物語の冒頭、『赤毛のアン』の主人公、アン・シャーリーがブライトリバーの駅に登場したとき、自分を迎えに来た初老の男マシューに、手さげ鞄について語るところ。
「この中には、あたしの全財産が入ってるんですけれど、重くはないの。それに、特別なさげ方をしないと、柄がはずれてしまうのよ。だからあたしが持ったほうがいいんです。そのこつを知っていますから。これ、とても古いかばんなのよ」(『赤毛のアン』村岡花子訳)
この数行に、少女アンが過ごしてきた人生の重みが凝縮されているような気がするのだが、その印象的な手さげかばん!!
村岡花子さんの訳では「みすぼらしい古ぼけた手さげかばん」となっているけれど、英語の本ではa shabby, old-fashioned carpet-bag となっている。
カーペットバッグなんて日本にはなかったので、わかりやすいように「手さげかばん」と訳したのだと思うが、長方形の皮のカバンなどではなく、絨毯製というところは、押さえておきたい。
昨日(5月13日)の「花子とアン」の放送で、葉山蓮子さまが寄宿舎に本をとりに1時間だけ戻ったときに、本をつめていたカバンが、まさにアンが持っていたのと同じようなカバンだったことに気づいた人は、どれくらいいるだろうか?
蓮子さまのかばんも絨毯製に見えたけれど、もしかしたら、和布かも?
しかし、2008年「赤毛のアン」刊行100周年のときにプリンスエドワード島に旅行に行き、アンの衣装をつけて記念写真を撮ったけど、そのときの貸し衣装のカバンが、蓮子さまがもっていたカバンとまったく同じ形だったので、「おやっ」と思ったのだ。
こんなところに『赤毛のアン』の小ネタが忍ばせてあるぞっ、と嬉しくなった。
もしこの発見が妥当ならば、「花子とアン」の美術スタッフは、よく調べてるなあと感心する。
トルコに旅行にいったとき、この絨毯製のカバンというやつを、いっぱい見たっけ。
買っておけばよかったと、いまさらながら、悔やまれる。