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にじいろ  スケッチ

まりもの日々のこと
感じたこと、、気ままに描いてます
よろしかったら、お付き合いくださいね♪

そして  10年後

2009-12-11 23:32:09 | 妄想バナシ

 

 

そろそろ お腹回りがヤバくなってきたかつおが
会社から、帰ってきた

 

ガタガタ、、と大きな音がするので 玄関に行ってみると
大きな機械と セールスマンがかつおと一緒に
立っていた

 

「ただいま  今日はお父さんとお母さんのルビー婚式
(40周年)のお祝いにタイムマシンを買ってきたよ

 

あらあ、、もう40年、、、
そんなに経つのねぇ、、
ちょっと感慨深げな気分な私  

 

セールスマンは早速 機械の装着に取り掛かっていた

 

なんでも パナウソニック製の新製品らしい

 

キッチンにいた嫁の静代も 一歳になるフグを抱きかかえて
来て覗きこんだ

 

 

静代は かつおが大学4年の卒業とともにできちゃった婚で
うちにきた嫁

 

 

体もでかいが態度もでかい、、
すでに10歳と9歳の年子がいて、フグはちょっと年の離れた
3男だった

 

「おもしろそうねぇー

 

ここんとこ、ちょっぴり物忘れの激しくなった団塊くんと
孫のお世話でクタクタのまりも、そして静代 かつおが
タイムマシンを覗きこんだ

 

セースルマンは蔓延の笑みを浮かべて

 

「準備は整いました    
では、、、さっそく、、試して みましょうか 」

 

タイムマシンは4人乗りだった

 

一番最初にちょっと腰の曲がった団塊くんが乗り込んだ
そう、、、団塊くんと言えば オレは70歳で死ぬんだ
と意気込んでいる時もあったが70を過ぎた今でもピンピン
していた

 

そして、、私、かつお、、フグを抱っこした静代が乗り込んだ

 

 

前に大きなスクリーンがあり、レバーを上にあげると過去、
レバーを下に下げると未来が映し出されるという

 

セールスマンは 慌てて注意した

 

「くれぐれも過去の世界が映し出されている途中で
ドアを開けたり、いきなり時代を戻したりしないで
下さいね
現在に戻れなくなる、可能性もありますから、、、」

 

みんな、、、神妙な面持ちで 大きくうなずき、

 

「では、、、、」

 

とセールスマンがトビラを閉めると
私達は  10年前の過去へ 向かった

 

 

 

 

 

大学生のかつおがいた。
今では沖縄にお嫁にいってしまったいくらも
家でくつろいでいた

かつおが何やら、部屋にかぎをとりつけている

 

やがて、静代が 玄関のチャイムを押し
かつおの部屋へいそいそ、入っていくところだった

 

 

「あっっ  あの日だ

 

 

玄関に脱いであった静代のパンプスを
コソコソ眺めている 私が映し出された

 

「お母さん  何してるの

 

となりで静代が聞くので、、慌てて

 

「え、、いぇ、、しずちゃんの靴 かわいいなと思って、、、

 

 

スクリーンに S アライ の文字が、、、

 

 

「あーーー懐かしい    私ねー
いつも飲み屋とかで お座敷に上がると 飲み屋の
サンダルで家に帰っちゃうから、靴に名前書いたたんだわー
懐かしい~~~~

 

 

うわっっ   やっぱり、、

 

確か、昔やってたブログで そんな予想してた人もいたっけ 

 

 

ウヒウヒ 笑ってる静代が気を許した隙に
フグがふざけて、レバーを下に下げてしまった

 

 

あーーーーーーダメーーーーー

 

 

時空をグルグルと急速に超えながら
私達は一足跳びに10年後に向かっていた

 

急激な加速の影響でタイムマシンは大きく揺れ
ちょっと開いたドアに 団塊くんは入れ歯を落としてしまった

 

あーーっっ 

 

拾おうとしたら、団塊くんはドアから外に転げ落ちた 

 

「出たら だめですよーーーー

 

そういいながら  私も一緒に 転げ落ちてしまった

 

 

 

二人は未来に吸い込まれ

スクリーンには、もう  団塊くんも まりもちゃんの姿も

なかった

 

 

「お母さん、、あんなに お父さんが亡くなってからの
余生を 楽しみにしてたのにねぇ、、」

 

 

 

