児童文学の講座に出席したので
そのあと池袋の三省堂をのぞいたら
奥のほうの地下一階の片隅に
アウトレットのコーナーが設けられていた。
本のアウトレット? と興味が湧いて入ってみたら
料理本とか、旅行の本とか、
図版の美しい本で、2年ほど前あたりに出たものが
たくさん並んでいた。
そのほかに出版社が力を入れて編集したもの。
何しろ年間2万点以上の本が出版されるのだから
書店の棚に置いてもらうには熾烈な競争があるのだ。
売れ行きがよくなければ、
たちまち消えてしまう。
次の新刊本が待ち受けているのだから。
というわけで書店の棚には置いてもらえないが
出版社が自信をもって読者に提供したい本たちが、
アウトレットコーナーに集まっている。
そこでみつけたのが
『星の王子さまの美しい物語』(飛鳥新社)
アマゾンなどで定価4000円で出ている本が
1728円。
値段をとやかく言いたくはないけれど
4000円を出して買うのは二の足を踏む。
中に『星の王子さま』の新訳も含まれているが
それはもう他社の文庫本で読んでいるので、
図版が美しいとはいえ……
だけど、それが1728円なら、
手に入れたい!
ちょうどサン=テグジュペリに関する本を
読みたいと思っていたところでもあり。
フランスで編集・出版されたものの翻訳本で
いかに作品がつくられたかという過程の話や
物語の読み解き方、
サン=テグジュペリの未発表デッサンや収録原稿などが
紹介されている。
大型本でイラストの印刷が美しい。
もちろん即購入。
書店がこれだけ減ってきているからには
埋もれてしまう本も膨大な数だろう。
スペインのミステリに『風の影』(集英社文庫)というのがあったけれど
その中に「忘れられた本の墓場」というものが出て来る。
まさしく墓場行きになるまえに、
アウトレットで読者と出会えるなら、
本にとっても、そんな嬉しいことはないんじゃないかなー。
読者としても、上製本が安く買えるのならありがたいゾ。
古本でもいいんだけど、
図版の美しさが売りの本は
誰かの手を通ってないほうが、そりゃ嬉しい。
というわけで、アウトレット、いいじゃないと思ったのだ。