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漫画家を目指す人へ参考になれば。

盗作その他著作権上の問題

2012-04-12 07:12:21 | ■これって「パクリ」?

インターネットが普及し、検証が容易になったせいもあってか、必要以上に「パクリ」に過敏になっている人がいるように思います。

しかし、漫画に限らず創作というのは、既存の作品の影響はまぬがれないものです。
誰も見たことがない完全に新しいもの、というのは逆に読者には受け入れられないでしょう。
なので、「既存作品の影響を受けてはダメ」などということはないのです。

でも、その作家オリジナルの創作部分より、「既存作品に似てる」部分の方が勝ってしまうと、「なんか見たことある」「マネじゃないか」となってしまうわけです。

もちろん「偶然似てしまう」こともよくありますので、どこからが「盗作」なのかの線引きは微妙で、極端な話、裁判で争って決めるような場合もあります。

なので、志望者の段階からあまり厳密に考える必要はないのですが、一応、決める基準としては、

・読んだ人が元ネタを特定できるかどうか(もちろん元ネタを知っている人が見た場合です)

だと思っていいと思います。

「このシーンて、あの漫画の●巻のあのシーンそのまんまだよね」とズバっと言われてしまうようなら、ちょっとヤバいという感じですね。

とは言え、それが「特に際立った個性のない、よくあるポーズ・モノ」なら、たとえ見た人が「このキャラってあの漫画のあのキャラに似てない?」と思ったところで、必ずしも盗作やパクリになるわけではありません。

例えば「ツインテールにセーラー服の女の子」なんてキャラは山のようにいますので、そういうキャラを描いて、たまたま既存のキャラに似てるからといって、盗作疑惑をかけられることはありません。(もしかけられたとしても言いがかりなので気にしなくていいです)

でも、「ツインテールにセーラー服で、額に炎のタトゥが入っていて、背中に日本刀を背負っていて、足元はゲタで、異次元を行き来する能力があって、美少女に見えるけど実は男で40歳」くらいになると、「偶然全部一緒になる」という可能性は限りなく低くなります。

そうなると「パクリじゃん」と思われるかもしれません。

「どれくらい特殊で、どれくらい似ていたらマズいのか」というのは、ケースバイケースです。まあネット上でたたかれることにはなっても、トレスなど客観的に完全アウトの証拠がとれるようなものでない限り、法的に問題になることは滅多にないと思いますので、個人的にはカブりを必要以上に気にして、自分の描きたいものを抑えてしまうよりは、多少カブる可能性があっても、おもしろい作品を描く方を優先した方がいいと思います。

気にしてもカブるときはカブりますから!

絵やキャラデザインについてはともかく、ストーリーについては自分じゃなかなか判断が難しいかもしれませんが、個人的には、意図的に盗作しようとしない限り、訴えられるほど似るケースはほとんどないと思いますが・・・
ただ、特に新人のうちって、自分の好きな作品の影響が自分の思ってる以上に大きく出てしまうことはあるので、心配なら「自分が影響受けてるな」と思う作家を知っている友達に、ネームなどを読んでもらうといいかもしれません。

 


以下、ダメだと思われるもの。(私は専門家ではないので、参考程度にどうぞ)

・他人が著作権を持つ絵・写真などをそのまま、あるいはちょっと加工して使う。

基本ダメです。自分の手で描くか、写真は自分が撮ったものなどを使うようにして、人の物を勝手に使うのはやめましょう。

・他人が著作権を持つ絵・写真からの完全なトレス・模写。

「見た感じ似てる」程度の物は大丈夫です。
例えば野球やサッカーのシーンのポーズなどは、どうしたって似たような構図、似たようなポーズになります。トレスしていたらダメですが、多少似てるくらいは問題ありません。

ただ、一般人が撮れない特殊な光景・物の写真等の場合や、かなり個性的な構図を持つものの場合、「完全なトレス」でなくとも、その著作物を元に作成したというのが客観的に見て明らかである場合には、訴えられる可能性があります。