となりであたふたしてる かつおの
太ももに手をおいて
 

 

静代はニヤリと ほくそ笑んだ 

 

 

 

ジャンジャン    

 

 

 

 


籠の鳥

2009-11-08 21:55:30 | 妄想バナシ

 

 

 

 

土曜日 珍しく  熱が 出ました

 

この時期 熱出すと 「新型インフル、、、って

ことで誰も 私のそばに 近寄ってくれませんでした 

 猫のしおんだけ、私と一緒に一日じゅう

寝ててくれました 

 

 

一日  ただ 寝ているだけでは 能がないので

こんな時こそ、、、まさに妄想タイムです 

 

 

         

 

 

港町の ひなびた 酒場

 

 

そこには いつも2~3人の漁夫が 集まり

酒を 酌み交わす

 

 

ボクは 漁夫ではなかったが

仕事を終えて

ここで 一杯 飲むのが

唯一の楽しみだった

 

 

 

ママは ミツコという

自分の話は滅多に しないが

いつも 男達の 話を 笑って聞いている

その横顔を見ながら ボクは一人

酒を 飲んだ

 

 

 

冬の到来を告げる

木枯らし一号が吹いた夜

いつものように店に行くと

 

「こんばんは、、サワさん  今日は冷えるわね」

 

そう言って熱燗器から、徳利を一本取り出し

ボクのおちょこに注いでくれた

 

 

人肌より、ほんのり、、、熱め

 

 

ミツコママは  お客の 好みの酒 温度を知っている

 

 

 

男達の 歓声が 上がった

いか釣りの話でもして 盛り上がっているのだろう

ミツコママも  楽しそうに  笑う

 

 

 

年のころは 40半ば

 

 

詰めた髪を ほどいて 

明るめの紅をさせば

もっと 美しい女性だろう

 

 

 

ある日

閉店まぎわ

お客一人になった時

 

 

酔った勢いで  こう 切り出した

 

 

「オレさぁ、、   東京に出て  暮らそうかと 思う

たぶん、こんな居心地のいい飲み屋も いい女(人)も

みつからないだろうな、、、

 

 

よかったら  一緒に、、、」

 

 

これが、、ボクにとって 精一杯の プロポーズだった

 

 

 

ボクの言葉を さえぎるように

ミツコママは言った

 

 

 

「そうなの、、  サワさん

こちらに お帰りの時は、また寄ってくださいな

 

サワさんのお顔が見えなくなったら 私 誰よりも

寂しいわ、、、、」

 

 

 

ボクには、、、

 

 

寂しい  のは

 

その 言葉  だった

 

 

 

 

 

ジャンジャン       

 

ふぅ~~~~ 

 

明日から仕事がんばろ 

 

 

 

 


34歳の 女

2009-11-01 00:13:53 | 妄想バナシ

 

 

 

 

「はじめまして」

 

すべては そこから  始まる

 

 

 

 

服の上からでも ふくよかな胸が
はっきりとわかる 薄い シルクの ワンピース

そして 静かに  微笑む

 

 

まず 会話の中で、

どのくらいの資産を持った人か

探り知る

 

 

感触のよい人で あれば
次に会う  約束をする

 

 

 

2回目のデートで

手作りのお料理をふるまう

高級食材を ふんだんに使った

とびきり 手のこんだお料理

 

 

鴨と フォアグラのグリエや

バレンシア風  パエリア  など、、、

 

 

 

これで 大抵の 男は おちるわ

 

 

 

私を  見つめて

「結婚」  の  二文字を

うかべる

 

 

 

3回目のデートで

 

 

私はすっかり あなたに  夢中と

仄めかし 

お金に 困ってる  ことを

打ち明ける

 

 

 

ここからが

私の力量の  試され時

 

 

 

まず   500  ともちかける

 

 

男の顔色を 瞬時に 見定める

 

 

 

少し  曇ったら   

100 に 落とす

 

 

逆に 余裕あり、、な感触なら

1000 に 引き上げる

 

 

プライドの 高い 人ほど

顔色を 崩さない

私のもっとも  好きな タイプ

 

 

 

「嬉しいわ  あなたと 結婚したら

少しずつ  お仕事を してお返しするわね 」

 

「そんな、、、いいんだよ」

 

 

 

男は 私との結婚を  夢見て

至福の笑みを うかべて

私を 抱きしめる

 

 

 

 

キャッシュカードから 降ろしたての

現金を 受け取る時

私は 歓喜に  胸  躍らせる

 

 

なんて 楽しい ゲーム かしら

 

 

 

 

そして 私は 用のなくなった 男を

闇へと いざなった

 

 

それは 飲み干した ペットボトルを

踏みつけて  捨てるように、、、、

 

 

 

誰だって

 

いらなくなったものは 捨てるでしょ

 

 

 

最後に  夢を  見せて

あげたのよ

 

 

 

何が   悪いの   ?

