■ネーム
「ネーム」という言葉には二通り意味がありまして、「セリフ」と「絵コンテ的なもの」両方を指します。
これは文脈などから判断するしかありません。編集さんが「ネーム見せてよ」と言えば「絵コンテ的なもの」ですし、「ネームが多すぎて読みづらいね」と言えば「セリフ」のことです。
ここでは後者の「絵コンテ的なもの」について説明します。
このサイトで「ネーム」という言葉が出てきたらこっちだと思ってください。
ネームは「漫画の設計図」などと言いますが、下書きの下書きのようなものです。実際にコマを割って、セリフを入れ、だいたいの絵の構図やキャラの表情なども入れます。
漫画の面白さはここで決まります。とても重要なものです。
逆に言えば、いくら面白い設定やプロットができていても、これを作るまではその漫画が本当に面白いのかどうか、よくわからないということになります。
「設定はできている」「アイデアはある」「あらすじは決まっている」などと豪語する志望者がいますけど、いや、そこまではけっこう誰でもできるんですよ。そんなものがあっても漫画家にはなれません。重要なのは「ネームにしたときに面白いかどうか」です。最低でも、脚本や小説の形としてきちんと仕上げないと、その「面白い設定やアイデア」が「面白い物語になるか」はまったくわかりません。
漫画家志望の人は「とにかくネームの形にするまでは、何もわからない」 ことを覚えておきましょう。
担当編集がついた後は、たいていこのネームの段階で打合わせをすることになります。
私の経験だと、プロットや口頭で、担当さんに「こんな話はどうでしょうか」と提案しても、結局「ネームにしてくれなきゃわからないから、とりあえずネームにして」と言われることが多かったです・・・。
ネームもとくに作り方などはなく、自分のやりやすいようにやればいいです。設計図ですからね。最終的に漫画がちゃんとできていればいいのです。
ただ、担当さんに提出したり、ネームコンペに出す際には、誰が見てもよくわかるように、きちんと清書し、絵もある程度まで入れるようにしましょう。絵をどこまで入れるかは、編集部や作家で全然違いますが、新人のうちは丁寧にやっておいた方がいいと思います。その絵でネームの判断をされることになりますので。
担当がつくまでは、好きなようにやってていいです。
私はフルデジタルで作業をしていますが、ネームが固まるまではアナログでやっています。(ネームの清書からデジタル)
ここまでは実際に手と紙でやらないと考えられないんですよね。
■ネーム製作工夫あれこれ
漫画の命ともいえるネームですが、それだけにここでつまづき、苦労する人は多いです。
これさえできれば、あとはぶっちゃけただの「作業」ですからね。漫画で苦労するのは、とにかくココなんです。
プロットでがっちり決めてしまう人にとっては、ネームも「プロットをコマ割るだけのただの作業」らしいのですが、私はプロットをほとんどすっとばすという作業工程だったため、ネームが実質のストーリー構成でした。
今まで漫画を描いたことがない人は、頭の中でなんとなくストーリーやキャラができていても、実際コマを割って漫画を描こうとすると、なぜだか描けなくて、そこで諦めてしまった人も多いのではないでしょうか。
コマ割のところにも書きましたが、「コマを割って漫画が描けない」場合は、単純に漫画という表現手法になれていなくて、コマでストーリー表現する方法がわからないという場合と、ストーリーをちゃんと固め、さらにそのストーリーをエピソードに落とし込むという作業ができていない場合があります。
「ストーリーはできているけど、なぜかネームは描けない」人に多いのは、「あらすじしかできていなくて、具体的なエピソードが作れてない」パターンだと思います。
たとえば「最初にAさんとBさんが出会う」というストーリーが決まっていたとしても、「どこで、どういう状況で出会う」というエピソードが決まっていなければ、当然コマ割なんかできません
「学校への登校途中、Aさんが遅刻しそうになってあわてて走っている。そこへ急に子犬が飛び出してきてAさんがつまづいて転びそうになるところを、Bさんがとっさに現れて抱きかかえるようにして助ける。しかしAさんはBさんを痴漢と間違えて思いっきり殴ってしまう」…と、とりあえず、そういうところくらいまではエピソードを決めていないと描けません。
私はエピソードをつくる作業も、実際にコマに割りながら考えたり、プロット(メモ)に戻ったり、ネームとプロットの間をいったりきたりしながら作っていました。
プロットでがっちり固めてしまう人もいるようですが、私は実際にコマを割ると、そこからキャラが勝手に動いたりするため、プロットだけで固めてしまうというのはできませんでしたね。
このあたりのやり方も人によるので、自分が一番やりやすい方法を選んでください。
さて、ネームについてもいろいろなやり方があるようです。
○一枚で全体把握型
大き目の紙に、ざーっと全ページ分細かく区切って、全体の流れを決めてゆくというものです。
ある漫画家さんが、高校生ですでに連載をしていたのですが、授業中にノートに隠しながらネームを切れるという理由で、こういう方法を編み出したのだとか・・。
○ルーズリーフ型
私はこれですね。私の場合電車でもちょっとした待ち合わせや、待合時間などでもネームを考えられるように、A6の小さい二つ穴ファイル(100均で買ったA4ファイルをA6にカッターで切った)を使ってました。文庫本用のフリーサイズのかわいいカバーをつけてます。これでぱっと見はシステム手帳っぽいです。
ルーズリーフなので、ある程度入れ替えができます。
○そのまま下書き型
原稿用紙を原寸でコピーしたものをネーム用紙にして、そのまま下絵まで入れて、トレス台でトレスしながら直接原稿にしてしまうという効率がいい?方法。どうせネームって、新人のうちは最終的に清書するので、どうせ清書するならこういう形にすると時間短縮かもしれません。
上記わけて書きましたが、人によっては、まず一枚で全体把握して、そこからルーズリーフ型にして細かい構成をし、最後に原稿用紙大の紙に清書する、という全部網羅して作る人もいます。
やりやすいように、いろいろ工夫してみてください。