外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

アンマンの反政府デモ(4月19日金曜日)

2013-04-20 20:25:11 | ヨルダン(猫中心)


昨日の金曜日、イスラーム行動党(ムスリム同胞団の政党)主催の反政府デモを見に行った。

私の愛読するヨルダンの地元紙アッサビール(私の知る限り、読むに値するヨルダンの新聞はこの1紙だけ)に、金曜日のお昼の集団礼拝のあと、アル・フセインモスク前の広場から大規模な反政府デモが出発する、と書いてあったのだ。

先週の金曜日、ヨルダン北部の都市イルビッドで行われた反政府デモ(これもイスラーム行動党主催)で、治安部隊の催涙ガスによる弾圧と、デモ参加者と王政擁護派等の衝突が発生して、11人の負傷者がでる事件があった。負傷者の中には、同胞団北部のリーダー格の人物もひとり含まれるという。
またその数日後、同じくイルビッドでイスラーム系の学校への放火事件も発生している。

平和的な反政府デモへの弾圧や、王政擁護派による暴力行為に対する、治安部隊の暗黙の容認への抗議行動として、今回のデモは大々的に行われると予想された。

イルビッドでは以前もこのような衝突があったが、アンマンのデモは私の知る限り平和的に終始するのが常であった。
警官たちは弾圧どころか、何事も起こらないように温和にデモ参加者を見守っている、という風情である。もちろん写真も撮り放題だ。

デモ当日の金曜日、私が起きたのは昼の12時だった。
休日なので朝寝坊なのだ。平日だってせいぜい9時おきだが・・・。
急いで支度をして家を出て、約40分かけて徒歩でアンマン山を降り、ダウンタウンへ向かう。
金曜日のお昼の礼拝前後は路上に人気が少なく、乗合タクシーなども走っていないからだ。

アル・フセインモスク前の広場に着いたときは、もう1時半近かった。
集団礼拝はもう終わっていて、デモが始まったところだ。
デモの中心となる移動ステージ(トラックの荷台に櫓を組んである)では、同胞団の指導者らしき人たちがマイクを握って演説を行っている。
その合間にイスラームのタクビール(アッラーは偉大だ、と唱えること)や、スローガンを参加者全員で叫んで、喝を入れている。

今回のデモの特徴は、今までのような「政府」や「内閣」への改革要求ではなく、イルビッドでの事件を含むヨルダン国家の現状の責任者として、現国王のアブドッラー2世を名指しで非難し、迅速な改革推進を要求した点だと思う。
アブドッラー2世に対する改革要求は、「すぐに改革をやらなかったら、どうなるか覚悟しとけよ!」的な警告とともになされていた。
そう言う意味で、ヨルダンの反政府運動はじわじわと佳境に入りつつある、と言えるのではないだろうか。

デモ行進の最前列には、赤と白のカフィーヤをかぶった威勢の良い若者たちが並んでいた。そのあとに年配の人々が続く。
全体で千人を超えていたと思う。数えてないけど・・・。
行列の周囲には、警官たちがずらりと並んでいた。
彼らは互いに手をつないで人の輪を作り、デモが行われているキングタラール通りと、その両側の歩道を隔てるヒューマンシールドとして機能しているのだ。
いつもの如く警官たちはリラックスした風情で、談笑しながら働いていた。
アンマンのデモならではの平和な光景だ。

演説やスローガンは前代未聞の激しい内容だったが、それを別にすれば、デモはいつもどおりゆっくりと平和的に進行していった。
私も道端で売られているひよこやアヒルに気を取られたり、ジュース売りのおじさんからタマルヒンディーのジュースを買って飲んだりしながら、散歩気分でのんびり歩いた。

スーク周辺を歩いているとき、ある若者が近づいてきて、私にタマネギを1個差し出した。
戸惑っていると、「これほしい?催涙ガス弾だよ。あげるから投げたらどう?」と、彼は笑いながら説明した。
そりゃタマネギだから、催涙ガスには違いないけどさ。
そういう冗談は洒落にならんからやめてほしいんよね~。

なかなか進まないデモ隊を先回りして、デモの終結地点の広場に行ったら、そこには防弾チョッキを着て、透明なシールドを構えた治安部隊のみなさんが大勢待機していた。
彼らはデモ開始当初から、ずっとここに立っていたに違いない。ご苦労なことである。
私も広場周辺の隅っこに立ち、移動ステージの到着を待ったが、いつまでたってもやってこない。
広場の数十メートル前で動きを止め、延々と演説をしたり、みんなで歌を歌ったりしているのだ。

風が強くなって、寒くなったからもう帰ろうかなと思っていた矢先、突然雨が降りだした。
ほかの見物人や警察やジャーナリストたちと一緒に、屋根のあるところに移動して雨宿りする。
雨は止む気配がなく、むしろ激しくなってきたので、最終的にデモはおひらきになった。
参加者たちは急ぎ足で散り散りに去っていき、ステージカーも櫓をたたんでどこかに走り去っていった。
治安部隊もバスに乗り込んで帰っていく。
時刻は3時半。デモ開始から2時間ほど経過していた。
ちなみにアル・フセインモスク前広場からデモ終点の広場までは、徒歩10分程度である。

雨のせいで解散なんて、勢いよく始まったわりにしょんぼりした終わり方である。
だからあんなにダラダラ立ち止まったりせんと、テキパキ進んで1時間くらいで終了すればよかったのに~、そしたら雨が降る前に帰れたのに~!
と心の中でぼやきながら、私も家路に向かった。

ともあれ、今回もアンマンのデモは何事もなく終わりました。
めでたし、めでたし。


赤と白のカフィーヤをかぶった若者たち



手をつなぐ警官たち



赤いベレー帽の一団もいた



道端のアヒル



路上で食事をする人たち



伝統的な衣装を身につけた、タマル・ヒンディーのジュースの売り子さん



タマル・ヒンディーのジュース。美味しかった



デモ終点で待機する治安部隊



雨が降って、デモはおひらき



道端でコシャリ(エジプトの料理)を食べてから帰りました。本場の味で美味しかったよ。


コメント
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