがけっこう美味しいのだ。家に帰ったらさっそく作業開始である。

まずオレンジをスライスする。小鍋にワインをカップ1杯分注ぎ、オレンジを2,3枚と、砂糖適量を加える。その上からシナモンスティック1本、クローブを数粒放り込む。粒胡椒や唐辛子、生姜なんかを加えてもいいかもしれない。これを弱火にかけ、時々かき混ぜながらゆっくり煮る。熱したワインと、オレンジと、スパイスの香りが混ざり合って、とってもいい匂いがするはずなのだが、残念ながら風邪のせいで鼻が利かないので、よくわからない。沸騰直前に火を止め、オレンジやスパイスが入りこまないように、そうっとカップに注いで出来上がり!

子供の頃、風邪を引いて熱に苦しんでいるとき、夜中に目を覚ますと、母が冷たいサイダーの入ったコップを、枕元に運んできてくれた。シュワシュワと泡の立ち上る透明なサイダーを一気にごくごく飲むと、ほてった身体がすうっとして、生まれ変わったような心地がしたものだ。

でも大人になった今、私にはサイダーよりもっといいものがある。ドラゴンの血のように熱くて、香辛料が効いていて、ほんのり甘い(ドラゴンの血を飲んだことはないが)、大人の飲み物・ヴィン・ブリュレ。身体だけでなく、冷え切った心さえも温めてくれる特効薬なのだ。

イタリアのフィレンツェでは、毎年クリスマスが近くなると、サンタ・クローチェ広場で、「ドイツ・フェア」が開かれる。
本場ドイツからやってきたドイツ人や、北イタリアのドイツ語系住民たち(オーストリアと境を接するアルト・アディジェでは、イタリア語と並んでドイツ語も公用語になっている)が用意した、ザワークラウトがあふれんばかりにのっかったホットドッグや、いい匂いのストゥルーデル(リンゴ入りのパイ)や、ソーセージやビールの出店が広場に立ち並び、押し寄せた地元客や観光客がその間を練り歩くのだ。なぜかハンガリー・グラシュ(ハンガリーのシチュー)や、オランダチーズのお店などもあるし、可愛いクリスマスグッズも沢山売られている。フィレンツェの人たちは、毎年このドイツ・フェアに行くのを楽しみにしているが、私も例外ではなく、滞在中はだいたい毎年行っていた。お目当てはビールの屋台だったが、なにしろ寒い時期なので、野外でビールを飲む気がしないときもあり、そういう時は代わりに”vin brule’”を飲んで、体を暖めた。これはフランス語起源のイタリア語で、ヴィン・ブリュレ、またはブルレと読み、いわゆる「ホットワイン」を指す。メニューにはラム酒入りのシードル(林檎酒)なんかもあり、なかなか美味しかったが、かなり強いので、アルコールに弱い人は酔っ払うかも。

ヴィン・ブリュレの鍋の上にかがみこんで、木杓子でかき混ぜているとき、私はなんとなく魔女になったような気分になる。ぶつぶつ呪文を唱えながら、得体の知れない材料を大鍋で煮込んで魔法の薬を作る、太古の魔女。

燃えろ青き炎よ 静かに燃えろ
あかき竜の血 太陽の果実
遠き国のスパイス あまいお砂糖
かき混ぜろ かき混ぜろ
ゆらゆら湯気が立ちのぼり
ぷつぷつ泡が出てきたら
そら出来上がり 魔法のお酒
熱く気高きこの美酒が
身も心も溶かしてくれる

こうやってファンタジーの世界に入り込んでしまうのは、風邪のせいか、はたまた飲みすぎて酔っ払っているせいか?いやいや、私はもともと夢見がちなタイプなのだ。さてと、もう1杯作ろうかな。

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