漫画家を目指す人へ

漫画家を目指す人へ参考になれば。

食っていけないと死んでしまう

2012-03-11 23:35:35 | ■漫画家志望の進路の考え方

具体的な進路について書く前に、まず、非常に基本的なことを書きます。
あなた方は途中で死なない限り、必ず大人になります。


一生遊んで暮らせる富豪の生まれでもない限り、大人になったら最低限、自分で自分を養う程度はお金を稼ぎ続けなければなりません。
もし、結婚して子供もほしいなんて思っているなら、もっともっと稼ぎ続けなければなりません。

いつまでも、親の買った家に住み、親の買った服を着て、親の作った食事を食べ、親にお小遣いをもらうわけにいかないのです。
いつか、自分で「食っていかないと」いけないのです。

 なぜこんな当たり前のことを書くかというと、こんな当たり前のことをわかっていない人がいるからです。

小中学生なら仕方ないかもしれませんね。まだピンとこないでしょう。

でも高校生以上はダメですよ。高校卒業時に選ぶ進路がダイレクトに人生にかかわってきますから。

夢があるならその夢が具体的にはどういった種類の仕事なのか、ちゃんと職業として成り立っているのか、それだけで食べていけるのか、世間に需要はあるのか、その仕事につくにはどういった学歴や経歴、能力が必要なのか、具体的に調べて、具体的に行動しなければなりません。

もちろん、その後も二十代前半くらいまでなら、まだなんとか修正可能ですけど、でも、高校卒業時に誤った進路にいくと、ぐんとその後の人生大変になってしまいますので、「自分が何をして、どうやって、食っていく」のか、真剣に考えましょう。


さてさて、そうやって「食っていく」ことを真剣に考えた場合にですね、絵や漫画という職業は、昔から「食っていけない」仕事の代表格です。
みなさんも、親に「そんなもんで食っていけるか!」と漫画家への道を反対されたこともあるのではないでしょうか。
若い皆さんの多くは「食っていけないかもしれないけど、でもなりたいんだ!」と思うことでしょう。
私もそうでしたし。

でも、「食っていけない」というのはつまり「餓死すること」です。
もちろん今の日本では、よほど運が悪くない限り、餓死することはありませんが、ホームレスや生活保護に堕ちる可能性は十分あります。

でも、そんな状況になってしまったら、当然漫画なんて描き続けられません。
画材だって買えませんし、出版社への交通費もないでしょう。

なので「食っていけないけど漫画家でいる」というのは不可能なんです。
当たり前ですよね?

でも、こんな当たり前のことを、考えない人は多いです。
考えたくないからです。

でも、考えたくないことこそ、きっちり考えないと、とりかえしがつかない年齢になってから、「なんであのときちゃんと考えておかなかったんだろう」と後悔するハメになりますので、ご注意を。


「食っていけないけど漫画家になる」というのはつまり、「自分では食っていけないから、誰か他の人に面倒みてもらいながら漫画家になる」ということなんですね。死ぬ覚悟がないならね。
その「誰か他の人」って、ほとんどの場合親ですよね。女性の場合は結婚相手ってことも多いですけど。・

「自分の面倒はどうせ親がみるんだから、自分は好きなことだけやっていたいです」と言ってるようなもんなんで、そりゃ親は反対しますよね。堂々とニート宣言するようなもんですから。

かといって、「食っていけないけど、食っていけなくなったらその場で自殺するから、漫画家になりたい」と言われても、(そんな言葉はまず嘘でしょうけど)それはそれで、親は反対するでしょう。

なので、みなさんは、親に「食っていけない」といわれたら「食っていけなくてもなりたい」なんて、考えなしの甘えたことはいわないようにしてください。

「死ぬ覚悟で食っていけるようになる!」か、
「漫画で食っていけなくても、他に食っていける道を自分でちゃんと用意しておく!」か。

この二択です。

皆さんが、漫画家を目指す場合、このどっちかちゃんと選んでください。

どっちにも覚悟もリスクもありますし、どっちも大変です。

 

ああ、一応・・・

「周囲の人にどれだけ迷惑かけても、とにかく自分はやりたいことしかしない。周囲の人なんか全員犠牲にしてもいいから自分の夢をかなえたい」

これはこれで覚悟の一つです。
知人に、自分のやりたいことをやるために、奥さんだけに働かせている男とかいます。奥さんは毎晩深夜まで働いています。
奥さんは子供もほしかったけど産休や育休をとったら家計がもたないため、子供とか全部あきらめたそうです。
そういうことをしてくれる人がいて、自分がそれでいいなら、そういう人生もあります。

ただ、やっぱりあまりおすすめはしたくないですね。人として推奨できる生き方ではないですし、リスクが大きすぎるので。

なので、このブログではこの選択肢には触れませんよ・・・。


絵に関係した仕事につきたい ・・・?

