Kamu Number Theoryと相似象

英文サイト. Kamu Number Theory では言及しない相似象のことなどはこちらで。

4-2-3.(後編)ボルンマシンと生命の虚数コンピューター

2021-03-06 11:20:23 | Post:投稿闌
量子コンピューターという思想(その4)
万物は情報である─ドイチの万物の量子コンピューター</spa
<span style="font-size:16px;">4-2, 虚数コンピューターとモンスタームーンシャイン

4-2-3・虚数コンピューターとモンスタームーンシャイン
 (後編)ボルンマシンと生命の虚数コンピューター


◇生命のコンピューター

生命を維持してゆくために ” 計算 ” はどうしても避けられない作業です。このことは ”(その1)3,量子コンピューターの発見 ” の中で「単細胞の粘菌」が驚くべき高度な計算を行って生存を図っていることが発見されたことを記しました。

それは、スーパーコンピューターをもってしてもモンスター最適解を解くことは困難なものであるはずなのだが、原始生命体である粘菌が極めて効率的にモンスター最適解を導き出す、というものだった。私はこれを ” 粘菌シュミレーター ” とファインマン流に名付けました。

この流れはペンローズでは ” ゾウリムシ コンピューター ” へと展開されることになりました。 ペンローズの想像力は微小管のナノサイズ世界へとズームされました。これはウイルスの世界と同じサイズと思えばイメージが浮かんでくる世界です、1ナノは10億分の1メーターという極微のミクロ世界。

さらに、微小管を通してペンローズはゾウリムシ、アメーバ、青粘菌、アリ、樹木、カエル、キンポウゲ、さらに自分自身の世界に目を向ける。そして、ペンローズの独壇場はここからだ!「微小管からビッグバン やビッグクランチまで」へと、宇宙規模に微小管の先端は限りなく伸びながら広がってゆく。

実は、この微小管から宇宙へというペンローズの発想はKamu Number Theoryの展開と全く同じものとなっている。微小管のトポロジー幾何学は宇宙規模であり同時にウイルスサイズでもある。生命と情報、そして計算をつなげてゆくとごく自明なこととして浮かび上がってくるのが宇宙微小管トポロジーの世界であり微小管量子コンピューターというイメージだ。


◇虚数コンピューターとKamu量子コンピューター

虚数については、すでにKamu Number Theoryが明らかにしたことの中で見れば、微小管を生み出すまでには始元量から始まる遷移の8過程〈Yata〉が埋宮のように隠されていた、それが虚数の潜象としての姿だった。

虚数√-1の物性は〈sHi〉でありミクロモンスターを形成するものだった。その数学的モデルとしてリー群 E8 のペアーがKamu潜在的保形形式から相似象として導かれた。
(この8過程の〈Yata〉はKamu公理系〈公理-K-8〉
図版、K-1〜K-7: https://kamu-number.com/pdf/axio/111axiomk.pdf

虚数にはこうした生成過程から明らかなようにモンスター級の情報が備わっていると見ることが出来る。しかし、ここから現象としての微小管という計算マシーンが生まれるまでには更に数兆回の重合を4回に渡って繰り返し行う ” 重合遷移=〈Yata〉 ” が必要なのだ。
(この4過程の〈Yata〉はAma公理系の〈公理 A-1)
図版:https://kamu-number.com/pdf/axio/131axiom.a.pdf

このことは、微小管には〈 虚数 sHi 〉の持つ膨大な情報を利用する合理的なメカニズムが備わっているということを示唆するものなのだ。前駆光子である潜象物性の〈 虚数 sHi 〉から現象物性として観測可能な 〈 ユニタリー数 1 | Hi 〉が生成される過程で量子物性が形成される。

大事なのは、波動関数と物性量子の対生成(波動と粒子の2重性)という複素世界の出現だろう。もともとKamu潜象は潜象波動関数(虚数世界だけの波動関数)としてしか捉えることができないものだった。それが観測可能な物性量子 〈 1 | Hi 〉の出現に拠ってユニタリー構造複素波動関数としての姿を現したと見ているのだ。数「1」の誕生は量子論的な確率波の正規化=道具化の姿とも言える。

ユニタリー構造複素波動関数は光子の数学的モデルとして捉えることができた、しかしこれを直ちにシュレディンガー波動方程式とみなすことが出来るのであろうか?つまり、光子の量子的な振る舞い、量子化出来る波動関数として見ることが出来るのだろうか。

