井沢満ブログ

後進に伝えたい技術論もないわけではなく、「井沢満の脚本講座」をたまに、後はのんびりよしなしごとを綴って行きます。

ドラマの中の「悪人」やっと書けるようになった?

2017年11月04日 | ドラマ

何十年、脚本を書き続けているのに悪人を登場させたことがない。
フィクションもおおむね、書き手の投影であり、どんな
卑劣な人間を書いたところでそれは私の中に微弱に潜む卑劣さを
拡大して人物を造形しているわけだが、悪人だけは
そもそも書くという発想がなく、今まで来た。

おそらく、私は悪人ではないのだ。
善人とまでは言わぬが、悪の要素が相当少なく
悪く言えばお人好しなのだろう。

漫画家に印税を相当額抜かれたり、信用していた人に何千万を持ち逃げされたりという
経験はあるのだが、それでもどこかとても性善説なのだろうと
思う。

頭のなかでは「絶対悪、絶対善」という存在はなくただ「縁」により
どちらかの側面が出る、という考え方なのだが実感的には
どうも性善説。これが誤りであることは頭では解っているのに、
自分を相手に反映させてしまうので、自分以外の人も皆お人好しだと無意識に
思ってしまう。

帯の種類の苧麻という言葉を忘れ、過去に書いたことがあるので自分の名を
入れて検索していたら、

          慶祝 井沢満さん生誕72周年

というゴチックタイトルの記事にぶつかり、ありゃまたネット犯罪者2人組があること、ないこと
罵詈雑言書き散らしてるな、と斜め読みしたら本当に私の誕生日を寿(ことほ)いでくださっていて、
男性ブロガーさんだった。

と脇道に逸れたが、今書いているドラマでやっと悪人を登場させられた、というのも
ネット犯罪の被害を受けたから。

何千万持って行かれようと、人を悪として規定できなかった私が、ネット犯罪者
たちに対しては、本当にこの世には悪い人間というものがいるのだなぁ・・・と
しみじみと思い知ったしだい。
嘘をつくことじたいは驚きもしないが、相手の家族やお子さんなで貶めてまで平然と
していられるその感性が私などの想像の埒外で、本気で驚かされた。
そして何より不気味なのが、その動機が判然とせぬことなのだ。
お金の抜き取りや持ち逃げは金銭欲で、わかりやすい。
許す根拠も持てる。ネットの捏造ゴシップも妬み他の
動機でこれも理解の範疇内。

しかし、今回のネット犯罪の2人組が何に対して怒っているのか
さっぱり解らず。誰が何をしたから、怒り狂っているのか判然としない
不気味さ。いまだに私は、なぜ自分がターゲットになったのか
判らない。他の被害者の方々もおそらく、内心きょとんとして
いらっしゃるのではあるまいか。

担当の刑事さんには、犯人を刺激したらまたやらかすのでログで触れないで、と
ご注意を受けているので、言及するのはたぶんこれで最後。
年内で、警察に渡すための加害ブログ証拠作成作業も完了すると思われるのだが、
果たして刑事立件されるのかどうか、ネット犯罪に対しては結果を出すのに
呆れるくらい時間がかかるようだ。

執筆中のドラマでは悪人が初めて登場し、しかもそれは
ネットと現実生活におけるストーカーで二人登場という・・・・今回の事件に
おそらく内面の何かが触発されてのことであろうと思われ、物書きは
不運もエネルギーの素、転んでもただでは起きぬのが性根なのだと、
改めて思ったしだい。

ネット加害者の薄気味悪さは、たとえば追い越し運転で人二人を
殺したのに現場検証のとき、あくびをしていた男の不可解さに
通じるものがある。理解の範疇外なのだ。

悪人初登場の井沢満ドラマを、どうぞお楽しみに。

とプロデューサー氏にも言ったら、「うーん。それぞれちゃんと人間として存在してるんで、
悪人とまでは言えないと思います」という感想だった。

そう言えば、私の書いた「悪人」には客観的に納得できる(許容はできなくても)動機がある。

 

 

誤変換他、後ほど。

 


3 コメント

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Unknown (ピピ)
2017-11-04 13:49:07
先生、お疲れ様です。
新しいドラマ、興味津々でお待ちしております。

最近の世の中はやっぱりおかしくなっているのでしょうか…薄気味悪い事件が多くて気が滅入ります。犯人も気味が悪いし、ちょっとしたことで人様に手をかける。すぐに精神鑑定とかマスコミも言いはじめる。そんな人がもし身近にいたらと思うとゾッとします。

推理小説もよく読みますが、昔の探偵小説と言われた頃のものがやっぱり一番!と個人的には思っております。トリックの豪華?なこと。夢中で時間も忘れて読み続けたものです。
最近のものも決してつまらないものばかりではないのですが、何だかスッキリしない…途中でつまらなくなって、一応結末は知りたいので読みはするのですが、何回も読み返しはしません。昔のものは犯人が分かっていても何回も読んだり致します。密室専門とかアリバイ崩し専門みたいな作家の方もいらして、面白かったなあ。
売れると多作になって、ドラマ化もされ、そして、どんどんつまらなくなっていくような気がします。

現実を反映しているのならば、世の中が殺伐としているということなのでしょうか。どこでどう思われるか分からない、変な人が多いから気をつけてね、などという事を家人によく言うのですが、おかしな世の中になったものです。

ダラダラと駄文で申し訳ありません。
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お返事 (井沢満)
2017-11-04 21:49:42
ピピさんへ


 IT
という映画も、変質者と狂気の物語で怖くもなく、後味の悪い映画でした。
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悪人ですらない。 (ケイシ)
2017-11-05 06:05:47
いつもありがとうございます。
車をパーキングエリアの車道に止めている事を注意された事に腹を立てて追いかけ回した結果、娘さん二人を持つ親御さんを死なせた阿呆の屑野郎や、自殺志願者を集い酒と睡眠薬を飲ませて性的暴行(強姦)をした後に9人も殺害した男など、性善説とか通用しない連中がこの世には
いるのが現実です。 韓国朝鮮人は信じられない犯罪を起こす者が多いですが、昨今は日本人の中にも上記のような犯罪を起こす者も増えています。
悪人正機と親鸞は言いましたが、その悪人の範疇すら入らないような輩がいる事は、よくよく気をつけなければならない事だと想います。
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