Kamu Number Theoryと相似象

英文サイト. Kamu Number Theory では言及しない相似象のことなどはこちらで。

(その3) - 8 準直感と準粒子型量子コンピューター

2020-07-02 11:14:04 | Post:投稿闌
量子コンピューターという思想(その3)

万物は回転する─ペンローズの宇宙大航海時代の羅針盤─

(その3)- 8 準直感と準粒子型量子コンピューター

計算可能な世界と非計算的な世界とを繋ぎ止めているものが「直感」であることが見えてきた。更に計算不可能と思われる世界ですら計算可能世界と全く別世界というわけでもないことも見えてきた。アインシュタインは直観こそ真に価値があると言ってます。

そこで非計算的世界と計算的世界との境界領域を設定してみようと考えるに至った。それが「準直感」という領域であるとするのだ。

直感と言う言葉は日常世界で誰でも体験するもの、一方で神秘的なイメージが感じられる。直感という概念は様々な手垢のような既成概念を連れてくるものです。

第六感、天啓あるいは悟り、インスピレーション、仏教用語の般若・プラジュニャーなど、また無意識と結びつけたり実に多くのイメージがつきまとう。


◇準直感

この、世間のイメージにまみれた直観に「準」と付けたのは、問題が明確になったときには準直感は限りなく論理的な姿の直感に近づく事が出来るであろうという仮説を含んでいると考えて欲しい。

準粒子と言う言葉があり、準結晶もあります、ならば準直感があってもいいのではと思いついたのです。そして、準直感はホワイトヘッドの閃光 flashbulb であったり、超記憶 super-memory 或いは直観像 eidetic imagery、ひらめき Epiphanyなどの形容が受け入れられるものなのです。

すでに、ポアンカレやブラウワーの直観主義もある、しかし本論ではパースのアブダクションに結びついた論理的構成を持ったものとして直観・直感を理解しています。

なお、「アブダクション → 論理的直観」・「アフォーダンス → 感受性直感」という定義上の違いは準粒子にあっては無視します。これは、脳を備えた脊椎動物のレベルでは直観と直感は別物と考えなければならなくなります。しかし、準粒子にあってはその違いは無いものと考えられるからなのです。このことは(その5)で改めて詳しく見たいと思います。

準粒子については(その1)- 5 正反共役関係にある2つのタイプのチューリングマシン
        (その1)- 6 準粒子の知性
        (その1)- 7 潜象・虚数・エレクトロンホール
に記しました。ここでは詳しいことは省いて、このまま準直観について入ってみたいと思います。
        
まず、準直感の幾分ファジーな定義を示そう。
(3-7、ペンローズの非計算物理とKamu Number Theory、で記した様に、準粒子の立場から直観と直感は恣意的に使い分けます、従って直観と記しても直感と記す場合も同じ内容とお考えください、この恣意性は人間レベルでは通用しませんが)

第1に、「準直観・準直感」は知能の一部、若しくは知的な判断性能と同じアブダクションの論理的な概念。
第2に、「準直観・準直感」はその個体の生存存続に関与する情報を集める能力であるアフォーダンス感受性を含む。
第3に、「準直観・準直感」は「準粒子」の内部にだけ存在する。(楢崎の條件)
第4に、「準直観・準直感」は量子論理、量子演算・量子計算と強い結びつきを持つ。

細かい部分は今後の進行に従って柔軟に対処することにし、準粒子と共じく曖昧な定義にとどめてあります。

以上は現在の時点でのバージョンと考えてください。ファジーな定義なので、今後改定をしてゆかなければならないことも出てくることでしょう。


◇楢崎・ペンローズの條件

この定義のなかで、第三の條件はKamu Number Theoryでは「楢崎の條件」と呼んでいる重要なものです。

楢崎の條件は、独創的な楢崎皐月の発想から出たものです。この條件は今後、量子コンピューターにとって、そして生命現象のロバストネスにとっても決定的に重要になってくるものです。

第3の、楢崎の條件はペンローズの着想である細胞内コンピューターと深い関係にあります。準粒子コンピューターはその拡張版になります。このように、ペンローズは未来の

量子コンピューターの姿を示すことになるこの条件を具体的に提起したのです。従って「楢崎・ペンローズの條件」と呼んでもいいほどなのです。

この楢崎の條件は、これまでの脳を中心とした考え方、おなじことですが人間中心に考えてきた意識、知能、判断、理性という概念を180度変更する物理学の「脱皮条件」なのです。

また、この「楢崎の條件」はかなり強い要請であると共に、直感という日常的な知見を今後は物理的に特徴付けて行く指針となるものなのです。

第4の條件は、” 3-7、ペンローズの非計算物理 ” で示したパースの連続原理を前提にして理解されるものです。従って、量子計算を直観とのつながり、つまりロバストネスで理解されるものです。

ペンローズは安易で楽天的な人工知能支持者を批判して、〈知能の不完全性=思考の危険性 → 人工知能=計算可能性=チューリングマシン〉という関係に注目しています。ペンローズはこの図式からは意識を除外する必要性も示しています。「意識と知能を混同してはいけない」、それは「意識の問題は生物的構造においてのみ見出される」というのがペンローズの立場です。

ペンローズは「計算可能性の限界という視点からすると、量子コンピューターをもってしても、人間の意識的理解に必要とされる演算を遂行することは出来ない」と述べています。しかし、これはペンローズが直観という領域を意識や心で捉えているために生まれた誤解なのです。


