私はリタイアしてもう10年以上過ぎる。
世の中デジタル、デジタルという割には、人間関係の難しさはあまり変わっていないようだ。
そりゃそうだ、人間の感情などスマホを振りかざしても分かるわけがない。
だから逆に「人間的魅力のある人間」が求められているのだろう。
今の私はそんな時代も過ぎて、いかに「枯れた人間」になるか考える日々であるが。
目から鼻に抜ける抜け目のなさが良いかというとそうでもない。
龍源寺元住職松原泰道師の経験がズシリと心に響く。
あれを見よ深山の桜咲にけり 真心尽くせ人知らずとも
この歌は松原泰道師が、大学を卒業し誰一人就職が決まらない5人の仲間と、野宿をしながら箱根の関所跡に旅した時に、歌碑にあった言葉だ。
「これからどんな苦境にあっても、自分たちは人を騙したり、苦しめたり、要領のいい生き方はやめよう。山の奥深くに咲いた桜のように、誰が見てくれようとくれなかろうと、ただただ真心を尽くしていこうじゃないか」と仲間と誓い合ったそうだ。
長い人生の長丁場の中で「いい格好」をしたところで必ずぼろが出る。
逆に「不器用」のままで「真心を尽くせば」必ず相手に伝わる。
それがおそらく「無の心」だと思う。
般若心経にある「色即是空」、「空即是色」ではなかろうか。
最近日曜日の夜に放映される「オールド・ルーキー」という番組を視ているが面白い。
主役の元サッカー選手が新しい職場で、不器用ながらも全力でぶつかる姿が共感を呼ぶのだろう。
主演綾野剛の飄々としたスタイルが好ましい。
不器用な生き方の見本だと思う。
わき役陣もそれなりに新鮮で嫌みがない。
テレビのドラマはほとんど見ないが、たまに見るのも良いのかもしれない。