2012-03-10 09:46:03 | ■漫画家志望の進路の考え方

 ここを読むような人は、漫画なりイラストなりが好きな人がほとんどだと思いますが・・・・・はっきり言っておきます。

世の中、「絵に関係した仕事」で、「安定した普通の待遇の仕事」というのはそう多くはありません。


ほとんどの仕事は安定していなかったり、待遇が低かったり、死ぬほど残業があったり、安定していないうえに待遇も低かったりします。
漫画家、イラストレーター、デザイナー、アニメーター、画家などはほとんどそんな仕事です。


漫画家、イラストレーター、画家

自営業ですので、安定とは正反対です。漫画家として食べていけるようになるのがどれくらい大変かは他に書いていますが、実はイラストレーターや画家のほうが食べていくのは相当に大変です。

画家はわかりますよね。正直私はこの人たちがどうやって食べてるのかさっぱりわかりません。だいたいお金持ちの家の人が多いですね。

イラストレーターですが、イラストだけで食べていける人って相当に少ないです。ほとんどの人は、他の仕事と兼業しているか、親や配偶者に生活の面倒をみてもらってるか、という感じですので、「漫画家かイラストレーターに」とか考えている方は注意してくださいね。どっちに転んでもまともに食っていけるような仕事ではありません。

 

デザイナー、アニメーター

このあたりは一応就職する仕事ですので、相応の学歴があり、実力次第では、とりあえず会社員として安定はします。(ただ、アニメーターは確かほとんど契約社員で、歩合制だったと思います。しかも基本給がほとんどなく、完全歩合というような形態で、福利厚生もたいていなかったような・・・・ということならば、もうそれはほとんど社員ではないかも・・・。)

私はデザイナーの経験はありますが、こちらはまともな待遇の会社はかなり少ないうえ、待遇がまともであっても、過労死するレベルの残業がある会社がほとんどです。私や友人の多くは身体を壊すか、壊す寸前までいって退職することになりましたので。それくらい残業しても、残業代が出ないのも普通です。(泣)。産休や育休などもとれないところが多いので、女性の場合結婚したり子供がほしいなら、そこで終わりになることが多いです。

アニメーターは調べてみればわかるとおもいますが、20代の年収が100万程度、30代で200万程度ということなので、到底自活できません。30代までずっと実家にパラサイトできる人しか続けられないでしょう。30代でも自活できないレベルの年収って、かなりキツいです・・・。もう結婚や子供どころの話じゃないです・・・。

 

 

もちろん、「まともな待遇の仕事」がまったくないわけではありません。そうですね、大企業のデザイナーなどは少なくとも安定して待遇はよいはずです。残業は死ぬほどあるかもしれませんが。

しかし、そういう「楽しくてよい仕事」は倍率もすさまじいです。

かなり上位の美大・芸大の中でもトップクラスの人間くらいでしょうかね。そういうところに就職できるのは。

なにせ倍率1000倍だったりしますから。

漫画家として成功するのと同じくらいの競争率です。

当然すさまじい画力や、職業によっては、高い学歴や実績も必要です。何より運が必要です。

普通の人が普通に真面目に頑張っただけでは、そんな仕事には就けません。

漫画家と同じく、才能や運に恵まれた上に、努力でき、行動力もある、「一部の特殊な人」しかそういう仕事には就けないのです。

今は普通の人が、別に楽しくなくてもせめて「普通」(そこそこ安定して、ちゃんと自立して生きていける程度の収入のあるような)の仕事に就くことすら困難なのですから。

ゆとり教育の弊害なのかもしれませんが、高校生くらいになってもまだ、「たいした努力もせず、才能がなくても、自分にはたのしくて、やりがいがあって、安定して、普通程度の待遇の仕事に就く権利がある」と信じ込んでいる人がいるようですが、残念ながら今はもうそういう世の中ではありません。

