今年3月に出版されたぱかりの『生贄の木』の終わりのほうで、
チャールズ・バトラーの印象的な記述が出てくる。
すでに90歳を越えたチャールズは、ひ孫までいる。
そして、何年も前に死んだ(何十年でも、十数年でもない)マロリーのことを
思いながら、庭に咲いたデイジーで花占いをしている。
マロリーには「心がない」「心がある」…
オイオイ、何てことを。
90過ぎてもわからないなんて。
それはともかく、驚くのは、
キャシー・マロリーは少なくとも70代まで生きるだろうということ。
チャールズは結婚をし、子どもをもうけ、孫が生まれた。
そのまた子どもに囲まれ、静かな生活を送っている。
第一作の『氷の天使』で登場したキャシー・マロリーは25歳だった。
このときチャールズは1年前にアッパー・イーストサイドから
ダウンタウンのソーホーに引っ越したのだという記述があり、
この『生贄の木』ではそれは「何年か前」だと、記されている。
ということは、引っ越してから4年たったとして、キャシーはいま28歳。
そんな感じかなー。
チャールズはキャシー・マロリーより10歳以上年上ということはないだろうと思う。
なぜなら、チャールズがキャシーについて語るときに
年の差を気にする記述がないから。
妥当なのは7、8歳年上というところじゃないか?
ということはキャシーとチャールズはこの先も長い年月、
二人の関係を大事に思いながら生きていくというわけだ。
ほぼほぼ50年!!!
じゃあ、結婚した相手というのはキャシー・マロリー?
それはちょっと疑問だけど。
かといって誠実のかたまりのようなチャールズが、
他の女性と結婚するというのも、いまのところ考えられない。
チャールズの心はキャシーのことでいっぱいなのだから。
さてさて、美女と野獣の位置づけである二人の関係は、これからどうなる?
★チャールズが老人になって云々という記述は
第六作の『吊るされた女』にも出てくる。 物語の終幕。
キャシーの脱出の謎は決して解けないだろう。
ただし、長い長いその一生の晩年に、
チャールズが日記に記す最後の一文を数に入れるなら、話は別だ。
彼が秘密の守護者、罪の担い手の名に生涯背かなかったため、
彼の子や孫たちは、漫画のヒーローを信じるスパローへのオマージュに
永遠に首をかしげることになる。
そのページには、中央に一行だけこうあるのだ──
“キャシー、きみは飛べるの?”。
もうひとつ、疑問がある。
『生贄の木』の物語の前に、マロリーはふらりといなくなったらしい。
3か月も!
以前、母親と自分のルーツを探る『天使の帰郷』
父親との邂逅をなしとげる『ルート66』
の2回、そういうことがあった。
いずれも、チャールズ、あるいはライカーが陰ながら同行している。
ところが今回はひとり。
誰も知らない。
冒頭、重罪犯罪課のボスであるコフィー警部補は
そのことで腹を立てている。
読者にもその失踪の謎は明かされない。
つまりそれが次回の物語に繋がるということかなー?
物語の奥行きは、ますます広がりつつある。
ちなみにまだ翻訳されていないマロリーシリーズは2冊。
It Happens in the Dark (Kathleen Mallory, #11)
Blind Sight (Kathleen Mallory, #12)
日本での刊行が待ち遠しい!!