@サラ☆
三津田さんの物語、11回目です。
朝鮮半島の京城に落ち着くと、すぐに子どもができたフサコさんです。
★優しい夫と初めての子ども
「妻にやさしい夫」というお母さまのお眼鏡にかなっただけあって、
三津田氏は穏やかで優しい男性でした。
女性には参政権がなく、家長制度が敷かれていた時代なので、
亭主関白はあたりまえ。
ですから、当時としては、なかなかいないタイプの夫だったかもしれません。
「夫はね、私がやりたいように、やらせてくれました。
尻に敷かれてくれた、優しい人でしたよ」
とフサコさんはしみじみ語ります。
「朝鮮半島にわたってすぐに子どもができたのだけど、
当時は助産婦さんに来てもらって、自宅で産むのが普通でした。
でも私は神経質なところがあるから、それが恐くて。
それで、東京の実家に戻って病院で産みたいと夫に言ったの」
三津田氏は「困るな」の文句一つ言いませんでした。
それどころか、フサコさんの不安な気持ちをやさしく受け止め、それならばと、
東京の実家まで付き添って送り届けてくれたのです。
実家にいれば、お母さまも女中さんたちもいて、
初めての出産で右も左もわからないフサコさんの面倒を、何くれとなくみてくれます。
フサコさんは希望通り、順天堂病院で安心して出産することができました。
「ほんとにやさしい旦那さまね」とお母さまに言われ、
フサコさんも「本当にそうね」と、嬉しそうに頷きました。
さて、生まれたのは女の子。
自分の腕に抱く新しい命が、こんなに輝きに満ちたものとは
思ってもみませんでした。
生まれてこのかた、人のお世話などあまりしたことのないフサコさんでしたが、
愛おしい気持ちがこみ上げ、それはもう大切に大切に、
気を張り詰めて育てました。