 

 

 

 


電話

2009-10-19 23:01:49 | 妄想バナシ

 

 

 

 

夕方 いつものように 犬のお散歩にでかけた

電話ボックスの前を通りかかると

急に電話が 鳴り始めた

 

 

 

周りを見渡しても 人影もないし

知らぬふりして 通りすぎようとしたが

いつまでも 鳴りやまない 電話を 見かねて

 

 

私は 電話ボックスに入り

受話器を あげた

 

 

 

「もう バイト 終わったの?」 

 

、、懐かしい  声

、、聞き慣れた  声

 

 

「え、、、Yくん?」

 

「なんだよ   あらたまって!   おまえから かけてきたんだろ
 オレも今日は レポート提出ギリギリ間に合って疲れたよ」

 

 

私が 短大で、
Yくんは ちょっと離れた大学に行った
当時 大好きな彼だった

 

会えなくなった分

 

 

いつもバイトが終わってから
こうやって 公衆電話から 彼の家に電話をかけていた

 

 

「あ、、ぁ、、そうなんだ、」

 

 

何十年ぶりに聞くYくんの声
私は受話器をぎゅっ と耳に押し付けた

 

 

 

「あ、、それでさ」

 

「え、、、なに?」

 

 

「この頃   会えないし  さみしい思いさせて ごめんな

いつも、ちゃんと言って、、って言ってるだろ

今日は、、言うよ」

 

受話器の向こうで、ちょっと息がはずんでる

 

 

「好きだよ」

 

 

 

 

「あ、、そろそろ10円玉 なくなるだろ 

 気をつけて帰れよ」

 

 

 

電話は切れた

 

 

 

しばらく、

 

呆然と   

受話器を  見つめた

 

 

 

そろそろと  電話ボックスから 出てから

 

 

ふと、、

かばんの中からおさいふを 開いた

 

 

 

80円、、、

当時 いつも決まって 80円を電話ボックスに入れた

 

 

 

私のおさいふの中から

きっちり  80円が  消えていた

 

 

 

 

 

それから

 

2か月が経ち

 

お正月を 迎え

 

友達の年賀状で

 

 

 

Yくんが 10月に

 

亡くなったことを

 

知った

 



 

 


Under   World

2009-09-25 23:39:41 | 妄想バナシ

 

 

 

今日も 長い一日だった

 

女優として脚光を浴び始めたのは
3年前

 

それから 瞬く間に 大女優の座に
登りつめた

 

現在 ドラマ 3本 CM 5本 テレビのレギュラー
番組も数本 抱えて 多忙な日々を過ごしている

 

 

今日もドラマの撮影で神奈川のとある場所へ 
朝早くからロケバスで移動した

見慣れない景色を眠い目をこすりながら
ぼんやり見ていた

 

田舎の町並みに自転車をこぐ
中年のおばさんがいた

多分子供も手が離れた頃 カラオケでも行くのかな
鼻歌なんか歌っちゃって 
お気楽そうだわね、、、

 

 

 

「メイサ   今のうちに 台本に目を通して 」

マネージャーに言われて
ふと  我に返った

 

 

 

帰宅したのは 午前1時ちょっと過ぎ

 

 

マネージャーの車を降りて
セクュリティーの万全なマンションに吸い込まれ
34階の自宅のドアを開ける

 

いつものように
ハイヒールを脱ぎ捨て
なだれ込むように ベッドに うつぶした

 

 

オフとったのは、、いつだっけ

 

 

まるで 心を休める日など 一日もない

 

 

たまに 数時間の空きのある時間さえ
マネージャーに エステや ジムへと
追いやられる

 

 

誰が見ても 惚れぼれする美貌や
プロポーションは 
まるで私の意識外のところで
作られていた

 

 

体はいつものように鉛みたく重たかったが
何故か 今日は頭の芯がさえていた

 

 

