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歌う介護士

看取りをしたご入居者から「あなたの声は癒される」と。お一人一人を思い浮かべながら、ずっと歌い続けています。

決めつけてはいけない

2008-08-07 00:30:37 | Weblog
入居者のことも、スタッフの能力や性格も、
つくづく舵取りしだいで、良くも悪くもなると学んでいる。

明日、というか、間もなく今日だが(笑い)、
テレビ取材がうちの施設に来るという。(私はいない、ザンネン!)
9月公開の映画「マルタの刺繍」という、80歳の高齢者が刺繍を刺すことで生きる意欲を取り戻すという内容らしい。

6月の末、本社の広報から、
「映画の上映の時に発表と作品展示がされるのですが、そちらで刺繍をなさる方はいないでしょうか?」と、話があった。
最初に聞かれたスタッフは、
「誰もいないわよ、刺繍なんかできる人。」と、断ったらしい。
「いや、そんなことないわ。少なくとも5人はいるわよ。
 材料は?無料なの?締め切り?近いのね。多少は手伝えるから頼んで。」
と、いって注文したのが私。
材料一式とどいたのが7月の末。

下絵をコピーして、その上から刺す。という手法をとったのが成功の元。
「そんなの刺繍じゃない!」
と、こだわったスタッフもいたが、彼女が関わった入居者は、結局できなかったようだ。

高齢になると、しっかりしている人のほうが自分のしたいことにこだわる。
提供されるアクテイビテイなど、「やりたくもない!」と言っている。
私がアクテイビテイ提供の対象とする人たちは認知症の人たちだ。
軽度~中度後期まで。
1人1人、認知症の種類も違うし能力にも差がある。
しかし、針を持つことは出来、刺すと危険と言う認識はある。
刺繍と認識できる人もあり、
ただ指示されたように縫う人もある。
中にはぐし縫いどころか、しつけ縫いより大きな針目もある。

懸命に作品作りに取り組む意欲は持っている。
最高、1時間半!集中してスタッフともども時間を忘れて刺していた日もあった。
「お昼ですよオ」
私が声をかけに行くと、針など持つことのないスタッフまで「エッ?」
慌てていた一こまもあった。
「いや~、あなたまで時間を忘れてやってるとはネエ!」(笑い)
このスタッフ、最初に「誰もできない」と断った本人である。

うちに取材が来るということは、刺繍などあまりする老人ホームがなかったのではないだろうか。
思いがけないことにうちの若い支配人、
「私もしょっちゅう来て応援してました!と言っちゃおうかな。」
なんてことを言う。
嘘を言っちゃダメよ!出来るなんて考えもしてなかったくせに!


本音を言うと、私さえココまで取り組めるとは思いもしてなかった。
最後は仕上げて提出してあげようと内心考えてました。
それを話したうちのスタッフ(こまめな人です)が、私に負担をかけないようにと入居者方の背中を押し続けていたらしい。

「センセ、寝かして。もうだめ。」
そういいながら娘さんの協力も得られて親子合作で作る人もある。
次に胆管が詰まると、対処法がないといわれているアルツハイマーの方である。

「開くにはどうするの?」と、開いて。
「これをたたむのは?」と限りなく繰り返す人も。
本人の針目を残して糸が抜けないように直すのは時間がかかったが出来上がりだ。


このメンバーたちは書道サークルにも参加している。
ラウンジで過ごす時間が増え、フロアが賑やかになった。

アクテイビテイ委員になり意欲的に動いてくれているスタッフができた。
うちの社長が言う「アクテイビテイとは、朝の挨拶だってそうなんだ。」
コミュニケーションと言うならば否定はしないが、私は、
生きがい作りのひとつであり、
精神的ケアにもなり、
予防・維持に役立つように内容を考えていかなければならないと思っている。


この人にはこれが出来るとか出来ないとか、
気分によっても変わるし、
出来る日もあれば、いろいろあってよいのじゃないだろうか。

スタッフも、個別対応があっている人と、個別しか出来ない人とでは違う。
なるべくなら、グループ対応できる能力を身に付けないといけない。
サービスを提供する方は、危険のリスクまで先読みできないといけないので
たかが遊び、趣味、と簡単に任せられないのだ。