サラ☆の物語な毎日とハル文庫

三津田さんの物語⑬~突然おそった悲しみ

@サラ☆

フサコさんにかなしい出来事がありました。

自分を取り巻く世界が一変して、

もうどうにも元に戻らない。そんな出来事です。

 

 

★突然おそった悲しみ

 

長女が3歳になったばかりのとき、それは降ってわいたように起こりました。

風邪をひいたのです。

下痢をしていたので、フサコさんは大事を取ってお医者様にかかりました。

お医者様には「水は飲ませないように」と言われました。薬ももらいました。

 

家にもどったフサコさんはさっそく薬を飲ませましたが、熱は少しずつあがります。

なんだか苦しそうな息遣い。

水をあげてはいけないというお医者様の言葉でしたが、

夜中に脱水症状を起こし、突然亡くなってしまいました。

 

「お母さま」がまだうまく言えず「おかーま」とフサコさんに甘えるわが子。

まだまだ片言でたどたどしいけれど、おしゃべりが上手な女の子でした。

前の日までは風邪をひいてはいましたが、可愛らしい声でしゃべっていた娘が、

次の日には、2度と目を開けることもなく、呼吸がとまり、命をなくしていました。

 

温かい光に満ちた世界が、一瞬にして崩れ去りました。

どんなに悲しかったことでしょう。

起きてしまったことがなかなか信じられず、茫然として娘の前に座り続けるフサコさん。

お葬式に初七日と弔いの行事が移ろっていきます。

慟哭するとは、こういうことを言うのでしょう。

フサコさんは胸が張り裂けるばかりに泣いたかと思うと、

こんどはふと娘の姿が感じられる気がして、

家じゅうを、名前を呼びながら探し回りました。

 

1カ月、2カ月、3カ月……。

夫の三津田氏はあまり日を置かずに職場に復帰し、日常生活が戻ってきました。

 

フサコさんはあるときふっと、仕方がない。あきらめようと思いました。

日本にいるのだったら、いい医者に診てもらうこともできただろうに。

お母さまがそばにいたら、相談できたのに。

自分がもっと知識や経験があれば、こんなことにはならなかった…、

いくら考えても、もう娘はいません。

苦しくても、その事実を受け入れるしかありません。

 

夫は毎日仕事にでかけます。自分ばかり嘆き悲しんでいても埒はあきません。

ちゃんと静かに呼吸をして、背筋をまっすぐに伸ばして、

ぐるぐる頭のなかを回り続ける考えをストップして、とにかく体を動かしていよう。

 

涙がはらはらとこぼれるのは仕方ないけれど、家じゅうを大掃除したり、

庭に畑をつくって作物を育てたりと、家事に打ち込みました。

 

老女になったフサコさんは、こんなことを語っていました。

「どんなことがあっても、生きていかなければなりませんからね。

けっきょく、何とか乗りこえるより仕方がないのよ。

私みたいに長く生きているとわかることだけど、人に生まれたからには、

『苦難』は約束事。

どこを見回しても、死ぬそのときまで苦難を免れた人など、一人もいません。

 

遅かれ早かれ、苦難は誰にでも襲い掛かるものなの。

どんな苦難かは人それぞれ。でも苦しいことには変わりないし、

人に肩代わりしてもらうわけにもいかない。

だからね、潔く覚悟を決めて、受けて立つしかないんです。

 

あなたがそういう目にあったときにはね、

乗り越えるための勇気をどこからでもかき集めたらいいわ。

そして苦しみにも悲しみにも逃げずに向き合い、それからキッパリと割り切るの。

そして、元気を出してノー天気に生きていくほかはないのですよ」

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