のろのろと起き上がると

ジョーゼットのワンピースを脱ぎ捨て

もう何年もはいたことのないジーンズをはき
髪をくしゃくしゃに丸めて 帽子に押し込み
サングラスをかけて
マンションを飛び出した

 

 

 

「新宿へ」

とタクシーに告げた

 

行き慣れた 広尾や六本木には
行きたくなかった

 

 

幾多の人種が混ざり合い 不調和音が
頭をつきさすような新宿歌舞伎町界隈

「きれいなねぇちゃんだね、、一杯飲もうよ」

酔った男に絡まれながらも
心は少し 浮きたっていた

 

 

 

赤提灯 に、「真澄」と書かれた 小さな居酒屋の
のれんをくぐった

店内は たばこと焼き鳥とアルコールのにおいが
充満し、それはもやのように私を包む

 

とりあえず カウンターに腰をおろすと 
店主らしき人に
「お一人ですか」と聞かれた

 

「え、えぇ  うんと、、ジンフィズ頂ける?」

「あ、、うちはビールと焼酎と日本酒くらいしかおいてなくて、、
そんな洒落た 飲み物は、、、、」

「うん、、わかった   焼酎でいいわ」

 

 

店内はサラリーマンや若いカップル、ホスト、そして
学生のコンパだろうか
にぎやかな声が沸き立っていた

 

店主は一人の私を気遣って いろいろと話かけてくれた

 

「最近は 不景気で常連のお客さんで週3回くらい
見えてたのに週1になっちゃったり、、、きびしいですよ」

「あ、、そうですか、、」

 

「お客さんはお綺麗だけど、、OLか、なにか?」

 

そんな話をしていると
後ろから 若い女の子に

 

 

「メイサさんでしょ?」 と声 かけられた

 

「え?」

 

「今ね みんなでカケ してたんですよ
私は絶対  青木メイサだっていうのに
みんなはこんなとこにいるワケないじゃんって
私が勝ったら 今日はみんなのおごりなんですー
ね、、メイサさんでしょ?」

 

 

サングラス越しに見る女の子は 得意気だった

 

 

私は いきなり、、現実に足をひっぱられた

 

 

やがて 店内がざわつき始めた

「青木 メイサだ」

 

 

私はお財布から1万円札を数枚出し
店主に渡して 店を出た

 

 

結局  

私が安らげる 場所なんて 

この世にはないのね、、

 

 

 

とぼとぼと重い足取りで歩いていると

「人生代行業」

と書かれた 小さな小屋が目に止まった

 

 

私の人生を誰かが  代行してくれると言うの?

私は   私から   開放されると言うの?

 

 

そろそろと カーテンを開けて

中覗き込むと

 

黒いビロードの服を着た女の人が

私を見て 微笑んだ

 

 

 

「いらっしゃい   お待ちしておりました

 メイサ様   」

 

 

 

ジャンジャン      ~~~~完~~~~~

 

 

 

 

 


人生代行業

2009-09-17 23:33:21 | 妄想バナシ

 

 

 

友達と飲み歩いて 「じゃあね 」と別れて
鼻歌まじりに、飲み屋街を歩いていると

「ちょっと  ちょっと  そこの お姉さん 」
(おばさんだったかな!)

呼び止められた 方を振り向くと

 

 

怪しい 小さな小屋の 入り口に

「人生 代行業」

と書かれた看板と 

 

黒ずくめのビロードの服を着た
女性が そこから細い指を立てて
私を呼び止めていた

 

 

「あなた  人生  楽しい? 」

 

「え、、人生   」

 

そりゃ、、楽しいといえば、楽しいし
楽しくないといえば、楽しくない
まぁ、、平平凡凡といった人生

 

「ちょっと 話だけでも聞いていかない?
決して 損はさせないから、、、」

 

 

終電には、まだ時間もあるし、、

 

私は差し出された 小さな椅子に腰掛けると
黒づくめの女性は 小屋のカーテンを閉めた

 

「いい話があるのよ  あなた、、
こんな人になれたら いいな、、って人いない? 」

 

小さなろうそくがほの暗い小屋の中を
ゆらゆら照らし 女性の目がほのかに光った

 

そりゃ、、いいなぁ、、あの人 って思う人は
いるけど、、

 

 

「1000万円でどう? 」

 

「1000万円って ?」

 

