漫画家を目指す人へ

漫画家を目指す人へ参考になれば。

漫画専門学校について

2012-03-12 12:22:00 | ■漫画専門学校について

本来は、「進路の考え方」に入れるつもりだったのですが、こちらだけちょっと特殊な気がしますので、別にいたします。

なぜ特殊かというと、個人的にこういった専門学校は「進路」として選ぶべき学校ではないと思うからです。

 

まず、私は漫画関係の専門学校というものの存在自体、漫画家志望者に良い影響を与えていないと思っています。

それは、こういう学校ができてしまったばっかりに、「専門学校に行けば漫画家になれる」「漫画家になるための技術は専門学校などで学ぶもの」という先入観を、中高生の漫画家志望者に植え付けている感が否めないからです。
もちろんその先入観は間違いです。そんなことを考えている人がいたら、すぐ考えを改めてください。
理由は詳しく下に書いてますが、とりあえず18歳から学校で初めて学ぶのでは遅すぎます。

漫画の専門学校は、美容師や看護師、服飾関係の専門学校とはまったく性質が異なります。
美容師などは専門学校でしか得られない必須の技術や資格があり、業界内でも専門を卒業して就職する道筋がついていますので、これらの専門学校を「進路」として選ぶのは、そういった仕事を目指すなら当然の選択です。

しかし、漫画家はまったくそういう職業ではありません。
専門学校でしか得られない技術や資格はなく、専門を出て漫画家になるような道筋も一切ありません。
専門学校なんかに行ったって、「漫画家」という仕事には何も結びつかないのです。

プロになるつもりがなく、趣味で通うならアリかもしれませんが、だとしたら学費が高すぎます。300万くらいしますから。
また、趣味というからには「お金を稼ぐ本業」が必要になりますが、その本業はどうするつもりなの?という話です。

趣味にしかならない学校を「進路」として選んでしまったら、本業を得るための進路を進むことができません。将来無職です。

なので、「進路」としては考えられないのです。

本気で漫画家になりたいなら、通うべきは専門学校ではなく編集部です。

というか、専門学校に行こうとも、編集部に通わなければ漫画家にはなれません。(遠い地方の人は投稿中心になるでしょうが)

中高生が漫画家になるためにやっておくことは、専門学校を目指すことではなく、自分で漫画を描いて自分で編集部に持ち込むことなんです。
このことをよく覚えておいてください。


とにかく学校と名のつく組織に入って安心したいタイプの人や、周囲にお膳立てしてもらわないと何もできません!という人は早いうちに違う道にすすみましょう。漫画家に向いてません。

では、おすすめしない詳しい理由です。

 

1. 専門学校から漫画家になれた人はほとんどいない。

これがすべてですね。
これは専門学校のHPなどで実績を見るとわかると思います。
デビューすら、学年に数人いれば上出来ではないでしょうか?
漫画家志望者ばかり数十人集めれば、完全放置しておいてもそれくらいの人数は勝手にデビューします。
なので、学校はまったく関係なく、もともとデビューできる能力のある人だけがデビューしているというだけです。

学年に数人しかその職業に就けない専門学校なんて何の意味があるんでしょう。



2.専門学校で学べる内容は、ほとんど本やネットで独学できる。

 

今は漫画家になるための本やサイトは山のようにあります。

サイトをかたっぱしから見てまわり、本を数冊買って読み込めば、少なくとも漫画を一作仕上げるくらいの知識は身につきます。
本気の漫画家志望者なら小中学生くらいで、このくらいは済ませています。


18歳にもなってこのレベルのことを学校に行かないと学べないような人は、いろんな意味で漫画家になるのは無理ですよ…。

思い出してくださいね。「漫画家になるのは一部の特殊な人」です。
漫画家どころか小中学生の漫画家志望者が自力でできることを18歳にもなって「教えてもらわないとできません」という人が、そういう「特殊な人」なわけがないって、わかりますよね。

ちなみに、私がこういう学校のカリキュラムを見た感想がこちらの記事です。 

 

3.本やネットで学べないことは、持込やアシスタントなど「プロの現場」で学ぶのが一番早い。

実際にどのようにストーリーを組み立てるか、キャラをどう設定し、エピソードをどう作るか、演出はどうするか…そういう「知識」だけではカバーできない部分については、実際に自分で漫画を描いては編集部に持ち込んで批評してもらうというのを繰り替えすのが一番です。

専門学校の先生がほめてくれたって、編集部がOK出さないとデビューはできません。
だったら、最初から編集部に見てもらったほうがいいに決まっています。

持ち込みは(交通費以外)無料です!何度でも行けますし、一つの作品を複数出版社に見てもらうのもできます。(投稿は一社だけですが)
地方から上京しなければならない人でも、専門の学費よりはずっと安上がりなはずです。