私の知っている例では、かなり特殊な構図の写真を、トレスではないにせよ、忠実に再現した画家が写真家から訴えられたケースがあります。

また、漫画家では、あるファッション雑誌からモデルのポーズ、服装、小物に至るまでそっくり同じ絵を描いた作家が(訴えられたかはさだかでないですが)問題になって、雑誌社がお詫びを出すとかいう騒ぎになっていたのを覚えています。

・商標登録されている商品

たとえばディズニーやサンリオのキャラクターを勝手に作中に描くのはダメです。
ある漫画家さんが、家にあったぬいぐるみをモデルにしてぬいぐるみを描いたところ、それが商標登録されているキャラクター商品で、編集部側で急遽許可をとらなければならなくなった、ということがありましたので、身近な商品をモデルに描く場合は、念のためデザインを少し変えて描くようにするといいでしょう。

・既存企業のロゴマークなど

ロゴやシンボルマークは商標となりますので、そのまま描くのはダメだと思っておいた方がいいと思います。
ただ、かなりありふれたデザインで、本当に偶然似てしまうようなケースについては、問題にはならないかと思います。

・人権などに拘る表現の問題

私が担当さんから注意されたのは、「人でなし」「人」という言葉でした。これは言われた相手がロボットだったので、実際に人ではないというジョークで使ったのですが、それでもダメでした。
差別表現につながるとのことです。

あと指や腕、足などが多い少ないなども、実際に障害がある方への差別表現になりかねない、ということでNGであることがあるようです。

身体については、漫画ではいろいろ変わった設定のキャラを描くことが多いので難しいと思いますが、よくある対処法?は「人間ではない」ことにしてしまうというのが多いです。
例えば天使や悪魔、妖精や妖怪、宇宙人なら、どんな容姿であっても「架空の生物」なので、「人間に対する差別」になることはないという理由です。

不法行為

当たり前っちゃ当たり前ですが・・・。最近特に厳しいのは煙草でしょうね。知人の漫画家さんで、見た目明らかに成人済みのキャラクター(40代くらいの男性)に煙草を吸わせるカットを予告カットとして出したところ、少女漫画なので煙草NGになったという話を聞いたことがあります。

「どう見てもオッサンなのに!!」と本人も驚いていました。(よくある、設定はオッサンだけど見た目は未成年に見えるからとかではなく、見た目もちゃんとオッサンのキャラです)

ちなみに作中で吸うのは良いらしくて、何が基準だかよくわかりませんでした。これは編集部によって違いますので、あまり過敏にならなくてもいいと思います。担当がついたら担当さんに確認するようにすればいいでしょう。


あと当然ですが、特定の人種、職業、ジェンダー、民族、国籍、また病気や障害を持つ方などを、それだけを理由に蔑むような表現はダメです。

これは、著者にその意思がなくても、読む人がそう受け取ってしまったらアウトという難しい部分もあります。普段からニュースなどをよく読んで、どういったことが差別につながるのか、自分の中で感覚を磨いておくと良いと思います。

有名なのは「燃えろおにいさん」という漫画で、教師から用務員になったキャラを、「用務員になった」という理由で、生徒がからかったり見下したりする表現があったのですが、実際の用務員さんからクレームが出て、雑誌回収騒ぎになりました。

敢えて問題提起として描きたい場合などは、プロになってからは編集部に相談、志望者のうちは気にせず描いていいと思います。(NGなら編集部がNG出します・・・・たぶん)

個人的には、差別問題などはハレものを扱うように触れないようにするより、著者に著者なりの考えがあるなら、それをきちんと表現してゆくことも、漫画家というか表現者としては、必要なことだと思います。

 

こういった、著作権や表現の問題は、考え出すとキリがないこともあって難しいですが、志望者のうちはあまりこういったことばかりに気を取られるより、まずはのびのび自分が描きたいこと、表現したいものを優先して描いてほしいと思います。