「創発」とは、その性質が、それを作り出す素材の性質では説明できないものを創り出すことである。
金槌という道具は、素材からは出てこない性質である。
心は神経系という素材をいくら分析しても出てこない。
金槌も心も働かせることによって生み出される。
創発は、事象の前段階と後段階との間に、同一次元での単純な因果関係を見るのではなく、次元の変換という階層的な関係を見る。
例えば、言葉では、文字の階層では、か、ち、づ、な、はバラバラであるが、それより一つ階層が上である単語の階層では、「かなづち」(金槌)が一つの意味を持つ。
それぞれの文字では説明できない新しい意味を単語の階層では獲得する。これを「創発」とよぶ。
対談 心とことばの脳科学 (認知科学のフロンティア)から抜粋引用。