たまに、専門学校のカリキュラムで「作品を編集部の人に見てもらえる」というものがあるのですが、なぜ自力で無料でできることを、学校に学費払ってやらなければならないのか意味不明です。

アシスタントも編集部経由で紹介してもらえますよ。もちろんある程度の実力は必要ですが、その程度までも自力でいけない人は専門通っても無理ですから。

「学校で教えてもらえるようなことは独学で学べる」し「独学で学べないようなことは編集部やプロの現場から直接学ぶのが一番早い」んです。


これを一人ではできません、という人は漫画家になるのは厳しいです。もう理由は書かなくてもわかりますよね。



4.最終学歴が「漫画専門学校」は、漫画家になれなかったとき就職するには非常に不利になる。

まず、認可されていなければそもそも学歴にならないので高卒です。
しかし、漫画コンテンツ関連など、多少でも漫画に関係した会社に就職する場合以外では、本当にない方がマシというくらい、使えない学歴です。そしてもちろん、「漫画に関係した会社の就職」なんてそれ自体ほとんどありません。

つまり、就職に大変苦労するということです。

なぜなら、私がここに書いているような「専門学校に行かないほうがいい理由」を、まともな会社の採用担当者なら見抜くからです。

履歴書に「漫画専門学校卒」とある時点で、お勉強ができない・する気がない人なのはわかります。勉強ができる子は絶対そんな学校行きません。

さらに漫画家なんて基本独学でなる職業であり、学校なんか行ってもほとんどの人がなれないことくらい、漫画業界の人間じゃなくてもわかります。なのにわざわざ親に大金出させて学校なんかに通って、挙句に結局漫画家にもなれなくて…というあたりから、独学で努力できず、かつ無知で、計画性がなく、漫画の実力や才能もなく、さらに親に甘やかされた人物である、というのが透けて見えます。

そのうえ「漫画家になれなかったから仕方なく」という理由でその会社を受けにきたというのももちろんバレバレです。

高学歴の学生が就職にあぶれているようなこのご時世、そんな人はなかなか採用されません。
それくらいなら「高校を卒業してから家計を助けるためにずっと働いていました」という人のほうが大分マシです。親の金で遊んでいた人間と、働いていた人間なら、そりゃ後者を選ぶでしょう。

就職しなくても生きていける人や、強力なコネがあってどうにでもなる人以外は、人生詰みかねないです。

 

5.上記のような学校なのにも関わらず、学費だけは300万ほどと短大並み・・・。

これ、本当にひどいと思います・・・。

ちゃんとした美術系大学と、年間でみれば学費ほとんど変わらないんですよ・・・・。


内容を考えると、せいぜい数十万でしょう。
一般的に専門学校の学費ってね、何に対して払うものかといいますと、就職するのに使える「学歴」「資格」ほぼこの二つですよ。
漫画家にはもともと両方不要ですので、「漫画家になる」という目的においては、専門学校はまったく無意味です。

じゃあ漫画家になれなかったときに使える学歴や資格がとれるかっていうと4番に書いたとおり、ない方がマシなレベルです。
もちろん、肝心の「授業内容」ってものがありますが、これも2番と3番に書いたとおり独学を上回るレベルとは思えません。というか、独学でこの程度も学べない人間は漫画家には向いてません。二年学校に通っただけでなれるようなお手軽な職業なら、世の漫画家は苦労しないです、ホント。

少なくとも300万もの価値は絶対ありません。

300万って大変なお金ですよ?あなたの親があなたの将来のためにと、一生懸命貯めたお金です。平均レベルの収入の人が貯めようとすると、5年以上かかる金額ですよ?

それを将来に何もつながらない、「趣味のお稽古」に遣うのはやめてください。
そんだけお金があるなら、いっそ、そのお金で生活できる間ニートになって、死に物狂いで24時間漫画に費やし、持ち込みに明け暮れる方が大分マシです。

 


6.やる気がある漫画家志望者は上記のようなことはわかっている。わかってない時点で漫画家になれる可能性は低い。

ここまで読んできてわかったかもしれませんが、そもそも漫画家になれるような「自分で努力できる人」は、専門学校に行きません。

自分で調べ、学び、練習し、漫画を描き、投稿し持ち込みし、編集部にもまれてきていれば、私が1~5番に書いてきたようなことは自分でわかります。
編集部とやりとりして、受賞だ掲載だというレベルにいれば、漫画家として生きていく大変さも身にしみてわかります。