量子重力理論の成功は確実に進行しているようだ。いずれ量子化を担うプランク定数の内部構造が明らかにされるかも知れない。暫定的にシュレディンガー波動方程式とユニタリー量子構造複素波動関数とは相似したものと、いまはみなしておきたいと思う。

量子の持つ情報をエンタングルメントエントロピーとして捉える方法は量子の持つ無尽蔵とも言える情報の一部を引き出す技術を支えるものだ。しかし〈正規化=1〉される前の状態である虚数〈sHi〉の持つ情報はそれと同等と考えなければならない。

ここで登場した「虚数コンピューター」は、潜象量子系が抱える無尽蔵に存在する宝にアクセスすることの出来るすべてのコンピューターのことを指して呼んでいる。当然粘菌コンピューター、ゾウリムシコンピューターも含まれることになり、いま量子コンピューターがその中で最初に口火を切って現れた計算機なのだ。

虚数コンピューターは単なる量子コンピューターではない、虚数の広大な領域を包含した生存に必要なコンピューターなのだから ” Kamu潜象量子コンピューター ” と呼ぶのが最もふさわしい、しかしこれでは馴染みがなさすぎる。

このような視点で見ると、ファインマンとペンローズの二人は最初から虚数コンピューターに目を向けていたことがハッキリしてきた。

だからこそ、最初彼らは量子コンピューターとは言わず、量子シュミレーターと呼び、微小管コンピューターなどと呼んでいたということが理解できることになる。やはりというか、このお二人は直観力のスゴイ科学者なんだ!


◇ボルンマシンとディープラーニング

さて、虚数コンピューターが量子系(波動関数)の中に無尽蔵に存在している宝へアクセスできたとしても、この情報を使えなくてはなんにもならない。このような疑問に答えるかのように中国の科学者から一つの提案が出された。2017年のことだからまだまだホットな話題ではある。

ディープラーニングの世界では確率波ボルツマンマシンがすでに活躍している。その成功は衝撃的なもので多くの人々を驚かせたことも最近の話題だった。ボルツマンマシンは特に画像分野では優秀な成績を見せている。

さて、中国科学院大学物理部のLei Wang (王磊)は2017年に ” ボルツマンマシンとボルンマシン ” という論文を発表し、引き続いて2018年には ” ボルツマンマシンからボルンマシンへ ”という講演をロサンゼルスで行った。

続いて、Lei Wangとそのグループは2020年に” 量子回路ボルンマシンの微分可能機械学習 ” と矢継ぎ早に論文を発表した。これは中国からの発信という理由も含めて、ディープラーニングの世界で驚くべき発表と受け止められたようだ。

これら一連の論文でボルンマシンがボルツマンマシンを凌駕するディープラーニング性能を発揮できることをLei Wangは理論的に示した。

論文の中の要約によると、次の4項目になるという。
『①古典的なデータセットの確率分布を”量子純粋状態”として表す生成モデル。
②量子サンプリング問題の計算の複雑さを考慮するとき、量子回路が古典的なニューラルネットワークと比較してより単純で強い表現力を持つ。
③量子ビットの射影測定を介して、量子回路から ”サンプルを直接に効率的に” 引き出す。
④ これは”教師なし” 生成モデリング、従ってディープラーニング研究の最前線のものである』
とLei Wangは説明しています。

ボルンマシンが何故次世代のもとして注目されるか、それは波動関数に直接アクセスする点なのだ。
”①量子純粋状態=波動関数&③量子回路からサンプルを直接に効率的に引き出す”というのがそれなのだ。このことは無尽蔵に存在している量子情報へ直接アクセスすることの出来る、最初の ” 教師なし生成モデリング深層学習マシンがボルンマシン ” だという。


ここの利点をボルツマンマシンと比較すると、確率を探し出しすための余分なハミルトニアンの関数計算を省略出来る、という点でプロセス全体が単純化されるのだという。

つまり、虚数コンピューターにとっては待ちに待ったものと言っていい。しかしだ、粘菌の立場から見れば、”教師なしで波動関数に直接アクセスするなんて、それはいつも使っているものだよー” と言うかも知れないのだが。


さて、ディープニューラルネットワークでは数十億のパラメーターに到達する可能性がありますが、これでもまだモンスターとは言えないのです。虚数の〈√-1 , sHi〉では 〈E8✕E8〉 というモンスターでした。 〈E8✕E8〉は 〈 8×10^53 ✕ 8×10^53 〉という驚くべきデーター量のモンスター振りです。「 一兆=10^8 」 から想像してみれば無尽蔵という実感が湧いてきます。

