マリラがカーモディに後援会の集まりで出かけ、マシューもじゃがいもを船に運びにいった日。マリラが、「お昼からダイアナを招いて、ここでお茶をあげていいよ」といってくれました。
アンはもちろん、狂喜します。
ダイアナは二番目の晴れ着を着て、グリン・ゲイブルスを訪問しました。
アンも二番目にいい服をきて出迎えます。
ふたりはひとしきりリンゴ園でりんごを摘んで食べ、おしゃべりをしたあと、いよいよお茶の時間となりました。
アンはまず「いちご水のビンをお盆にのせ、テーブルの上にコップをそえて」置きました。アン自身は、りんごをいっぱい食べたので、いまはあまりほしくないと控えます。
ダイアナは、美しい赤い色のいちご水を、コップになみなみとつぎ、上品にすすりました。
「これはすごくおいしいいちご水ね、アン。私、いちご水ってこんなにおいしいものだとは知らなかったわ」(新潮文庫・『赤毛のアン』より抜粋)とダイアナは言います。
アンは喜んでさらにすすめ、お茶のために火をおこしに台所にいきます。
もどってきて、『赤毛のアン』のなかでも傑作のエピソードをダイアナにひとしきりおしゃべり。読者が、そのおしゃべりにすっかりはまっていると、ダイアナが突然、「あたし──あたし、とても気持ちが悪いの」といって、すぐに家に変えると言い出します。
まだお茶も飲んでいないし、お昼の食事もしていないのに……。
意外な展開です。
ダイアナは、ふらつきながら家に帰ってしまいました。
「……失望のあまり、目には涙さえ浮かべてアンはダイアナの帽子をとってきて、バーリー家の裏庭の垣根まで送っていった。それから道々泣きながらグリン・ゲイブルスに帰ってきて、悲しそうに、いちご水の残りを戸棚にもどし、すっかり力をおとしてマシューとジェリーのためにお茶のしたくをした」
かわいそうなアン。
賢い方は、もう事態がどうなってしまったのか、わかったかも。
ねぇ……。いちご水があるはずの戸棚には、マリラの勘違いで、赤ワインが入っていたのです。
ダイアナはそれを三杯も飲んで、酔っ払ってしまったのでした。
アンの物語は、意外性に満ちています。
ダイアナのお母さんは、もちろんかんかんになって怒り、アンとは二度と遊ばせないといいました。マリラがいくら、あれは自分の間違いだと謝りにいってくれても、アンがいくら直接謝っても、許してはくれませんでした。
その後どうなったか。それは、本を読んでのお楽しみです。
このあたりまでくると、もう読者はアンとともに一喜一憂です。どっぷりはまって、読み終わるまで、本を置けません。
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