だから、本気で漫画一本に絞る覚悟がある人間は、ひたすら漫画を描きまくり、持込とアシスタントに明け暮れますし、漫画家になれなかったときのことを真剣に考える人なら、学歴として使える学校に進むなり、就職するなり、現実的な道を確保します。

今まで自力でそういう努力をしてこなかった人は、何もしてないから何もわかりません。

独学で何をどこまで学べるか、自分の実力がどれくらいか、漫画家という道がどれくらい厳しいか・・・。わかろうとする努力すらしなかった人が安易に「学校に行けば漫画家になれちゃうかも」なんて甘い期待をしちゃうのです。

だから専門卒の漫画家はほとんどいないんです。

もちろん、たまにちゃんと努力してきたにも関わらず、専門学校に入ってしまう人はいます。専門学校の宣伝は巧みですからひっかかってしまう人もいれば、他に何か目的があってデメリットを承知で入学する人もいるでしょう。デビューできているのはそういう人だけだと思います。

「漫画家になれるような人は専門学校には行かない、漫画家になれないような人だけが専門学校に行く。
ただし、たまに漫画家になれるような人がうっかり入っちゃうこともある。そういう人だけがデビューする」

専門学校はそういう場所です。
「漫画家になれないような人を漫画家にしてくれる夢の学校」ではないのです。

進路の選び方としては、とりあえずは学歴として使える「まとも」な学校に進むか、漫画以外の理由で進学できない人は、正社員として堅実に就職しましょう。
そして漫画については独学で頑張りましょう。

 

すでに専門学校に入ってしまった人は、学校は適当でいいので、とにかく編集部に持ち込みに行ってください。専門学校の空気に飲まれないように。
無駄だと思ったら学校は辞めてもいいと思います。役に立つとしたら、やっぱり編集部以外にネームチェックをしてくれる人を確保できるくらいですかね。


なお、専門学校ではなく、大学の漫画コースとかならば、腐っても「大卒」という肩書きが手に入りますので、一応卒業だけはしておいていいと思います。
学科がアレだとしても、「大卒」の肩書きは社会でかなり使えるのです。


専門学校のカリキュラム

2012-02-06 14:18:44 | ■漫画専門学校について

専門学校について追記。

専門学校に通ったことがない私ですので、一応、記事を書くにあたっては、いくつかの漫画専門学校や、大学のマンガ学科のカリキュラムくらいは確認しています。

 

確かに、「キャラクター造形論」とか「演出論」だとか、漫画家志望にとっては、魅力的な項目が並んでいます。

私はこれらの講義を聞いたことはないので、どういった内容なのかはわかりません。

ただ、漫画を描いていた者としてはっきり言えるのは、こういった講義がたとえ有益な内容だとしても、それを役立てられるのは、あくまで「実際に漫画を描き続けている人だけ」ということです。漫画に限らず、スポーツでも仕事でもそうですが、「理論」は「実践」と同時進行でなければ役に立ちません。生まれてから一度もサッカーの試合をしたことがない人に、「サッカー原論」とか「チームワーク構築術」だとかをちょこちょこ2年教えたところで、その人がサッカーをできるようにはなりませんし、当然プロにもなれません。

漫画もそれと同様です。

そこで「実践」=「漫画制作」についてはどうなっているのかというと、ある大学の漫画学科では「一年次の集大成として8Pの漫画を制作する」とありました。ある専門学校では2年次の真ん中あたりにオリジナル漫画を制作する、とありました。

そこで「じゃあちゃんと実践についても学べるんじゃん!」と思ってはいけません。漫画の専門学校のカリキュラムに「漫画制作」があること自体が本来はおかしいのです。

なぜなら、学校の授業ではなく、日々自力でやっていて当たり前のことだからです。それがわざわざカリキュラムに入っているということは、少なくともそれらの学校では、生徒が「授業以外で漫画を描いていない」という想定をしていることになります。本気でプロを目指し、漫画だけに集中できる環境の学生が、それはあまりにひどいレベルです。

8Pの漫画なんて、小学校低学年が勝手に描くレベルです。その学校の学費は1年で160万弱です。

18歳で、本気で漫画家を目指そうとする人間が、1年間160万かけた集大成が、8P漫画一本。

あんまりにも・・・あんまりにもひどすぎます。

でも、そういうレベルを想定したカリキュラムになっている、ということなのでしょう。しかしこれは、到底プロを想定したカリキュラムではありません。

もし本当に本気で、18歳から2年間で、デビューが見えてくるレベルにまで学生を育てるなら…

入学直後から上記の講義と同時進行で、「毎週プロット最低3本、毎月ネーム最低3本」くらいはやらせ、入学後2ヶ月以内には30P前後の漫画を完成させて持ち込み、1年次の間に最低5本は持ち込みして担当付きを目標とし、2年次では担当がついた状態でのデビューを個人指導でアシスト」