たいして努力せず才能もない人間は、つまらなくて待遇も悪い仕事にでも必死でしがみついていかないと生きていけないような世の中なんです。

そのことをよく覚えておいて、中高生の、今ならまだ間に合うこの年齢のときに、必要な努力をちゃんとしておいてください。

 

なぜこんな夢のないことを言うかといいますと努力もせず才能もたいしてないのに、安易に絵に関係した楽しい仕事に就けると思いこんで、安易にゲームやイラスト、漫画などの専門学校に進んでしまう人がいるからです。

これは専門学校側も悪いんですけどね。ほとんどの人はそんな学校に通ったって、フリーターかニートにしかなれないという事実を教えてくれませんから。専門学校の出してくる就職率って嘘ですから気をつけてくださいね。フリーターや家事手伝いまで就職にいれているような学校もあるようですし。

「漫画専門学校について」に書いてますが、漫画やイラストは専門学校に行ったってほとんど無意味です。
ゲームは就職する仕事なので、学歴として使える分多少はマシですが、それでも学年トップレベルの人間ですら思うような就職はできません。
なんとなく入学したような人は、まずまともな就職はできません。

高校から何百枚もデッサンや色彩構成をこなし、予備校に通い、同じレベルの学生にもまれながら、すごい倍率の美大や芸大に合格して、そこでさらに高レベルの環境で切磋琢磨してきた、美大生や芸大生だって、そういう仕事にはほとんどつけないんですよ。

金さえ出せば誰でも入れるような専門卒の人間が、そういう仕事に就けるわけがないってことくらい気がつきましょう。

なお、別に「専門卒だから、そういう仕事につけない」わけではないです。

専門卒でも立派な漫画家もイラストレーターもゲームクリエイターもいます。

私も活躍中の漫画家さんやイラストレーターさんで専門卒の方のコメントを見たことが何度かありますが、たいていそういう方たちの専門学校に対するコメントは「友人ができた」「人脈ができた」です。なかにははっきり「無駄だった」と言い捨てた人もいますが・・・。

とりあえず、専門学校のおかげで「画力があがった」「漫画が上達した」というような「その職業に必要なスキルが身についた」というコメントは見たことないです。

みなさんは専門学校のHPなどで、そこの卒業生のクリエイターの名前をみて、「自分もここに通えばこういう風になれるのかな」と期待してしまうかもしれませんが、そのクリエイターさんは専門で技術を磨いたんじゃありません。自力で磨いたんです。自力で磨けない人は専門に行っても無駄です。

私が要注意だと思うのは、そういう、「自分では何もしないくせに、とにかく学校に頼ろうとする」タイプの人です。


特に家が裕福でない方は気をつけなければなりません。
家庭環境に恵まれていないということは、いざというときバックアップがないということです。
何が何でも「食っていける」ようにならないと、本当に将来生きるか死ぬかという目にあいかねません。
生活保護だっていつまで持つ制度かわかりませんし。

だいたい、昔から、絵描き業なんてものは、働かなくても遊んでくらせるようなお金持ちの坊ちゃん嬢ちゃんが、親に高額な学費を出してもらって美大芸大で優雅に学ぶか、あるいは、貧乏でも才能と実力と根性に溢れた天才が、のたれ死ぬ覚悟で自分の腕一本をもって、世間に実力を認めさせ、パトロン(自分の才能を見込んでお金を出してくれるスポンサー)を自力で見つけて成り上がるか。


そういう、「ある程度才能ある金持ちか、命がけの天才か」どっちかしかなれないような職業なんです。

金持ちでもなく、天才でもなく、大して才能があるかもわからず、命がけというほどの覚悟もないような人間が、「好きだから」というだけの理由で気軽に目指していい仕事ではないのです。

個人的に、絵に直接関係していて、「普通の人」でもある程度の努力でなれて、安定してまともな待遇で働けるのは、学校の美術教師くらいだと思っています。
私は美術系の大学を出ていますが、まともな働き方ができているのは美術教師と、絵に関係ない仕事に就いた人だけです。

