紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

思い出の一話~【アニメ版CLANNAD 18話「逆転の秘策」】

2011-08-08 16:21:31 | 思い出の一話

アニメやコミックの特定の一話を取り上げて、その一話について掘り下げるだけの
シンプルなコーナー「思い出の一話」です。

今回はアニメ版【CLANNAD】の第18話「逆転の秘策」を取り上げます。
この一話はアニメ版【CLANNAD】ではかなり重要な回となっており、
それを説明するのに、どうしても原作・CLANNADについて核心的なネタバレを
書かずにはいられないので、その点ご留意して読んでいただければと思います。


  はじめに~「アドベンチャーゲームをアニメ化するということ」

原作・CLANNADは、ビジュアルアーツ・key社からPCゲームとして発売されたテキストアドベンチャーゲームです。
主人公とヒロインの学生時代から、結婚して子どもができてからのストーリーをも描くため、
その内容からしばしば「CLANNADは人生」と、半ばネタ的に語られることもあります。

さて、前述の通り、原作・CLANNADはテキストアドベンチャーゲームであり、
テキストアドベンチャーといえば、ゲーム中の選択肢によってストーリーが分岐し、
複数ヒロインのいるゲームでは「○○ルート」と呼ばれる、該当ヒロインを主役にした
ストーリーが展開されます。
そして、分岐したルートはその後収束することはなく、分岐先のエンディングを迎えることになります。
ストーリー展開上、そのルートのヒロインと主人公が恋仲になることもあるでしょう。
プレイヤーはそのヒロインのルートを終えた後は、再度初めからストーリーをプレイし、
別のヒロインへのルート分岐を探ることになります。

このように、ゲームでは同じ物語を繰り返しプレイすることにより、一本のストーリーラインから
複数のラインが派生するような物語構成を体験することになります。

ところが、これがTVアニメになるとこのような構成を取ることは難しくなります。
プレイヤーが物語を動かすゲームとは違い、アニメは一方通行的に制作側が物語を提示するものです。
にもかかわらず、時間軸がころころ変わるルート分岐を表現するには視聴者の混乱をまねきかねません。

では、どうするか?
大体、以下のような方法を取ることになります。

 ① 一応、各ヒロインのストーリーへ分岐はするが、深入りせずに特定のエッセンスのみを抽出して
  そのヒロイン絡みの話を数話分放映し、次の話からは人間関係・時間軸を引き継いだまま
  別のヒロインの分岐へ入る。

 ② パラレルワールドと割り切り、各ヒロインのルートを完全再現する。そのヒロインの話が終了すると、
  人間関係や時間軸がリセットされ、何事もなかったように別のヒロインの話を展開する。

 ③ アニメで見せるヒロインを絞り、そのヒロインのルートのみを放映する。

アニメ版CLANNADは①の方法が取られています。
以上を前提に、まずはCLANNADのヒロインたちを紹介します。
本題はもうちっと後で。

一応、ヒロイン紹介の前に本作の主人公を紹介しておきます。


岡崎 朋也 (おかざき ともや)
高校三年生。中学の頃はバスケ部のエースで、スポーツ推薦によって高校に入学したが
二人暮らしの父親との喧嘩で肩を痛め、バスケを続けることができなくなってしまった。
以来、若干グレ気味で、学園内でも不良として通っている。


  【CLANNAD】のヒロインたち(※重度のネタバレあり!)

では、以下より各ヒロイン紹介です。


古河 渚 (ふるかわ なぎさ)
本作のメインヒロイン。
高校三年生。ただし、病弱のため出席日数が足りずに留年している。
演劇部に入ることが夢だが、すでに廃部となっていたため、自ら演劇部をつくる。
朋也は部活がやりたくてもできない渚に共感し、演劇部作りを手伝うことになる。


藤林 杏 (ふじばやし きょう)(画像・右) 藤林 椋 (ふじばやし りょう)(画像・左)
双子キャラ(杏が姉で椋が妹)
高校三年生。サバサバしている姉に対して、おっとりしている妹という典型的双子キャラ。
二人とも朋也に想いを寄せているが、杏は椋の恋心を尊重し、椋と朋也をくっつけようとしている。


伊吹 風子 (いぶき ふうこ)
Keyヒロイン名物の思念体キャラ。
本体は植物状態で眠りについているが、その想いが具現化して少女の姿となって出現している。
姉の結婚式を多くの人に祝ってもらうことが目的であり、朋也の協力もあって学園の生徒たちを
姉の結婚式に集めた。目的達成後、風子の存在は朋也も含めた人々の記憶から消え、
その姿も見えなくなった。


一ノ瀬 ことみ (いちのせ ことみ)
不思議系天才少女。高校三年生。
幼い頃、朋也と一緒に遊んだことがある。
両親を飛行機事故で亡くしており、それがトラウマとなっている。
物語中、飛行機事故のフラッシュバックにより引きこもりとなってしまうが、
朋也がことみとの思い出の庭を再生したことによって心を開き、外へ連れ出すことができた。