ここまで稠密であれば、パラメーター多様体、あるいはデータ多様体というイメージがぴったりきます。Lei Wangが微分可能機械学習という概念に自然と導かれたわけです。さてここからです、微分可能プログラミング言語の問題に進むこととなります。



◇多様体仮説とクリストファー オラー

オラーが登場するのは、「2018年に"微分可能プログラミング"の提唱者としてChristopher Olah、 David Dalrymple,そして Yann LeCun の3人をBaydinは挙げています」という記事を私が見てからなのです。

この三人の中で ”オラー・Christopher Olah” の登場はどこかミランダ・チェンと共通した背景が感じられるのです。ディープラーニングの専門家としてのオラーの姿の中に数学者としての特質が私には感じられるからです。更に専門性の高い概念を豊かな美しい具象イメージにして言葉にする能力を持っている、というところもミランダ・チェンと共通しています。

” 私は、伝統的な学術論文以外のメディアに書くことで、この分野により良いサービスを提供できることが多いと思います。私は主にオンラインエッセイを書きます。これらのいくつかは、この分野の重要なアイデアに関するチュートリアルです ” とオラーは述べています。

オラーは2015年に「30年後のディープラーニング」というエッセイを書きました。「現在、ディープラーニングを理解する方法として3つのストーリーが競い合っています。①,生物学へのアナロジーを描く神経科学のストーリー。②,データの変換と多様体仮説を中心とした表現のストーリー。最後に、③潜在変数を見つけるものとしてニューラルネットワークを解釈する確率論的ストーリーがあります。これらの物語は相互に排他的ではありませんが、ディープラーニングについての非常に異なる考え方を示しています」

要約すると
①は神経細胞シュミレーターから始まってペンローズの微小管シュミレーターなどの ” 生物学習計算モデルストーリー ”
②多様体仮説、モンスターデータを幾何学的に取り扱える次元へ圧縮して表現できる可能性を保証する仮説による ” 微分可能多様体学習ストーリー ”
③ボルツマンマシン、ボルンマシンなどの確率生成モデルによる ” 量子統計予知ストーリー ”
の3通の方向になります、オラーは実に見事な要約を見せていると思います。いずれも生命のコンピューター、つまり虚数コンピューターにとってなくてはならないものであることはハッキリしています。そして、ボルンマシンの位置づけが ”量子統計予知ストーリー” と明確なイメージを私達に届けてくれました、ありがたいことです。



◇微分とトポロジーとオラー

数学者オラーが現れるのはディープラーニングの難問を前にして、それをトポロジー幾何学を使って視覚化しようと企てるところから始まります。それは ” ニューラルネットワーク、多様体、およびトポロジー ” と題された2014年のエッセイに表明している事柄です。

「視覚化により、ニューラルネットワークの動作についてより深い『直感』を得ることができる」とオラーは述べています。 ” 量子から得られる巨大な情報が織りなす多様体とそこから伸びるエンタングルメントエントロピーが繰り出すファイバーバンドルトポロジーを教師なしで解読する量子回路ボルンマシン ” のイメージがここから得られるのです。

このイメージは 高柳 匡 によるエンタングルメントエントロピーの面積法則からも裏付けられると思う。つまり、1プランク面積あたり1量子ビットのエンタングルメントの存在が導かれた。ということは、1プランク面積の領域から1本の微小管がファイバーバンドルとして放出されていると考えられるのだが、これはKamu数論の考え方と相似なのである。
参照:https://www.nishina-mf.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/02/2019NKKslide.pdf

オラーの文章にはこのようなイメージを生み出すパワーが備わっています。公開されて間のないボルンマシンの詳細を素人の私が紹介出来るものではありませんが、こうしてオラーの力を借りれば、なんとかボルンマシンの姿がボンヤリとですが感じることができたのです。

オラーは ” 風変わりで、意欲的で、直感的な、トポロジー数学の紹介 ” という不思議な教科書を書きました。このブログ ” (その4) - 5、万物の理論とバベルの塔(専門家と素人) ” でこれを紹介することにしています。そこには現代科学の宿命的な ” 専門家と素人 ” の問題を彼らしい方法論で浮き彫りにしてくれます。

情報幾何学を提案し推進している甘利俊一の言葉 ─ ” 情報要素の一つ一つを分離して考えるのではなく,つながった全体つまり『多様体』として考えてそこに豊かな構造を導入すれば,情報の分野に新しい方法論を提供できるに違いない.これが情報幾何学の目指すところである ” なのです。

