『赤毛のアン』のキーワードは「ふくらんだ袖」でした!
ふくらんだ袖は、『赤毛のアン』のなかに二箇所でてきます。
最初は、アンがグリン・ゲイブルスに置いてもらえることになって、初めて日曜学校に行く日。
マリラはアンのために、新しい服を三着用意してくれます。
でも、あまりに実用一点張りの無味乾燥な服だったもので、アンは正直、がっかりしてしまいます。
孤児院で着ていた服に比べれば、こざっぱりしているし、アンのためにマリラが作った新しい服なんですが。
マリラが不機嫌そうに「気に入らないのかい」と聞くと、アンは仕方なく、正直に、こう答えます。
「あら、ありがたいことはありがたいのよ。
でも、もし──もし、この中のたった一つだけでも、ふくらました袖にしてくださったら、もっと、もっとありがたかったんだけど。
ふくらました袖は、いまとてもはやっているんですもの。
パッフドスリーブの服を着たら、なんともいえなくうれしくて、ぞくぞくっとすると思うわ」
そこでマリラは大立腹。(すっかりご機嫌を損ねたってこと)
それからというもの、アンは着るものについては、一言もあれが着たいなどと言うことはありませんでしはた。
でもねぇ、大好きな友達のダイアナは華やかでスマートな服を着ているというのに、「何の飾りもない、ぶかっこうなつめ袖の黒服」では、やはり「かすかな苦痛を覚えないわけにはいかなかった」のです。
女の子だから、当然。
そう思うのは仕方ありません。
さて、アンがきて2年目のクリスマス。
アヴォンリーの学校で、校旗をつくるための募金を募るために、クリスマスに音楽会を催すことになりました。
女の子たちがグリン・ゲイブルスに集まって、劇や朗読の練習をしています。
たまたま居合わせたマシューは、物陰から女の子たちの集団を観察して、アンの服装がほかの女の子たちと違うことに気がつきます。
正確には、アンと女の子たちが違うことはわかったけれど、何が違うのか、“2時間”パイプをくゆらせて……、違いは服装にあると思い当たったのですが。
(そのくらい、女の子とは無縁のマシューだったのです)
そこでマシューは、クリスマスにふくらんだ袖のドレスをプレゼントしようと決めるのです。
その後、マシューがカーモディの町にドレスを注文に行くくだりは、しかめっ面では決して読めない内容なんだけど、それは、本を読むときのお楽しみに!
とにかく、結局はご近所のリンド夫人にドレスのことをお願いし、クリスマスの朝、アンにドレスをプレゼントします。
「アンは感激のあまり言葉も出ないようすで新調の服をながめていた。
ああ!なんと美しいのだろう──つやつやとして、すばらしい茶色のグロリア絹地!
優美なひだやふちどめのあるスカート。
最新流行の型で、ピンタックのしてあるブラウスで、首にはうすいレースのかざりがついている。
それよりも袖、すばらしいのはスリーブだった。
長いひじのカフスの上には、茶色の絹のリボンを蝶結びにしたので仕切ってある、二つの大きなふくらみがついていた」
たぶん、生まれて初めて、そのように美しい服を自分のものにすることができたのだと思います。
おしゃれをしたい女の子の気持ちが、すごくよく表現されていて、「よかったね、アン」と思わず読んでるほうもうれしくなってしまう。
これがふくらんだ袖のシーンです。
音楽会は大成功。
アンは誰よりも輝いていて、マシューとマリラは鼻高々。
それからというもの、マリラも、素敵な服をつくってくれるようになったという話ですよ。
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