紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【師匠キャラの言葉】~アバン先生編

2010-08-28 22:51:47 | 師匠キャラの言葉
最近、「超訳 ニーチェの言葉」という本がベストセラーとなりました。
19世紀ドイツの哲学者・ニーチェの残した言葉をまとめたこの本は、
私たち現代人が生活にふと疲れたり行き詰ったりしたときに、
その言葉のひとつひとつに励まされたり、力付けられたりしてください、
というコンセプトの本なんだと思います。

とは言え、偉い哲学者といえども、ニーチェのことなんてよく知りません。
よく知らない人の言葉をつらつら並べられても、ちょっと感情移入しにくいですね。

そこで、今回は漫画などのいわゆる「師匠キャラ」の発言をひとつひとつ拾い、
「ニーチェの言葉」ならぬ、「師匠キャラの言葉」と称して紹介したいと思います。
ニーチェよりも、よく知ってる師匠キャラの言葉なら感情移入して聞けますしね。

良い師匠キャラはたくさんいるので、この記事はシリーズ化したいところです。
記念すべき一回目の師匠キャラは、僕の大好きな【ダイの大冒険】から
「アバン先生」を選びたいと思います。

アバン先生のことをよく知らない人は、以下の記事にくわしく書きましたのでよければどうぞ。
◆【ダイの大冒険】アバンの物語を追う

では、アバン先生の言葉をいくつか紹介していきます↓



人間ムチャクチャ疲れると一番楽な動作をしようとするもんなんです。つまり一番自然な動きですね
君の剣にはムダな動きが多かった。元々君にはこのぐらいの岩を割る力があったんです。


デルムリン島で初めてダイに剣を教えた時のアバン先生の言葉です。
一聴すると、「ホントかよ!?」と突っ込んでしまいそうですが、
まぁ、言葉の真偽はさておき、ここではアバン先生の姿勢に注目した方がよさそうです。
「自然な動きをしなさい」とか「ムダな動きをなくしなさい」とかのアドバイスを言葉で
言われても、教えられている方としてはイマイチピンと来ないものです。
それどころか、その言葉にとらわれて混乱してしまい、ますますムダな動作が増えかねません。
アバン先生は、最初から理屈を言葉で教えず、ダイにくたくたになるほど剣を振らせた。
そして、一番良い動きが出来たところで理屈を教えて、その動作が最善だと教え込ませたのです。
アバン先生の教育方針が垣間見える言葉ですね。



最近ではよっぽどダイ君が気になると見えてか、朝夕の猛特訓をかくれて見に来てるんです。
いい傾向ですよ。


いままで本腰を入れて修行せず、ちょっと難しい課題を与えるとすぐにあきらめてしまっていた
ポップに対してのアバン先生の感想です。
ダイの修行をポップの目の前で見せ、ダイの成長がポップを刺激して、修行に対してやる気を出してくれる
ことを期待しています。
複数の弟子を教える身としては、一人の弟子に付きっきりで指導するわけにはいきません。
ただ、この場合あえてダイの修行を集中的に行うことによって、ポップのライバル心を刺激するようにしています。
結果、いままで修行に積極的でなかったポップのやる気を向上させることになりました。
アバン先生の教育者としての技術なんでしょうねぇ。



勝てない相手だからこそ命をかける必要があるのです。
それにね、ポップ…。やはり修行で得た力というのは他人のために使うものだと私は思います。


魔王ハドラーの襲撃からダイとポップを守るアバン。
勝てない相手とどうして戦うんですか、と叫ぶポップに対しての言葉です。
これは、たとえ勝てない相手でも玉砕しろという趣旨の言葉ではありません。
このとき、アバンは退却しようと思えば出来たかもしれません。
しかし、その場にいたダイとポップを守るために命をかけてハドラーに挑んだのです。
「大切なものを守るためには、勝てない相手にも命をかけて立ち向かう必要がある」
そういう言葉なんだと思います。
ただ、アバンはこの言葉をポップに押しつけることはしません。
「修行で得た力というのは他人のために使うものだと私は思います」
というように、「私は思います」という表現をしています。


この言葉はポップに多大な影響を与え、のちのクロコダイン戦でポップは仲間のために命をかけました。



愛や優しさだけでは必ずしも他人を守れない時もあるのです。
正義なき力が無力であるのと同時に力なき正義もまた無力なのですよ。


卒業の証に魔弾銃を与えるも、こんな恐ろしいものはいらないというマァムに対しての言葉。
決して理想主義者ではないアバン先生らしい言葉です。
アバン先生だって、愛や優しさだけで正義を貫けるならそうしたいでしょう。
でも、現実はそうではない。大切なものを傷つけようとする者たちはいつの世にも出現します。
そんな現実に対しての対抗手段としての力は持たないと、自分の正義を貫いたり
大切なものを守ることはできない。
この言葉は、たびたび敵に情けをかけようとするマァムを叱咤する重要な言葉となりました。



