漫画家を目指す人へ

漫画家を目指す人へ参考になれば。

精神力ゲージと努力と執着

2013-03-18 21:38:49 | ☆雑談

私は最近、ここに「精神力ゲージの管理」という話を書くつもりでいました。

というのは、担当さんの話を書いていたら、あれこれ思い出してきて、皆さんの参考になるかな?と思ったので。

でも、何度か書こうとして、書きあぐねてしまいました。別にそんなたいした内容を書くつもりではなかったのですが…。

 

これも自分語りなので、興味がない人は読まなくて大丈夫です。

 

最初に書こうと思っていたのは、要するに「あまり無駄なところに、無駄な労力を、無計画に費やすと、精神力を早くに使い果たしてしまうので、そのへん少しは考えた方がいいよ」というようなことでした。

これは私の自分自身の経験からなのですが、私は志望者生活の最後の方に、唐突にネームが描けなくなってしまったんです。あまりに唐突だったので、自分でも原因がわからなくて悩みました。

何を描こうとしても、そのネームの先にボツしか見えない。頭を動かそうとすると、担当さんの否定する言葉がすぐに頭をよぎって進められない。じゃあせめて手だけを動かそうとすると、石のように動かない。それでも無理に動かそうとすると、ただ涙だけがずっと流れてしまう。でも何が悲しいのかはわからない。(今思えば多分悲しいとかではなく純粋にストレス)

今まで好きだった作家さんの漫画を読んでも、何も頭に入らない。感動したセリフもただの文字の羅列にしか見えない。じきに漫画本をみただけで涙が出るようになり、本屋に入るだけでめまいというか…頭の奥が真っ赤に点滅して目が見えなくなるような症状に襲われるという状況に。この状況は半年~症状によって一年以上続きました。私が本屋に普通に入れるようになったのは、本当に最近です。

 

なぜこういう状況になったか、今となっては、主な原因は2つだと思っています。

まずは、無駄に時間をかけすぎたネームが連続してボツになっていたこと。

人間…動物でもそうなのですが、「努力が報われない」体験だけを積み重ねてしまうと、努力自体ができなくなります。たとえ自分の生死がかかっていても。「学習性無力感」という名前がついているそうですので、興味のある方はぐぐってください。

もう一つは、担当さんがついて、ボツもたくさん体験して、今までより自分のネームを厳しい目で見ることができるようになったこと。…たぶん。

今までは欠点が見えないまま作ることができていたネームですが、今は欠点が前もって全部わかる。わかるけれど欠点を改善する方法がわからない。でもダメなことだけはわかる。だから着手もできなくなってしまった…のではないかと思っています。ここだけ見ると成長したように見えるのですが、私は手を動かさないと何も作れない人間なので、手を動かせないことには、結局何もできない…ので、どうにもならず…。

 

両方後付けの理由です。当時は意味不明でした。

 

この2つの原因は、なんとも皮肉というか微妙です。

まず一つ目の理由ですが、端的にいうと「無駄な努力をしすぎたせい」とも言えます。

そして2つ目の理由ですが、「無駄な努力を回避しようとしすぎるせい」とも言えます。

その2つが重なって描けなくなっていたわけで、いったい何をやっていたんだ自分??という感じです。

 

で、私は「精神力ゲージ」として、「無駄な努力を回避」することによって、この「学習性無力感」にハマらないように…というような話を、もとは書くつもりでした。

でも、書こうとすればするほど、「無駄な努力って何だ??」「無駄か無駄じゃないか、志望者レベルでどうやって事前にわかるの??」「新人から努力を選別していたら、成長もできないしチャンスもつかめないのでは??」という疑問が湧いてしまい…。

そもそも、「その程度のボツで描けなくなるようなメンタル弱い人間は、どうやっても漫画家なんかなれないんじゃないの?」という大前提に立ち返ってしまう。

ので、「うーん??」となっていたのです。

 

そして、今まで興味がありつつ、手を出せないでいた羽海野チカ先生の「三月のライオン」を読みまして、「やっぱり、単純に自分のメンタルが弱かっただけだな!」という結論に達しました。(影響受けやすいから…)

 

ただ、「じゃあメンタル弱い人はやっぱ無理ねー」という結論では、あまりにミもフタもないので、ここを読む人に何かしら参考になることは?と考えたときに、一つ思い当たったのは、

「執着と努力を取り違えない」ことでした。

 