「実はね  私には ある特殊な能力があって
人の人生をすり返ることができるのよ
今までのあなたの人生は、抹消して、
あなたのなりたい人の人生がそこから始まるの」

 

 

「ええ、、、、!!私が、、、抹消!」

 

「あ、、でも 大丈夫よ
あなたの今後の人生は、私の方で責任持って
代行させるから、、」

 

「え、、、そんなぁ、、 それは心配で、私の後の
人生はほかの人になんか任せられないわ、、」

 

おっほっほ、、、何言ってるの!
あなたはその時はもう、その時はすでになりたい人に
なってるのよ、、あなたの事なんか全くの他人になるの
心配はいらないわ」

 

 

う、、、うーーん、、、それにしても

1000万円、、、高っっっ

 

「まるっきり なりたい人生になるのよ

安いもんじゃない、、、

じゃなければね、、、こんなものあるの、、」

 

 

「500万円で、、、」

 

「500万円で、、あなたの人生の やり直したいところから

始める、、、

そんなコースもあるけど、、、

どうする、、」

 

 

500万円で、、、、どこからでもいいの?

結婚する前なら相手も変わるのねぇ、、

 

 

ろうそくの揺らめきと女性の黒いビロードの光沢
覗きこむような瞳に
酔いが加速する  思考回路

 

 

しばらく  考えた 後

 

「じゃあ、、、、」

 

そう言って 
私は 女性を 見つめ返した

 

、、、、、、、続く、、、、、、、、

 


 



 


Lonesome    Woman

2009-08-30 00:16:45 | 妄想バナシ

 

 

余談ですが、団塊くんが秋田に行っていたとき
お花を出荷してる友人から、出荷用のトルコ桔梗が
大きなダンボールで送られてきました

 

あまりにもの多さに とりあえず バスタブに入れてみました
その花の甘い香りと花の美しさで、、
またまた、、まりもの  妄想が、、、
                          

 

 

ここは代々木上原にある
小さな カウンターバー

お店を開いて もう10年近く経ったっけ、、

 

いろんなことがあった けど 女捨て
一人で切り盛りしているうちに
常連客もつき、そこそこの 生活が
できるように やっと、、なったところ

 

10年の間に お客さんの顔ぶれも
ずいぶんと変わっていったわ

 

10年来   気がつくと 私のそばに
いてくれたのは  Sさんだった

 

私がお客さんとデュエットしている時も
カウンターで静かに微笑んでいた

いじわるなお客さんがからんできた時は
さりげなく お客さんをたしなめてくれた

 

 

そんな Sさんが 最近 少し沈みがちだった

 

私の話はよく聞いてくれるのに
自分のことをめったに話さないSさんが
珍しく ヘネシーの ダブルを
飲み干していた

 

お客が引いて 二人きりに なると

Sさんが、私を見つめて 言った

 

 

「結婚 しないか 」

 

「え、、、」

 

 

 

何度

この言葉をお客さんの口から
聞いただろう

 

 

ある時は そっと耳元でささやくように
ある時は酔いつぶれたまなざしをふいに
向けられて、、、、

 

 

でも 私

 

 

そんな言葉を
鵜呑みにして 喜ぶほど

もう若くなかったし、

男の言葉を 信じるほど

ウブでも なかった

 

 

 

「結婚 しないか 」

 

 

ふいにSさんに 言われた時

 

「そうね  うれしいわ 」

 

と、いつものように、おどけた顔をして

ほほえんでしまった 私

 

本当は、、、

泣きたい くらい 嬉しかったのに、、

 

 

Sさんは  そんな私の 顔を 見て
淋しげに うつむいて 店を出ていってしまった

 

 

これで  いいのよ

 

 

私は 自分に言い聞かせて いると

 

Sさんは 再び お店のドアを 開けた

 

手に 大きな トルコ桔梗の花束をかかえて

 

 

 

「また 来るよ 」

 

静かに ほほえみ 
そう 言い残して  去っていった  Sさん

 

 

 

私は
トルコ桔梗の花束と
「結婚 しないか 」という言葉に
抱きしめられて 
しばらく  茫然と  していた

 

 

家に帰り 花束を バスタブに
うかべると

 

 

花は 悲しい くらいに
艶めきたっていた

 

 

トルコ桔梗の 花言葉は

「希望」

 

今日も  一人

小さな バーに

明かりを ともす 

 

 

 

ジャンジャン