通りに面した一軒の古本屋のドアを、ずぶ濡れになった一人の男の子が、騒々しい音をたてて開けました。
男の子はクラスの仲間に追いかけられ、思わず目についた古本屋のドアを開けて、逃げこもうとしたのでした。
けれど、本だらけの店内の、なんだか威圧されるような光景を見て立ちすくみました。
「店の中でだろうと外からだろうと、本を見てくれるのはいいですがね、ともかくドアを閉めてくださいよ。風が入るじゃないですか」
店の主人にいわれるままに男の子はドアを閉めました。
そして、名前ぐらいは名乗るのが礼儀だといわれ、「ぼく、バスチアンといいます。バスチアン・バルタザール・ブックス」と答えます。
「Bが三つとは、えらく珍妙な名前だな…」
さて、店の主人にあれこれ質問され答えていると、電話がかかってきました。
店の主人は奥に引っ込んで受話器を取りました。「もしもし…」
その間に男の子の目は、店の主人が手にしていて、いまは皮のイスの上に置いてある一冊の本に吸い寄せられました。
強烈な磁石に引き寄せられるように、男の子は本を手に取ります。
その本のタイトルは『はてしない物語』。
男の子にとって、これこそ夢にまで見たもの。本きちがいになってからずっと望んでいたものでした。けっして終わりにならない物語。本のなかの本!
男の子は本を手に持ったまま、そっと古本屋をでました。
本ドロボウです。
どうしようもなく、ほしくなってしまったのです。
男の子は走り出しました。
走って、走って、けっきょく学校の屋根裏部屋に隠れ、本を読み始めます。
そして、本の中に見つけたのはファンタージエンの世界…。
(と、ここまではミヒャエル・エンデの『はてしない物語』の導入部。そのダイジェストです。参考にし、一部引用したのは岩波書店の本<上田真而子、佐藤真理子訳>です。)
さて、ファンタージエンは、『はてしない物語』の中の国ですが、「想像上の世界」とスライドして考えることができます。(くわしい説明は省きます。)
だからファンタージエン=「ファンタジーの世界だ」とくくりたいです。(ブログの便宜上です。)
ファンタジーというと、いろんな定義があるらしいけれど、わたしは「人間以外の生き物(あるいはモノ)が、人間と同じようにしゃべったり行動したりする、現実を越えた世界」ととらえようと思います。
ええいっ、では、唐突ではあるけれど、ファンタージエンに、いざっ!!
(って、唐突すぎますか?)
最近の「物語の缶詰め」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- ジブリノート(2)
- ハル文庫(98)
- 三津田さん(42)
- ロビンソン・クルーソー新聞(28)
- ミステリー(49)
- 物語の缶詰め(88)
- 鈴木ショウの物語眼鏡(21)
- 『赤毛のアン』のキーワードBOOK(10)
- 上橋菜穂子の世界(16)
- 森について(5)
- よかったら暇つぶしに(5)
- 星の王子さま&サン=テグジュペリ(8)
- 物語とは?──物語論(20)
- キャロル・オコンネル(8)
- MOSHIMO(5)
- 『秘密の花園』&バーネット(9)
- サラモード(189)
- メアリー・ポピンズの神話(12)
- ムーミン(8)
- クリスマス・ブック(13)
- 芝居は楽しい(27)
- 最近みた映画・ドラマ(27)
- 宝島(6)
- 猫の話(31)
- 赤毛のアンへの誘い(48)
- 年中行事 by井垣利英年中行事学(27)
- アーサー・ランサム(21)
- 小澤俊夫 昔話へのご招待(3)
- 若草物語☆オルコット(8)
バックナンバー
人気記事