演劇人 RAKUYU

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南方熊楠Ⅲ

2016年04月14日 | 日記

熊楠24歳。
キューバへの植物採集を目的にフロリダ州ジャクソンビルで写真を撮る。
「日本の学者、口ばかり達者で足が動かぬを笑い、自ら突先して、隠花植物を探索することに御座候。顕微鏡2台、書籍若干、ピストル1挺、そのほか捕虫器械、も備えおり候。」
命を落とすことも覚悟した男の不敵な微笑みがのぞいているようにも見える。
『この世界を自分の目で確かめちゃる。」
強烈な気持ちが彼を突き動かしていた。それはゲスナーの理念を実践するものであった。
ミシシッピー州アナーバーの借家暮らしから1年9か月が過ぎていた。当時、アナーバーにいた頃、シカゴの弁護士ウイリアム・カルキンスとの文通で植物研究の助言をもらっていた。
「あそこには学者も知らない植物が多くある。」とフロリダ行を勧めてくれていた。ジャクソンビルに着いた熊楠は牛肉店の営業をしていた中国人の家に住み込む。日中はこの店の商売を手伝うかたわら、近郊で動植物の調査をし、夜は顕微鏡をのぞきながら標本整理に励んだ。店主は研究しやすい環境を提供してくれていた。
「小生の学事を妨げざらんため、毎夜不在となり、外泊し、暁に帰り来たる・・・」
こうした生活を送った後。キーウエストに1か月滞在し、新種のコケなどを採集したあと、キューバに渡った。そして、3か月間、精力的に植物を調査している。その後、フロリダに戻り、9月にはロンドンに渡った。