ただ、美術教師だって採用試験に合格するにはそれなりに大変です。友人が二人採用試験に合格していますが、1~2年は専用の予備校に通って勉強漬けでした。そのうえ相当な倍率の面接を潜り抜けてのことです。

漫画家やイラストレーターとして成功するのに比べたら簡単というレベルの話であって、「誰でも努力しなくてもなれます」ということではありません。

 

ですので、本気で絵に関係した仕事に就きたいなら・・・

中学生くらいから、具体的にどういった仕事に就きたいのか、きちんと定めて、高校生ではその仕事に就くためのちゃんとした道筋を調べ、漫画家なら持込を開始、イラストレーターならコンペなどに応募、美大や芸大の予備校に通い、デッサンや色彩の基礎能力を身に着ける、海外で活躍したいなら英語、学歴が必要な仕事なら勉強して必要な学歴を目指す。

そういった努力をしてくださいね。

高校3年にもなってから「何か絵に関係した仕事につきたいのですが、デッサンとかできないので美大とかは無理です。イラストレーターの専門学校に行こうと思っていますが、イラストレーターの就職率はどれくらいですか?」なんてお馬鹿な質問をしないでくださいね。
(この質問のどこがお馬鹿かわからない人は、絵の道は諦めて堅実な道を行ってください)


こういう人は「何か絵に関係した仕事」なんかに就けませんからね。やりがいとか、楽しさとか、そんな贅沢を仕事に求めちゃいけません。何でもいいからとにかく堅実な仕事に就ける道を必死で探ってください。高3にもなるまで、まともな努力をしてこなかった自分が悪いのです。

どうしても絵をあきらめきれないなら、ちゃんと堅実な仕事についたうえで、両立して目指してください。

今まで努力してこなかったんだから、せめてその程度の努力はしましょう。


一般的な働き方あれこれ。

2012-03-08 19:45:34 | ■漫画家志望の進路の考え方

まだもうちょっと、一般的な仕事の話です。

このあたりを知らないと、いろいろと心構えができませんので。

 

まず、働いてお金を稼ぐにはいくつかの形態があります。


1.会社員(正社員)・公務員


民間か国かという違いはありますが、組織に属して働き、その組織からお金をもらいます。
基本的に無期雇用であり、クビになったり会社が倒産したり自分から退職しない限り、定年退職まで勤めることになります。

公務員であれば、基本的に解雇されませんし、正社員は、解雇するにはそれなりの「正当な理由」がいります。

なので、2.や3.の非正規雇用に比べると、かなり立場は強く守られています。

そして、これらの働き方には実質的な年齢制限があります。

まず、公務員は実際に年齢がはっきり決まっています。職種や自治体などによって違いますが、だいたい25歳くらいかな?教師は40歳までの県があったような気がします。

正社員も未経験でなれるのはだいたい20代半ばまで・・・もっと言えば、ほぼ新卒(大学など最終学歴となる学校を卒業したとき)までです。かなり限られたときしかなれないのです。

これが今の日本で、安定して働き続けるのが大変な理由です。20代半ばまでのごく若い時期に、一生安定して働けるかどうか、かなりの部分が決まってしまうのです。


2.派遣社員・契約社員

いわゆる「非正規雇用」と呼ばれる雇用形態です。
派遣社員の場合は、まず派遣会社に登録し、派遣会社から別の会社へ派遣されるという働き方です。
契約社員の場合は、働いている会社と直接雇用契約を結びますので、その会社の社員です。

どちらも有期雇用であり、あらかじめ決められた期間勤めることになります。
会社側と合意して、期間を延長すれば長く勤めることもできますが、会社側にて期間延長しないと判断されたら、そこで終わります。

これらの非正規雇用がニュースなどで問題視されているのは見たことがあると思います。何が問題なのかは、以下のような理由からです。

・会社側の都合でいつ切られるかわからない
・退職金や年金、保険などの正社員にはある待遇がないことが多い
・全体的に正社員に比べて賃金が低いことが多い
・正社員に比べ責任ある仕事を任されないのでいつまでもスキルが身につかない
・正社員に比べ経歴として評価されない
・若い人材を求める企業が多いため、ある程度以上の年齢になると仕事に就けなくなる