甘利俊一の考察の経緯は甘利自身の言葉で説明されています。この幾何学的発想は1977年には胎動を始めていたという。情報幾何学として、今日では広く知られていますが、オラーには届いていなかったのかも知れません。しかし、情報幾何学は、国内では機械学習、深層学習の仕組みを理解する一つの方法論として高く評価され、広く認知されているものです。

オラーが到達したのはこのような伝統を持つ情報リーマン多様体の理論的な美しさを、微分可能プログラミングとホモトピー型理論の観点からニューラルネットワークを現場感覚で受け止めて分析しようということでした。

だからこそ、オラーは ” 微分可能学習知能量子回路ボルンマシンへ繋がる道 ” と ” 波動関数型ニューラル深層学習量子コンピューターへの道 ” を感受していたのではないか?ここにオラーの美学と数学的な直感の特質があると私は思います。


◇Lei Wang (王磊)と潜在的保型形式

Lei Wang (王磊)の手法は2017年に発表されたボルンマシンの最初の論文 ” ボルツマンマシン 対 ボルンマシン ” によく現れているようだ。論文で冒頭に宣言されているのは「量子レニーエントロピー」を計算ツールとして使うという提言だ。

Lei Wangはテンソルネットワークを計算ツールとして使います。量子計算の世界では、現在ごく普通に行われているものです。そのためのアプリケーションすら発売されているのです。従って、Lei Wangが提案したものとしては、この ” 量子レニーエントロピー ” がボルンマシンの構想とともにその計算ツールとして初めて提案されたと見るべきでしょう。

この量子レニーエントロピー なのですが、馴染みがないのも無理はありません。これが提案されたのが2013年、Marco TomamichelのグループがarXivに公開したものだからです。
そもそも、レニーエントロピーとは一体なにか?です。 Wikipedia によると ” フラクタル次元推定のコンテキストでは、レニーエントロピーは一般化された次元の概念の基礎を形成する ” 。次に ” 、多様性の指標として『生態学』と『統計学』において重要 ” である。次に ” 量子情報でも重要であり、エンタングルメントの尺度として使用できる ” 。

そして、ある理論的文脈では ” モジュラー群の特定の部分群に関する保型関数 ” でもある、と驚くべきことが記されています。出てきました ” 保型形式 ” です、これがレニーエントロピーの奥の深い背景であることはKamu Number Theoryからは予想できることでしたが、やはりというべきでしょうか。

宇宙のあるいは万物の潜在的(潜象)形式である保型性は、ここにも姿を表していたのだというのが私の強い印象です。この潜在的な響きにLei Wang (王磊)の直感が感応したのだと私は思わざるを得ないのです。

レニーエントロピーが「大局的な構造」、多様性とかトポロジー構造を数値化出来るツールであることは想像がつくのです、これは『生態学』で活躍する多様性を測るツールであるというと場面に如実に現れています。

Wikipediaには更に注目される記載があります ” 量子物理学におけるレニーエントロピーは、密度行列への非線形依存性のため、『観測可能とは見なされません → 平行潜象世界』(この非線形依存性は、シャノンエントロピーの特殊な場合にも当てはまります。)ただし、エネルギー伝達の『2回の測定』(フルカウント統計とも呼ばれます)によって操作上の意味を与えることができます ”

『2回の測定 → フルカウント統計 → 正規化』というところが私見では「ボルンの原理(定理)」と通常呼ばれているものに該当するのでは、という印象を感じます。

これまでのところを説明抜きで整理すると、次のような関係が見えてきました。
     ———————
●〈量子ビット=量子エンタングルメントエントロピー〉
       → 〈時空構造=テンソルネットワーク〉  
            → 〈2次元共形場幾何学・AdS/CFT〉
●〈量子ビット=情報微小管ファイバー〉
       → 〈複素時空状態量=量子レニーエントロピー〉
            → 〈微分トポロジカルファイバーバンドル〉
     ———————

以上はKamu Number Theoryから整理したことを簡単に記したものです。そこで、今は追求はここまでとして、次にボルンマシンの名前の由来となった「ボルンの原理(公理?)」を見たいと思います。