坂上 智代 (さかがみ ともよ)
勉強もスポーツも完璧にこなす超人キャラ。戦闘力も最強。
高校二年生で朋也たちの後輩だが、ある意味一番大人っぽい。
元・不良だが、ある目的のために朋也たちの高校に転校してきた。
生徒会長を目指しており、生徒会選挙活動の真っ最中。


  アニメ【CLANNAD】18話「逆転の秘策」徹底解説

では、ようやく本編解説に移ります。
この18話までに、すでに「風子ルート」と「ことみルート」が終了しています。

「風子ルート」では朋也たちは風子の願いを叶え、風子は朋也たちの記憶から消えました。
その後の「ことみルート」では引きこもりとなったことみの心を開かせ、
ことみと他のヒロインとの友情も深まりました。
両者とも恋愛がメインの話ではないため、主人公・朋也との恋愛には話が向かないように
うまく処理がされ、各ストーリーのオイシイところを余すところなく再現することに成功していました。

これで残りは「藤林姉妹ルート」と「智代ルート」、そしてメインヒロインである「渚ルート」を
消化しなければならないわけですが、この3ルートは既にやった2ルートとは違い、
朋也との恋愛要素がストーリー上、どうしても必要となります。
アニメ版CLANNADは、前述の通り、ルートを消化しても人間関係と時間軸を継続する方式を
とっているため、3ルートのヒロインとも朋也と恋愛させるわけにもいきませんし、
そもそも残り話数が絶対的に足りません。

以上のような状況を踏まえて、第18話の解説を行います。
この3ルートをどう消化するつもりなのか? 要注目です。




18話冒頭、坂上智代が朋也の家を訪れて朝ごはんを作ります。
前話で朋也は他校生徒とトラブルを起こした智代をかばっており、停学となっています。
なお、メインヒロインの渚は持ち前の病弱設定で、前話から高熱を出してダウンしています。

智代は自分をかばってくれた朋也に恩返しとして朝ごはんを作りに来るわけですが、
これは智代ルートのフラグが立ったか?



・・・と思いきや、並行して藤林姉妹とのフラグも立てる朋也。
椋を朋也とくっつけようとする杏の提案により、相性占いゲームをすることに。



占いゲームで椋との関係を選択する場面で、朋也が選択するのはー?
妹を応援しつつも、内心朋也が好きな杏も思わず息を飲む場面です。
メインヒロインの渚が不在のためか、いろんなフラグがポンポン立ちます。



挙句、ヒロインみんなで朋也に朝ごはんを作ってきて鉢合わせというハーレム展開に!
(※注:原作にはないエピソードです)



朋也、ギャルゲーの主人公っぷりを如何なく発揮します。
エピソード終わったはずのことみがいますが、メインはあくまでも藤林姉妹と智代の
フラグ対決のようなものです。



その場へ、これまたエピソードが終了してみんなの記憶から消えてるはずの風子が参上!



案の定、「あんた誰・・・」とのツッコミが。
風子は今までのkey作品でお約束であった「思念体のキャラが感動的に消えてゆくエピソード」の
セルフパロディ的なキャラであり、感動的に消えていったあともギャグパートで
ちょいちょい再登場してはやりたい放題やって帰って行くという異色の存在でした。
結局、このくだりは朋也が全員分(風子分含む)のごはんを平らげて終了という
ギャグパートでした。



ストーリー後半は智代のエピソードが進展します。
元・不良という過去が学園にひろまり、生徒会長選挙に支障が出てきた智代。
そこを、朋也が一計を案じてさまざまな運動部と智代を対決させ、その活躍によって
悪いウワサを払拭しようとします。



その効果は抜群で、見事智代の悪いイメージを払拭することができました!



智代は朋也に感謝し、自分が何故この高校の生徒会長を目指すかについて話します。
それは、智代の過去に関係した話でした。
この智代の身の上話は原作・智代ルートでもかなり重要なフラグです。
すわ、これは智代ルート突入か? と思いきや・・・?



このタイミングで、まさかのメインヒロイン・渚の体調不良からの復活→ストーリーへ復帰です。
智代、藤林姉妹ともに順調にフラグを重ねて行っているのに、ここでメインヒロインが復活・・・
ということは・・・。



やっぱり渚ルートなのかー!
不良主人公・朋也、完全にデレてます。



なんとなく察する他のヒロインたち。
ざわ・・・ざわ・・・



そんな中、智代の生徒会長選挙に向けたスポーツ対決のひとつ、テニス対決が行われます。
(※注:原作にはないエピソードです)



観戦中、とてもいい雰囲気のふたり。







やっぱり、なんとなく察するヒロインたち。
ざわ・・・ざわ・・・ざわ・・・



そんな中、事件が発生!
試合中、方向を失ったボールが渚の足に当たります。
さいわい、足の怪我は大したことがなかったようです。
誤ってボールを当ててしまった選手が渚に駆け寄ります。
「キミ、大丈夫!? 保健室に・・・」