これらが重なった結果、非正規で働き続けると、低賃金だから貯金もできない、スキルも身につかない、経歴もつかない、そのうえ年齢が上がると仕事がなくなってしまうので、取り返しがつかない年齢になってから、何もない状態で無職になってしまう。ということになります。
今、非正規雇用のままで三十代、四十代を迎える氷河期世代の多くが、将来生活保護世帯になると考えられています。

こういった働き方はもともとは、「学生や主婦が家計の補助的に働く」働き方だったのです。
なので、この働き方だけで、一生生きられるような制度になっていませんし、家族を養えるような働き方でもありません。

しかし、日本全体が不景気になり、企業がお金のかかる正社員をたくさん雇うことができなくなってしまいました。
その結果、この「一生働けない働き方」で一生働かなければならない人が増えてしまったのです。
私は会社勤めをしていますが、どの会社も「どうやったらお金がかかる正社員を減らせるか」ということをとても考えています。
なので、この傾向は今後も減らないでしょう。

こういう働き方の良い点としては、正社員ほどの責任を求められませんので、正社員に比べて柔軟な働き方ができるということです。
昇進などがない代わり転勤などもありませんし、働く時間や日数も正社員に比べて融通がききます。
一家に他に大黒柱になる人がいて、家計責任を負わない立場なのであれば、こういった働き方を敢えて選択し、家事育児や趣味などを優先した生き方をするというのもありではあります。

なので、漫画家をめざしながら働く人は、こういった雇用形態や次のフリーターで働く人も多いです。


3.フリーター
正確にはフリーターという職種はありません。
アルバイトやパートタイムをして生活を成り立たせている人のことを言います。
こちらも非正規雇用ですが、2.の派遣社員や契約社員より、さらに待遇が低く不安定であることが多いです。

その分さらに柔軟な働き方もできますが。

こちらも問題点は2.の派遣社員、契約社員とほぼ同じです。
学生や、ごくごく若いうちの数年間やるのはいいと思いますが、この働き方のまま一生ゆくのは相当に厳しいと思います。
一般に30代以上からは求人も激減します。20代くらいまでしか通用しない働き方だと思っておく必要があります。
かといって、20代後半くらいになってから正社員になろうと思っても、かなり難しいので注意が必要です。


4.自営業
漫画家はこれにあたります。個人事業主ですね。
他にもイラストレーターや飲食店経営などもこれです。
農家や漁業などもここに入ることが多いと思います。
お医者さんや弁護士さん・税理士さんなども、自分で病院や事務所を持つ人は、これになります。

上の1から3の雇用形態は、誰かに雇われて、自分を雇った相手からお金をもらう仕事のやり方です。
しかし自営業は、誰かに雇われる仕事ではありません。

飲食店の店主を想定してみたらわかると思いますが、基本は直接お客さんからお金をもらう仕事です。
お客さんが来てくれたらその分お金をもらえますが、お客さんが来てくれなければお金はもらえません。
お客さんがずっと来てくれなかったら、そのお店は潰れます。
これは、クビにならない限り、会社に行っておけばとりあえずお給料がもらえる会社員とは大きく違います。

会社員ならば、(会社によりますが)新入社員として入社したら、研修があったり、上司や先輩がいて仕事を教えてくれたりします。
自分の成長にあわせて仕事を割り振ってくれたり、失敗したらフォローしてくれたりします。
相談もできますし、大事な判断は上司にまかせることができます。何かとんでもない大失敗をしても、最終的に責任をとるのは社長です。
いろんな部署がありますから、たとえば技術者として就職したら、仕事をとってくるのは営業部がやってくれますし、お金のことは経理部がやってくれます。
「有休」というものもあるので、病気などで休んでも、その分お給料が減ることもありません。

しかし、自営業は最初から自分が社長みたいなものです。
誰も仕事を教えてくれませんし、仕事をとってきてもくれません。
細かい事務的なことや、お金のことも全部自分でやらないと、誰もやってくれません。
失敗したら全部自分に跳ね返ってきます。誰も責任をわかちあってくれません。
怪我や病気で仕事ができなかったら、その分のお金は当然もらえないどころか、「仕事を頼んだのにちゃんとやらなかった」と、次回から仕事がこなくなったり、悪い評判がたって他からも仕事がこなくなったりします。
(仕事において、怪我や病気が言い訳として通用することは少ないです。「自己管理ができていない」「危機管理ができていない」といわれます。どんな状況であっても、仕事を完遂することを求められます)