D ドイチとボルンの原理

さていよいよ後編のまとめ、D ドイチの登場です。謎の多かった〈量子テレポーテーション=量子エンタングルメント〉の問題は実験的に確認され、更に理論的にも量子エンタングルメントエントロピーの構造から幾何学的(2次元共形場幾何学)に理解出来るようになりました。量子コンピューターにとっては基本物性として使えるようになったわけです。

そして、いよいよ残った ” 量子論の謎 ” はデコヒーレンスに絞られてきました。これが量子論の理論的な基幹をなすだけでなく、量子コンピューターにとっても最大の障壁とも見られているとともに、未だに未解決の大問題なのです。
(量子論の謎については 2-4-4.粒子から波動を見る・量子論の謎
 https://blog.goo.ne.jp/masadon/e/0f5488c5aec485ace530e24744d1dcc9)

この大問題に D ドイチが1999年に出した答えは ” 古典熱力学と解析力学(量子論の一部を含む)及び平行宇宙論から導ける ” というものでした。つまりボルンの原理はただの定理に過ぎないというあっけないものでした。これには多くの反論や拒否反応が巻き起こりました。

さて、Kamu Number Theory の立場からボルンの原理を見ると、D ドイチの議論はとてもまともなものに見えるのです。簡単に言うと、ボルンの原理は現象世界の姿を写したものであって、”現象前駆の波動の世界”を反映したものとして見えないからです。

つまり、現象前駆の波動状態から重合遷移し、そこから更に人間に拠って規格化された現象として観測される結果だけを見ているのがボルンの原理だから、なのです。

Kamu Number Theory における虚数についての議論を思い出してください、量子波動状態というのはこの虚数を使わなければ表現できないものなのです。しかし、ボルンの原理は ” 実数の世界 = 確率 ” だけの原理なのです。そして、確率というのは実は人間原理に基づいた ” 観測 ⊗ 期待値 ” を反映したものなのです。

D ドイチのあっけない結論はこうした背景を知れば自然なものとして受け入れることの出来るものです。そして、D ドイチの独壇場が平行宇宙論です。さらに、実数の現象世界と虚数の現象前駆世界(潜象)とを2つの別世界と考えるなら、Kamu Number Theory は D ドイチの平行宇宙と相似の ” 虚・実・平行宇宙論 ” になります。

ボルンの原理はこの ” 虚・実両世界 ” にまたがることのない、あくまでも観測する立場の人間原理として使うことの出来る ” 実用的な定理 ” だと言えます。これを、波動の世界が持つ無尽蔵の情報を使おうとする虚数コンピューターの側から見れば、実用的ではあるけど自らを貧しくしてしまう ” 限界 = 壁 ” を量子との間に作ることになります。

では、この壁を突破する原理はなにか?、1957年にヒュー・エベレットが切り開いた「多世界平行宇宙」の中に D ドイチはその答えを見出したのです。Lei Wang (王磊)が提起したボルンマシンは、波動関数に直接アクセスする道を切り開いたと言えます。この道がさらにボルンの定理を超えて次のステップに進むようになってほしいと願っています。

今回はここまでといたします、この先はいよいよD ドイチとともに「多世界平行宇宙」と Kamu Number Theory による「虚・実・歪性・平行世界」へと進みたいと思います。


         †


”4-2・虚数コンピューターとモンスタームーンシャイン” 
         今回で、3回に分けたエッセイは完結しました。
次回は ”4-3, 多世界平行宇宙と正反対称歪性平行宇宙 ” になります


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(その4)- 2, 虚数コンピューターとモンスタームーンシャイン
   4-2-1,(前編)テトレーションで見るモンスター世界
https://blog.goo.ne.jp/masadon/e/7bba2ca568a02191d2356643226385fe
   4-2-2,(中編)モンスタームーンシャインとミクロ・ブラックホール
https://blog.goo.ne.jp/masadon/e/f1093fed0d368bd7518f588943d96636
   4-2-3,(後編)ボルンマシンと生命の虚数コンピューター
https://blog.goo.ne.jp/masadon/e/d45a3b927dfd059d41a7a91c047bee74
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(その4)- 1, 数学モデルの理不尽なまでの有効性
   4-1-1,(前編)数学モデルの理不尽なまでの有効性
         (数学モデルの不完全性は健全性の証し)
https://blog.goo.ne.jp/masadon/e/fa0966fbfc710608caedf6cc5fd11e01
   4-1-2,(後編)数学モデルの理不尽なまでの有効性
         (数学モデルの強靱性は虚数にあり)
https://blog.goo.ne.jp/masadon/e/02a239495b6a74c35a9305dddc91eed4