サラ☆の物語な毎日とハル文庫

映画『Merry Christmas~ロンドンに奇跡を起こした男~』を観た

 

【Amazonの映画紹介より抜粋】

1843年10月なかなか筆が進まない有名作家のチャールズディケンズ。

家族の為にもどうにか新作を書こうと思っていた彼は、クリスマスをテーマにした小説を書くことを思いつく。

物語が進むにつれて、ディケンズは現実と幻想の境目がわからなくなり、小説の世界に入り込んでいく。

クリスマスキャロルの登場人物スクルージと3人の幽霊との不思議な出会いを経て、心の奥にしまっていた子供の頃の記憶がよみがえってくるのだった。

 

 

クリスマスなど「いまどき誰も祝わない」と出版社の男はいった。

「なぜクリスマス? 

12月25日は人の財布をひったくる日だ…

クリスマスの本は売れない」

 

『クリスマス・キャロル』が出版されたのは1843年12月19日。

この出版社の男がいうように、その当時のイギリスでは、クリスマスはあまり大事にされていなかったのかもしれない。

実際のところはよくわからないけど。

とにかく、この映画は、そういう設定ではじまる。

 

『Merry  chritmas~ロンドンに奇跡を起こした男~』(“THE MAN WHO INVENTED CHRISTMAS”)は

チャールズ・ディケンズがどういう成り行きで『クリスマス・キャロル』を書くこととなり、

6週間で書き上げ、出版にこぎつけたかを、ディケンズの伝記も交えて描いている。

 

2018年の秋に公開され

観たかったけれど、つい忙しくて見損なっていた映画。

 

 

『オリバー・ツイスト』で成功した後、三作品が失敗に終わり、

借金まみれになっていたチャールズ・ディケンズ。

 

新しい家に引っ越したばかりで、リノベ費用もバカにならない。

なんとしても、お金が必要だ。

そこで、新作を書くことにする。

 

テーマは? 

 

 

ここに登場するのが、救貧院からきたという新しいメードのタラ。

彼女はこんなふうに、子どもたちに〝お話〟を聞かせていた。

 

「そしてクリスマスイブに妖精の丘が開き、

火の精霊たちが放たれる。

その精霊たちを死者の神が率いて狩に出て

こう呼びかける(奇妙な叫び声)」

 

アイルランド人の祖母が昔聞かせてくれた話だそうだ。

「クリスマスイブは、あの世との境目が薄くなる。

それで精霊たちがこの世に出て来る」

 

このタラの話を聞きつけて、ディケンズはクリスマスのストーリーを思いつく。

 

「クリスマスは年に一度だけ、人々が閉じた心を開く日だ。

下々の者たちを同じ人間とみなす。

別の生きものではなく」

と映画の中のディケンズはいう。

 

映画では、クリスマス・キャロルの登場人物、スクルージとともに

過去、現在、未来の幽霊が登場する。

スクルージは、守銭奴で、けちな実業家。

大事なのは金だけで、仲間が死んでも悲しむこともない。

 

物語の結末で、病気のティム(スクルージの雇い人の息子)を死なせるかどうかで揉める。

お金がないせいで、助かるための医療を受けられない。

ケチで守銭奴のスクルージが、助けの手を差しのべるわけがない。

実際ディケンズは、ティムが死んでしまう結末を選んでいた。

でも…。

 

「これはクリスマスの本だろ。

クリスマスは希望を与えるものだ。

良心を広める。

ティムが死んだら、この本の意味がない」(by 友人のフォースター)

「スクルージはティムを助けないといけない」(by タラ)

 

さて、心の隅々までケチが染み付いたスクルージが、

クリスマスイブの数時間で、変われるものだろうか?

そこらあたりがクライマックスに。

 

ディケンズの脳裏にファクトリー・ボーイだった過去の記憶が甦る。

いまでもディケンズを苦しめている〝ウォーレン靴墨〟の工場での苛酷な体験。

たった5か月間だったけれど、トラウマとなりチャールズの心をとらえて放さない。

 

空腹、暗闇、思考に潜む暗闇、心の亀裂、魂にこびりついた染み、

それらは決して離れてくれない。

 

 

ここから新たな展開が…

 

チャールズの心に、ある言葉が浮かぶ。

父から教わった言葉だ。

 

「人は誰でも、誰かの重荷を軽くできる」

 

スクルージ自身もこう叫ぶ!!(この映画では、ということだけど。)

 

「死にたくない。

孤独のまま愛されず、忘れ去られるなど…

これからはクリスマスを祝う。

その心を年中抱く。

過去・現在・未来に生き、その三世の霊をわが身に宿らせる。

三霊の教えを胸に刻みつづける。

どうか頼む。

何でもいい、死ぬ前に善行をさせてくれ

 

そこで『クリスマス・キャロル』の結末は変更される。

 

「何よりうれしいことに、つぐなう時間がある。

スクルージは限りなく善行を施した。

そして、病弱だったティムの第二の父親になった」

 

『クリスマス・キャロル』は1843年の12月19日に無事出版にこぎつけ、

24日までに売り切れたそうだ。

この本を読んで感銘を受けた読者により、慈善事業への寄付も急増した。

 

この本はクリスマスのあり方を変え、

優しさと寛容が喜びをもたらすと、人々に気づかせた

と映画は結んでいる。

 

 

なかなかいい映画だった。

『クリスマス・キャロル』好きにはこたえられない。

当時のロンドンの情景

辻馬車のようすもよくわかり、楽しさが極まるのだ。

 

 

ちょっと耳寄りな話。クリスマス・ツリーが飾られている。

 

「まあ、なんてきれいなの?」(by ディケンズ妻)

「そうだろ、ドイツの風習なんだ。

クリスマスに飾る木だ。

王室が飾り始めたから、流行る」(by ディケンズ)

 

なるほど、クリスマス・ツリーの始まりはドイツから、ということらしい。

面白い。

 

追記 スクルージを演じているクリストファー・プラマーは

あの名作ミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』では、トラップ大佐を演じていました。

ニヒルなハンサムで、なかなか素敵でした。当時36歳。

この『Merry  chritmas~ロンドンに奇跡を起こした男~』は2017年の作品で、

88歳の演技です。

すごくない? すっかりお爺さんになっちゃったけれど、健在です。

 

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