漫画家もそういった種類の仕事です。
詳しくは、「漫画家の収入」に書いたとおりです。

とにかく「自分次第」なのが自営業です。
才能があり努力もし運もある人なら、大金持ちになれるかもしれませんし、うまくいかなければ無収入。ホームレスやら生活保護行きです。
漫画家は、会社やお店を始めるのと違い、初期費用がかからないので、失敗しても借金地獄に陥らないのは幸いですが。

また、自営業の問題点?としては、上記のように成功するもしないも自分の努力と才能次第、というところ以外に、会社員ならある福利厚生がないというところがあります。
漫画家の収入のところに書いたように、保険や年金、退職金などですね。三倍稼がなければならないと書いたとおりです。
ま、皆さんが老後を迎える前にはいろいろ変わっているでしょうし、年金自体なくなっているかもしれませんが…。


というわけで、自営業は、本当に自分だけが頼りの仕事です。

私がこのブログのあちこちに、自分で何もできない・しない人は漫画家に向いてないとか、他力本願な人はダメとか書いているのはそのためです。
「何もしなくても誰かどうにかしてくれる」「学校とかに行けばなんとかなる」「よくわからないけど多分なんとかなる」というような考え方の人が、自営業者なんかになったら、かなりの確率で大失敗してしまいます。

だって、誰も何も絶対なんとかしてくれませんから。自分をなんとかするのは自分だけです。

むしろ、悪意をもった人を頼ってしまったら大変なことになってしまいます。
実際に売れっこの作家さんでも、マネージャーなどにお金のことなど全部まかせっきりにしていて裏切られて一文なしになったとか、そういう話もききますしね・・・。

 


こういうわけで、早くに投稿をした方がいいのです

2012-03-08 17:39:43 | ■漫画家志望の進路の考え方

どうでしょうか。
海外を視野に入れると別ですが、今の日本での働き方はだいたい前の記事に書いた4つです。
全部読んでみると、働き方はたくさんあるようで、結局一生ある程度安定して稼ぎたいなら、1の正社員・公務員になるか、4の自営業者として成功し続けるか、どちらかしかないことがわかるでしょう。

そして、このうち1.の正社員・公務員は、前の記事にも書いたとおり、実質的に未経験でなれるのは二十代前半くらいまでです。そのあとはぐっと厳しくなります。

なぜ大変になるかと言うと、日本の会社は24,5歳くらい以上の年齢の人に対しては「正社員としての実務経験」をとても重視するからです。

これは、ある程度大きな会社のホームページの「採用情報」を見てみればわかります。「新卒」と「キャリア採用」のどちらかしか選べない会社が少なくありません。このキャリアというのが実務経験ですね。まあ名目は「中途採用」「経験者採用」などいろいろありますけど、中身を見ますとたいていは実務経験がある人というようなことが書いてあります。

「新卒」でもないし「キャリア」もない、という人は応募すらできないのです。

重要なのは「正社員としての」という部分です。フリーターや派遣社員としての仕事は評価されないことが多いです。(でも書かないよりマシですから履歴書には書いておきましょう。特に長く続けた仕事は書いた方がいいです)

なので、「新卒で正社員にならない」という選択をした人間は、その後正社員になりたくても、「経験ないから雇ってもらえない」→「雇ってもらえないから経験積めない」の悪循環に入ってしまいます。
大学生が留年までして「新卒」で就職しようとするのは、このおかしなシステムがあるからなんですね。

なお、あまり社会人経験のない人が誤解しがちなのが「資格をとれば就職できる」という考え方ですが、日本では、「資格だけ」で就職できるような仕事はほとんどありません。

資格が無駄とは言いませんが、ある程度以上の年齢になると、あくまで「実務経験がある」という前提があればこそです。


例えば、経理の実務経験がある人が簿記1級を取得していれば、それは武器になります。しかし会社員経験一切なしの人が、簿記1級だけもっていても、新卒や第2新卒ならともかく、それ以上の年齢では就職は厳しいでしょう。

