余談ですが、団塊くんが秋田に行っていたとき
お花を出荷してる友人から、出荷用のトルコ桔梗が
大きなダンボールで送られてきました
あまりにもの多さに とりあえず バスタブに入れてみました
その花の甘い香りと花の美しさで、、
またまた、、まりもの 妄想が、、、
ここは代々木上原にある
小さな カウンターバー
お店を開いて もう10年近く経ったっけ、、
いろんなことがあった けど 女捨て
一人で切り盛りしているうちに
常連客もつき、そこそこの 生活が
できるように やっと、、なったところ
10年の間に お客さんの顔ぶれも
ずいぶんと変わっていったわ
10年来 気がつくと 私のそばに
いてくれたのは Sさんだった
私がお客さんとデュエットしている時も
カウンターで静かに微笑んでいた
いじわるなお客さんがからんできた時は
さりげなく お客さんをたしなめてくれた
そんな Sさんが 最近 少し沈みがちだった
私の話はよく聞いてくれるのに
自分のことをめったに話さないSさんが
珍しく ヘネシーの ダブルを
飲み干していた
お客が引いて 二人きりに なると
Sさんが、私を見つめて 言った
「結婚 しないか 」
「え、、、」
何度
この言葉をお客さんの口から
聞いただろう
ある時は そっと耳元でささやくように
ある時は酔いつぶれたまなざしをふいに
向けられて、、、、
でも 私
そんな言葉を
鵜呑みにして 喜ぶほど
もう若くなかったし、
男の言葉を 信じるほど
ウブでも なかった
「結婚 しないか 」
ふいにSさんに 言われた時
「そうね うれしいわ 」
と、いつものように、おどけた顔をして
ほほえんでしまった 私
本当は、、、
泣きたい くらい 嬉しかったのに、、
Sさんは そんな私の 顔を 見て
淋しげに うつむいて 店を出ていってしまった
これで いいのよ
私は 自分に言い聞かせて いると
Sさんは 再び お店のドアを 開けた
手に 大きな トルコ桔梗の花束をかかえて
「また 来るよ 」
静かに ほほえみ
そう 言い残して 去っていった Sさん
私は
トルコ桔梗の花束と
「結婚 しないか 」という言葉に
抱きしめられて
しばらく 茫然と していた
家に帰り 花束を バスタブに
うかべると
花は 悲しい くらいに
艶めきたっていた
トルコ桔梗の 花言葉は
「希望」
今日も 一人
小さな バーに
明かりを ともす
ジャンジャン