◇再帰関数と逆演繹法 → 一次アブダクション

そこで注目しておきたいことは、第1と第4の2つの條件は量子コンピューターと深い関わりがあります、それはロバストネスの構造は再帰関数を内包しているからです。コンピューターの動作は再帰的です、そして《逆演繹法=一次アブダクション → 再帰関数 》の動作がコンピューター上で可能となり、ここに量子演算・量子計算が乗せられることになります。

準直感を考える立場で見ると、この一連の関係図式を導いたペンローズの批判には何かが、つまり「直観」と「進化」が不足しているわけです。ペンローズの迷いかも知れません、迷いは意識を除外したことに現れています。前回で触れたように意識はアブダクションに組み込むことは出来ません。このことをペンローズも直感的に感じたからかもしれません。

実際、数学的帰納法ですら直感を前提としています、更に公理系を組み立てるときも直感を除外できるはずがありません。ゾウリムシや粘菌が生存と存続に必要な危険を回避したり、餌の探索に必要となる「直観的理解」を考えてみたいのです。


◇ペンローズの生命物性物理学と準完全性

ペンローズは意識の物理生理次元の解明には次のようなものが必要ではないかと提案している。
 1,微小な脳の生理学の細部 → ナノレベルの微小管と脳細胞
 2,意識が生成し消滅する状況 → デコヒーレンス収縮として解釈
 3,意識が生成し消滅するタイミングを巡る奇妙な事実
 4,意識というものの目的 → 生存のための自己防衛
 5,意識を持つことの具体的利点 → 生命のロバストネス

ペンローズの素晴らしさがここには表れています、直観の物理学を組み立てようという意欲すら感じさせる内容であり、更に未来の量子コンピューターの姿を示唆していると感じます。

さて、これを準粒子ゾウリムシや準粒子粘菌、更に準粒子ウイルスに当てはめてみましょう。

 1,準粒子(ペンローズの場合はコンピューター)は心を持ちうるか?
 2,準粒子は微小管を持ちうるか? → 微小管や脳細胞が絶対必要なものなのか?
 3,準粒子はどのようにして意識を現実に喚起(生成し消滅)するのであろうか?
 4,意識はその意志の作用によって準粒子の運動(タイミング)に影響を及ぼすのか?
 5,意識は準粒子に、どのような淘汰上の利点(目的)をもたらすのか?

この5項目の疑問を提起したのもペンローズだ。ただし、ペンローズは準粒子ではなくコンピューターに対して問いかけたのだが。

課題は「知能 → 不完全性」と「準直感 → 準完全性 → ヒューリスティック」を、生命という立場から精細に調べることである。それには、ペンローズが行ったような、意識とか心と言う概念を物理学として提起する必要があるでしょう。「意識は、必ず物質的な基礎を持たなければならない」とペンローズは言う。ここでは紹介する事は出来ないが、Kamu Number Theoryでは心の物理学を相似象によって体系的に示している。

◇ヒューリスティックとアルゴリズム

ヒューリスティックはこれも曖昧な概念だが、ここでは簡単にヒューリスティックの対義語はアルゴリズムであると同時に、《〈準直感+アルゴリズム〉 → ヒューリスティック》と言うくらいに、理解しておいてください。詳しいことは次の機会にいたします。

ペンローズが提起した5つの條件はいずれも細胞内コンピューターという具象をもって量子コンピューターの未来を描いているものなのです。それを、私は準粒子型量子コンピューターと呼びたいのです。

生命のロバストネスとも関係するが、これら 1. から 5. の先に「生命体が持つ遺伝的進化的手法」が意識にどのように関わってくるか、を考えなければ片手落ちというものだろうと思う。遺伝的進化的な手段は生命の大事な特徴として落とすわけには行かない。D ドイチはこの 第6 の問題に正面から向き合う。

細胞内超越的コンピューターというペンローズの発想は、次第に微小管型超越的コンピューターとして具体化され、ゾウリムシに備わっている意識系にはこの準粒子型コンピューターが行動判断を演算処理し、そこに生存のための自己防衛能力が見出される、という流れがはっきりしてきたようだ。

この決着は、次回の(その4)─万物は情報である─D ドイチ、に移って考えたいと思います。


         †

今回で ”量子コンピューターという思想(その3)万物は回転する・ペンローズの宇宙大航海時代の羅針盤”の連載は完結しました
次回は(その4)万物は情報である─ドイチの万物の量子コンピューター ─ 量子コンピューターを理論的に発見したD ドイチがKamu Number Theoryの核心に迫ります (その4)- 1 チューリングマシンと数学モデル を予定しています。

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(その3)万物は回転する─ ペンローズの宇宙大航海時代の羅針盤 ─
3-1、万物は回転する・互換重合時空ツイスター
3-2、万物のエントロピー、故に始元が存在する
3-3、ペンローズの迷いとマイナスエントロピー
3-4、生命のロバストネスと情報熱力学
3-5、宇宙羅針盤・テータ関数・共形幾何・保型形式
3-6、ペンローズの微小管非チューリングマシン
3-7、ペンローズの非計算物理とKamu Number Theory
3-8、準直感と準粒子型量子コンピューター

Kamu Number Theory
https://kamu-number.com/

copyrght © 2020 masaki yoshino


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