看護師、教師、公認会計士、弁護士、公務員などの難関資格なら別ですが、これらは簡単にとれる資格ではありません。専用の予備校や専門学校に通ったりして、数年がっちり勉強する必要があります。また、これらも資格があっても年齢や経験でハネられることはありますので、資格があればいつでも就職できるわけでもありません。

「就職できるような資格」は、それ相応に取得するのが大変ですし、またそれだけで就職できるのは結局若いうちということです。
よく資格関係の会社が、「資格をとれば、就職・転職できる!」ような感じでCMしてますが、通信教育などでちょこちょこ勉強した程度でとれるような資格は、ほとんど就職の役にはたたないと思っていていいと思います。

 

実家が自営業をやってらして後を継げばいいとか、結婚して専業主婦(夫)になるから就職する必要はないとか(これも最近では難しいですね。専業主婦(夫)を養えるような人は減ってるので)、そういう人は別ですが、そうでないなら、日本の就職事情が非常に厳しいことを知っておいてほしいと思います。

ですので、年齢制限のところにも書きましたが、親が衣食住を保証してくれる学生の間に、できるだけの準備をしておき、この「新卒」というタイムリミットが来る前には、漫画の道をどう進むべきか、ある程度の回答を出せるようにしておくのが良いと思います。

そのためには、中高生くらいから漫画を描き、高校生くらいには投稿や持込ができるようになっているのが望ましいです。
漫画家のステップアップのところに書いたとおり、デビューだけでは食べてゆけません。連載がとれるまでを目安として時間を計算してください。
本格的に持ち込み生活に入ってからデビューまで、早い人で1~2年、遅い人なら4~5年以上かかります。
そこからさらに、連載をとれるまでとなると、さらに数年かかります。(数年かかれば誰でもとれるわけではありません。ほとんどの人はとれないまま漫画業界を諦めます)

私も、初投稿から受賞して幸先はよかったものの、その後悪い意味でスゴイ担当さんにあたったり雑誌が潰れて再デビューしたり何だりと、デビュー後ごたごたがたくさんありまして、漫画家を目指し始めてから結局「これは漫画で生計をたてるのは無理だな」という判断がつくまで約10年かかりました。

たとえば20歳から目指し始めて、10年も判断に時間をかけていたら、結果が出たときすでに30歳です。
私はもともと会社員で、会社を辞めずに目指していたので問題ありませんでしたが、もしフリーターや無職だったら、30歳から人生立て直すのは相当に大変です。しかし、これが14,5歳からなら10年かけても24,5歳です。まだまだ取り返しはつきます。

私が急げ急げとあちらこちらで急かしているのはそういうわけです。

私はいわゆる氷河期世代で、まともな正社員として就職できなかったばかりに苦労している人をこれでもかというくらい見ているので、どうしても正社員、就職にこだわった記事になっていますが、皆さんが大人になるころには(まあ、今もうすでにそうなんですけど)正社員なら安心という世の中ではなくなっていると思います。
でも、だからといって就職せずに自力だけで生きられる人もやはり多くないとは思うので、世の中の情勢を見ながら、自分がどうやって生きていくのかよくよく考えてゆくとよいと思います

ここを読んでいる皆さんはいわゆる「ゆとり世代」の方がほとんどかと思います。ゆとりゆとりと揶揄されるようになってしまいましたが、「ゆとり教育」はそもそも、それまでの詰め込み暗記中心の教育方法を見直し、「自分で考え、自分で生き抜く力をつける」のを目的として導入されたのです。
結果として真逆の方向に向かってしまったようですが、教育のせいにしていても皆さんの人生は良くはなりません。

氷河期世代の人たちも、「社会が悪い」「会社が悪い」と嘆きましたが、結局誰も助けてくれないままでした。現在においては「このままだと生活保護世帯になるので、その社会負担はどうするか」なんて議論になり、もう完全に見捨てられています。早い段階で社会を生き抜く厳しさに気づき、そういう中でどうやったら自分が生きていけるか真剣に考え、自分で自分をなんとかした人だけが、なんとか今無事に安定して仕事を得ているのです。