私が最初の担当さんにえらい目にあわされたという記事を書きましたが、あの担当さんにあたっている間、私の神経は常に「いつ返事をくれるか」「どうしたら返事をくれるか」に向かってしまいました。

いくら漫画業界に疎いとはいえ、さすがに2ヶ月も3ヶ月も返事のこないネームに可能性があるわけがない、そのことに思い当たらなかったはずがないのです。可能性がないなら、返事を例えもらえても、そこにそれほど意味はない。なのに。

一応、そのときもただ待っているのではなく、次のネームは作っていたはずなのですが、たぶん本当に集中できてはいなかったでしょう。やっぱり「返事~返事~」とそこばかり気にしてしまっていました。

変な例えですが、「どう考えても脈がない冷たい恋人に、別れの一言をもらうために、必死でしがみついている」みたいな状況でした。

肝心なのはそこじゃないだろう、という。

 

あと、時間をかけたネームを連続してボツったときも同じです。そのボツったネームたちは、途中からうすうす自分でも「これはダメかも」「なんかいまいち」というのは見えていました。

それでも、他にもっと良いネームも思いつかないし、ここまで時間かけちゃったし、ずっと考えてたから、キャラにも愛着湧いたし、なんとか世に出してやりたい…、といううだうだした気持ちで、何ヶ月もひきずってしまったわけです。それを何回か…(学習能力ないですね…)

今となってははっきり欠点だと思うのですが、私は自分のネタやキャラには執着をもつタイプで、一度少しでも気に入ってしまうと、もうほかのネームになかなかいけませんでした。そういう人で成功する人もいるとは思うのですが、新人の場合は、どちらかというと「ハイ次!ハイ次!」と、常に前に向かって、どんどん新しいネタを作っていける人の方が絶対に有利です。別に前のものを捨てなくてもいいのですが、ちゃんと切り替えられることが大事です。

 

担当さんにひきずられたときも、自分のネームにひきずられたときも。

肝心なことは一つ、「面白いネームを作る」ことだったはずです。

その芯に、本当に真正面に向かい合って、純粋にそこにだけ集中していたか、というと、自信がありません。「なぜこんな担当にあたってしまったのか」という担当さんを恨む気持ちや、「ここまで時間をかけたんだから、たぶんこのネームは面白くなっている(はずなんだ)」という、執着からくる思い込みとか、そういう「なんかgdgdしたもの」で頭をいっぱいにして、「面白いネームをつくる」という、なによりもの自分の責務から、目を背けていたのではないか。

と、今となっては思います。

 

努力は自分を成長させます。しかし、ただの執着や未練は、結局精神ダメージとして跳ね返ってきます。 

これが、精神力ゲージをがっつりと無駄に削ってくれるわけです。

 

脈のない担当さんにすがりついたり、見込みのないネームに執着していては、いけなかったのです。

「ダメなもんはダメ!!」と自分に厳しくジャッジして、気持ちを切り替えて、今自分がやらなければならないことを、もっとストイックに考えていたら、「精神力ゲージ」はもう少しもったのではないでしょうか。

「無駄な努力」はないと思いますが、自分が今やっていることが本当に「努力」なのか。ただの「執着」「未練」ではないのか。

本当に、今自分がやらないといけない「努力」は何なのか。

そのあたりは、別にいつも考えていなくていいですけれど(疲れるから)、なんか迷宮に入り込んだと思ったら、少し考えてみてもいいと思います。

 

なお、別に執着や未練でgdgdするのも、必ずしも悪いとは思わないです。というか、そういう気持ちまったくなしに漫画家志望をやるのは無理でしょうし。

でも、そんなものばかりで精神力ゲージを削られ過ぎるのも無駄なので、自分である程度自覚して、軌道修正もした方がいいかなと思います。

精神力ゲージは誰にでもあります。大きさに差こそあれ。気にしすぎて動けなくなったら意味がありませんが、私のように突然底をついても困るので、「そういうものがあるんだー」くらいに思っておくといいと思います。

 

ところで「三月のライオン」ですが、そういう夢とか勝利とかに向かっていく気持ちを丹念に描いている漫画なので、漫画家志望者さんにおすすめです。有名な漫画なのでもうご存知の方も多いと思いますが。

作者の方が前作の「はちみつとクローバー」についてのインタビューだったか?で「持つ者と持たざる者」というようなことをおっしゃっておられましたが、そのテーマがよりストレートに出ている漫画です。


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