傷つき迷える者たちへ
敗北とは傷つき倒れることではありません
そうした時に自分を見失った時のことを言うのです
強く心を持ちなさい
あせらずにもう一度じっくりと自分の使命と力量を考えなおしてみなさい
自分にできることはいくつもない
一人一人がもてる最善の力を尽くす時 たとえ状況が絶望の淵でも
必ずや勝利への光明が見えるでしょう


「アバンの書」空の章192ページより。
これはもう解説するだけ無粋でしょう。名文です、噛みしめましょう。



何もしなければまさに何もはじまらないでしょう?
ジタバタしかできないなら方法はひとつ!
みなさん! ジタバタしましょう!!


魔王軍に戦いを挑むカール王国にて、魔王に勝つ手だてがみつからずおろおろする者たち。
「いまさらジタバタしたところで何もはじまらないのでは・・・?」
と絶望する皆に向かって、アバンがユーモアたっぷりに放った言葉です。
「やらなきゃ始まらないんだからやるしかないっしょ?」ってことなんですが、
アバン先生なりのユーモアの効いた言い回しがポイントでしょうね。
この一言で城のみんなは笑い、絶望的な雰囲気が一転、城は明るい空気につつまれます。
フローラ姫はこの時に、アバンはみんなに希望を与える生まれついての勇者なのだと悟ることになります。
余談ですが、のちにノヴァもダイに対して似たような感想を抱いてます。
この漫画における、勇者の定義は「みんなに希望を与えられる人」のようですね。



力がないのも困りものですが、力だけが全てではない
知恵や心も強さの一つなのですから


バーンパレスの頑丈な門を破壊するのではなく、技術を使って開けたアバン。
ずっと門をどう破壊しようかと考えていたダイはそれを見て、力だけが全てではないと悟る。
そんなダイに対してのアバン先生の一言です。
これは当時漫画を読んでた僕も思わず、「なるほどなー」と思いました。
バーンパレスに乗り込んだダイたちは相当強くなっており、いまさらアバン先生が仲間に
駆けつけたとしても、レベル不足で役立たずなんじゃない? と思っていた時期が僕にもありました。
でも、そうじゃなかったんです。力だけがすべてじゃないんです。
アバン先生には「知恵」と「心」がありました。
実際、バーンパレスの門を破壊するのに余計な力を使うこともありませんでしたし、
何よりアバンの使途たちの「心の支え」となったのはすごく重要なことだと思います。



回復して万全の態勢を整える事だって重要な使命のひとつ
少々心や体が痛んでもやっておかなければ
それこそ、今身体をはっている人に申し訳ないのでは?


バーンパレスの外で身体を張って追撃を防いでいるヒュンケルのことを思い、
休憩を拒んで先に進もうとするポップに対しての一言です。
「がんばってる人に申し訳なく思って、休憩せずに無理して失敗したら
それこそがんばってる人に申し訳ないんじゃない?」
ってことですね。よくわかります。
アバン先生は「大魔王」を倒すという大項目の使命のなかに、
「休憩」「回復」も小項目の使命としてとらえてるわけですね。
このあたりの感覚は、社会人になって仕事するようになると身に染みて実感します。



私の弟子たちはみんな心優しい
それは素晴らしい事ですが、戦いというのは非情なもの
時としては、涙をはらって勝利のために邁進しなければならない事があるのも事実です


勇者ダイをできるだけ無傷で大魔王のもとに向かわせるために、仲間は自分の身体を盾にしないといけない。
勇者はそれを振りかえらずに、魔王のもとに前進しなければならないと指導するアバン先生。
最終目的のためには時に非情な決断も必要ということですね。
なんだか政治家の言葉みたいです。



決まってるでしょう
誇りです・・・!


闇の師・ミストと、光の師・アバンに育てられたヒュンケル。
ミストは最終的にヒュンケルを自分の身体にするためにヒュンケルを育てていたが、アバンは?
「あなたにとって、オレはなんですか?」
と質問したヒュンケルへのアバン先生の一言。

言っってみてぇーーーーーーー!!
まぁ、俺には自分の弟子と言えるようなひとはいませんけどねぇー。

それにしても、アバン先生は本当に短い言葉で相手の気持ちに大きく響くことを伝えます。
師匠キャラの鑑のような人だと思います。

さて、いろいろとアバン先生の言葉を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
正直、この他にも紹介したい言葉はいくつかありましたが、
長くなりすぎてしまうので、このあたりで終わっときます。
複雑に入り組んだ現代社会にも、アバン先生のシンプルでまっすぐな言葉は
きっと届くと思います。

ありがとう、アバン先生!!


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