なお、今からの世界はゆとりどころか、大競争時代に入ると思います。ネットなどのインフラの進歩のおかげで、急速にグローバル化しているからです。
グローバル化というのはいいことではあるのかもしれませんが、世界中の企業、世界中の労働者が同じ土俵でライバルになるということでもあります。
皆さんが就職するときのライバルは、同じ日本人の大学生だけではなく、世界中の学生、労働者なのです。これだけライバルの幅が広がるのですから、それは大変な競争社会です。

大人はあまり当てにせず、「自分で考え、自分で生き抜く力」これを自分で身につけていってください。


タイムリミット

2012-03-07 20:00:28 | ■漫画家志望の進路の考え方

ようやく、具体的な進路の話です。


漫画家を目指す人は、進路をどう考えていいか困っている人も多いのではないでしょうか。
高校や大学は絵に関係した学校がいいのか?
就職はするの?しないの?
漫画家になれなかったらどうなるのか?
・・・などなど。

漫画家という仕事は、どこまでいっても安定しない仕事です。
デビューしても、連載とっても、単行本が出ても、アニメ化しても・・・、連載打ち切りになって、だんだん人気もなくなって、単行本も絶版になって、どこの雑誌でも描けなくなったら・・・漫画家としては生きていけません。
漫画で一生分稼ごうと思ったら最低2~3億くらい稼げないといけませんし、漫画が売れなくなってから就職しようたって、今の日本では新卒を逃すと就職が非常に難しいので、そのとき30代とかになっていたらもう無理です。

かといって、漫画家などの水商売は、将来のことを考えすぎても難しいです。
どこまでいっても安定しない仕事を目指すのに、どこまでも安定を求めていたら、そりゃ無理ですから。
そんなに安定したいなら漫画家なんかにならずに公務員にでもなれという話になります。
なので、最終的にはどこかでリスクをとって漫画一本に絞らなければなりません。
(もちろん、ずっと他の仕事と兼業のままで続ける人もいます。ただ月刊誌や週刊誌の連載作家になりたいなら、かなり難しいでしょう)

その「どこか」をどう設定するのかが重要になります。

ここは当然、「ここで、こういう基準で判断すれば間違いない」という回答はありません。
リスクが低いと思うタイミングを選んだつもりでも、あとから大変なことになってしまったり、逆に高いリスクをとって思い切って飛び出したらそれがよい結果になることもあります。
どんな人生、どんな仕事でもそういうことはありますが、漫画家のような仕事は特にその差が強く出ます。
そこは人間万事塞翁が馬ということもあり、誰かが正解を出してくれるものではありません。

漫画家を目指す人は志望者もプロも、この問題についてはみな真剣に悩み、自分の環境や性格、実力や可能性、自分の生き方をどうしたいかなどを、あわせ考えたうえで、決定していっています。
なので、あくまで考え方の一例として参考にしてください。

 

なお、周囲のプロになった人では、以下のタイミングで漫画一本に絞る人が多かったです。

1.連載がとれたら
2.初単行本が出たら
3.デビューできたら

これ以前の段階で漫画一本に絞るのは危険だと思っていいでしょう。
まあ中には、「担当がついた」段階で仕事を辞めてしまった剛毅な人もいますし、もちろんデビュー以前に漫画家を目指すといって就職しなかった人も多いのですが・・・・その「就職しなかった人」のうち、デビューまではかろうじて行き着くことはできても、ほとんど漫画家として食べていけていないことを考えると「危険」はやっぱり「危険」ですね・・・。


また、「漫画家を諦めたほうがいい年齢」ですが・・・。
みなさん、あまり考えたくないでしょうが・・・。
基本的に、「漫画家の年齢制限」のところで書いたとおり、いつまで目指したって本人の自由です。

ただし、日本では正社員経験がない人間が、正社員として雇用される可能性があるのは、二十代半ばくらいまで。前の記事に書いたとおりです。
そこでも相当にキツいですが、それを超えると、コネでもない限り本当に厳しくなります。

ですので、漫画と心中する覚悟がないなら、24~5歳の段階で上記の1~3くらいの段階に達していなければ、漫画家を諦める必要はないですが、いったんは、正社員就職を目指すなり、公務員試験を受けるなり、「他に確実に生きていける手段」を見つけておいたほうがいいと思います・・・。