手を差し伸べる選手を、思わず朋也が阻止!
朋也、自分でも少しびっくりしつつ、「俺が保健室へ連れて行きます」と
渚に肩を貸します・・・。



これは・・・決定的・・・



「まっ、わかってたけどね~・・・」
と、杏。



「お姉ちゃん・・・ごめんね・・・」
そして椋は、杏へ向き直って何故か謝ります。
その意味するところは、杏も朋也が好きなのをわかっていて、杏に朋也との仲を
協力してもらっていたことに対する謝罪でした。
杏は自分の気持ちを押し殺して椋に協力していたのですが、椋は杏の気持ちに気付いていたようです。
(姉妹のこの関係性は原作の杏・椋ルートでもかなり重要な部分です)



一瞬、「えっ…」となる杏。



「や、やだ・・・」

朋也と渚の間に入り込む余地がない事実の上に自分の気持ちを椋に知られていたという事実が重なり、
処理しきれなくなった杏の瞳が激しく泳ぎます。



途端、よくわからない感情が込み上げ、杏の瞳から涙があふれます。
この、椋の謝罪で杏が 驚く → 瞳が泳ぐ → 瞳から涙が込み上げてくる
という一連のシークエンスの細かい動きがさすが京都アニメーションとでもいうべきか、
この一瞬の動作にものすごい情報量が込められてるんですよね。



その後の椋の泣きっぷりも良いです。



結局、この一瞬だけでヒロイン三人分に対して朋也が立ててきたフラグがバッキバキに砕かれました。
朋也が渚に肩を貸して藤林姉妹の横を通り過ぎた瞬間、フラグが折れる音が幻聴で聴こえてくるほどの
ある意味爽快なフラグクラッシュぶりでした。



その後、次回予告で完全に渚ルート入りが確定。
もう、この回は本当に衝撃的でした。
いや、なんらかの形で渚ルートに行くことは当然の結果なんですが、そのルートへ入り方の
すさまじさが強烈なインパクトを遺しましたね。
この回の杏の見事なフラレっぷりから、杏ファンになった人も多いんじゃないかと思います。

そういえば、「逆転の秘策」というサブタイもなんか意味深です。
素直に取れば、元不良ということで評価が落ちた智代が逆転する秘策ということなんでしょうが、
病気でダウンしたメインヒロイン・渚が、朋也と他ヒロインとのフラグが順調に進む中、
一挙逆転して自分ルートへと話を持っていく秘策という意味にも取れたり取れなかったり。

ちなみに、アニメで描かれなかった藤林姉妹ルートと智代ルートは、後のDVD映像特典に
各一話分まるまる使って描かれます。杏よかったね~


以上でした。
ルート分岐する原作をアニメ化すると、こういうところをどう処理するかが
難しいところでしょうが、この【CLANNAD】は思い切ってフラグをまとめてブチ砕いたのが
よかったんじゃないかと思います。中途半端にやるよりかは。

現在放映中の【シュタインズ・ゲート】もルート分岐する原作を持つアニメですが、
これは原作からみてどうなんでしょう?
僕は原作未プレイでアニメだけ観てますが、ルート分岐うまく処理出来てるのかな?

拍手ボタン
記事が面白かったらポチっとよろしくです。


【関連記事】
◆思い出の一話~【地獄先生ぬ~べ~ 91話「反魂の術」】


【送料無料】CLANNAD 6 初回限定版

【送料無料】CLANNAD 6 初回限定版価格:7,182円(税込、送料別)



【PSP】CLANNAD(クラナド)

【PSP】CLANNAD(クラナド)価格:5,167円(税込、送料別)

コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 細かすぎて伝わらない名場面... | トップ | 【ダイの大冒険】「ドラクエ... »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2011-08-09 06:44:45
自分も観てた時杏の目が泳ぐシーンのクオリティは凄いと思った。
ただ…いくら影薄いからって椋の漢字間違えないであげて…
返信する
Unknown ()
2011-08-09 07:45:52
>椋の漢字

ぐあああ!
派手に間違えてました。諒って・・・。
全面的に直しました。
ごめんよ椋。勝平くんとお幸せに・・・。
返信する
圧巻 (智代派だけどね。)
2011-11-08 10:38:14
24分弱とういう時間内でここまで詰め込んで、入り組んで・・・
他のアニメだとどうしても強引にやっちゃうところを旨く立ちまわせましたよね。
自分もさっき18話を見て、この感動を分かち合いたいがためにここに辿り着きましたw
ナイス解説です。
返信する
今でも思い出せます (しげる)
2011-12-16 15:35:08
高雄さんがアイマス24話のコンテ演出をやってたので思い出しました。このコンテを切った高雄さんと見事に表現した京アニ制作班は素晴らしい仕事をしたと思います。
返信する
Unknown ()
2011-12-19 00:26:53
>詰め込んで入り組んで

登場キャラ数も多いですし、フラグ制御が見事な回でした。
間違いなく思い出の一話。

>アイマス24話

かなり良かったですね、アイマス24話…。
そうか、clannadのこの回の人がコンテ切ってたんですね。
返信する
Unknown (くろすけ)
2014-11-29 00:25:28
CLANNADは親父との和解で終わるべきといわれる理由を教えてください
返信する

コメントを投稿

思い出の一話」カテゴリの最新記事