扉
認知小の母を老人ホームに入れた
認知症の老人たちの中で
静かに座って私を見つめる母が
涙の向こう側にぼんやり見えた
私が帰ろうとすると
何も分かるはずもない母が
私の手をぎゅっとつかんだ
そしてどこまでもどこまでも
私の後を付いてきた
私がホームから帰ってしまうと
私が出て行った重い扉の前に
母はぴったりとくっついて
ずっとその扉を見つめているんだと聞いた
それでも
母を老人ホームに入れたまま
私は帰る
母にとっては重い重い扉を
私はひょいと開けて
また今日も帰る
『満月の夜、母を施設に置いて』より
藤川幸之助 作詩
認知症の人は何も判らない?
出来事の全てが判断できるわけではないけれど、心の芯で分かっています。
言葉で表現するのは難しいですが、伝わる、と言ったほうが良いでしょうか。
この『扉』を読んで、全く同じ行動をする方をケアしたことがある。
その方も息子さんだった。
あるとき、息子さんがその姿に気づき、
それからは振り返り振り返り帰るようになった。
いつも、その方の頬に涙が伝わっていたのを私は知っている。
今日は、お世話になった医師に挨拶するために出かけた。
診断の方法、処方の気遣い、認知症の捉え方を患者の生活から看るなど、たくさん教えていただいた。
状態を報告する言い方一つで『BPSD』になってしまうと、今日も言ってくださった。
医師への報告は、患者(利用者)のQOLを維持するために行動を正確に伝えなければならない。
アパート経営をしてきた人が「様子を見に行きたい」というのは帰宅願望ではない。
それを、ただ「帰宅願望があります」といいがちなのだ。
利用者、家族への丁寧な説明、穏やかな物言い、最低限の薬処方にして「施設だから出来ることでしょ」とケアの力を信じてくださった。
「信頼してくださって安心ですよ」と家族に伝えられた。
「私にとって良い勉強をさせていただきました」
というと、
「ここのスタッフはセンスがいいからね」
と誉めてくださった。
認知小の母を老人ホームに入れた
認知症の老人たちの中で
静かに座って私を見つめる母が
涙の向こう側にぼんやり見えた
私が帰ろうとすると
何も分かるはずもない母が
私の手をぎゅっとつかんだ
そしてどこまでもどこまでも
私の後を付いてきた
私がホームから帰ってしまうと
私が出て行った重い扉の前に
母はぴったりとくっついて
ずっとその扉を見つめているんだと聞いた
それでも
母を老人ホームに入れたまま
私は帰る
母にとっては重い重い扉を
私はひょいと開けて
また今日も帰る
『満月の夜、母を施設に置いて』より
藤川幸之助 作詩
認知症の人は何も判らない?
出来事の全てが判断できるわけではないけれど、心の芯で分かっています。
言葉で表現するのは難しいですが、伝わる、と言ったほうが良いでしょうか。
この『扉』を読んで、全く同じ行動をする方をケアしたことがある。
その方も息子さんだった。
あるとき、息子さんがその姿に気づき、
それからは振り返り振り返り帰るようになった。
いつも、その方の頬に涙が伝わっていたのを私は知っている。
今日は、お世話になった医師に挨拶するために出かけた。
診断の方法、処方の気遣い、認知症の捉え方を患者の生活から看るなど、たくさん教えていただいた。
状態を報告する言い方一つで『BPSD』になってしまうと、今日も言ってくださった。
医師への報告は、患者(利用者)のQOLを維持するために行動を正確に伝えなければならない。
アパート経営をしてきた人が「様子を見に行きたい」というのは帰宅願望ではない。
それを、ただ「帰宅願望があります」といいがちなのだ。
利用者、家族への丁寧な説明、穏やかな物言い、最低限の薬処方にして「施設だから出来ることでしょ」とケアの力を信じてくださった。
「信頼してくださって安心ですよ」と家族に伝えられた。
「私にとって良い勉強をさせていただきました」
というと、
「ここのスタッフはセンスがいいからね」
と誉めてくださった。