、というようなカリキュラムになると思っています。ついてこれない子は見捨てるしかないと思います。本気の子に照準を合わせるなら、やる気のない子にかまっていられません。

というか、漫画の専門学校などに通っていない、普通の漫画家志望でも、本気の人はこれくらい自力でやるのが当たり前なんですけどね。

私だって働きながら一年10本くらい投稿・持ち込みしてましたし。大半の有望な漫画家志望者は漫画に関係ない高校や大学に通いながら、それくらいはやってるんですよ。

でもそんなカリキュラムになっている専門学校は(私が見た限りでは)ありませんでした。

結局「授業以外では漫画を描けない・描かないレベル」の子を相手にしている以上、プロを育てるようなカリキュラムにはできないのだと思います。もしそんなカリキュラムにしたら「今週中にプロット3本、ネーム1本つくってきなさい」と課題を出した時点で、「え~。そーゆーの自分でできないから、こういう学校に入学したんですよ~。ちゃんと初心者にもわかるように、基礎から丁寧に教えてくださいよ~」と言われてしまうのでしょう。

そういうレベルの、そういう考え方しかできない子は、かなりの確率でプロになんかなれないのですが、専門学校はお金を払ってくれる人には優しいですねえ。「そんなんじゃプロになんかなれないよ!」なんて説教はしません。私とは違います(笑)。

だって、結局そういうレベルの子しか、結局そういう学校には入学しないんです。この記事の6.に書いているとおり、本当に実力とやる気のある子で、そういう専門学校に入ろうという子は多くはありません。

なので、学校としては学費集めをしたければ、「自分では何もできず、やらず、とりあえず学校にすがる子」をターゲットにするしかない。そうするなら、そういう低レベルな子が釣れそうな低レベルな授業をするしかない。でないと入学してくれませんからね。金づるを捕まえられません。

でも、プロにはなれない。

 

ある作家さんが言っていました。巷に溢れているビジネス書など「●●すれば成功できる」的な本で、ベストセラーになるような本は、本当に成功できる方法は載ってないそうです。

なぜなら、本当に成功しようと思えば、人の何倍も努力をしなければならないわけですが、そんな大変な努力はほとんどの人にできない。そんな難しい方法を書いたって本は売れない。理解できないし、できないから。

だいたいそんな本に頼って安易に成功できるかも、なんて考える人が、難しい努力なんかできるわけないですよね。だから難しいコト書いたら売れないんですよ。そういうことできる人は、そういう本買わないから。

だから誰もできそうな簡単な方法が書いてあるような本の方が売れるけれども、誰でもできそうな簡単な方法で成功できるわけがない

でも売った側には買った人が成功しなくたって何の責任もないですからね。大事なのは「売れるかどうか」であって、「買った人が本当に成功できるかどうか」ではない

専門学校もそれと同じなのだと思います。

 

まあ、とりあえず。それでも専門学校にどうしても行きたい場合にも、最低でも、自力で投稿原稿を描けるレベルでないと、どうしようもないということは知っておいた方がいいと思います。

千歩譲って、講義や理論が有用なものだとしても、自力で漫画が描けなけりゃ、役立てようがないので。


うらみがあるわけじゃないですが

2012-02-05 09:46:18 | ■漫画専門学校について

私が妙に専門学校を毛嫌いする理由のひとつに最近思い当たったのですが、それはこういった専門ビジネスが事実上「弱者ビジネス」の側面を持つからだと思います。

この記事の6番に書いたとおり、勉強ができる子、真剣に漫画家に向かって努力している子は、こういう学校を選ぶことは少ないです。

また、こちらの記事に書いたとおり、自身が高学歴だったり高収入だったりして、学歴の大切さや仕事を得る大変さを知っている親も、子供をこういう学校にやらせることは、めったにないと思います。

つまり、大変失礼な言い草になるのを承知で言っちゃいますが・・・、

こういう学校に入ってしまうのは「勉強もできず、自分の夢のための努力もできず、進路について真剣に調べることすらできない、自分ではほとんど何もできず判断力もない子

こういう学校に子供を入れてしまうのは「低学歴・低収入で、学歴の大切さも仕事を得る大変さもあまりわからず、子供の進路を真剣に考えたり調べたりすることもできない、経済力も判断力もない親

もちろん例外はあるでしょうが、正直、上記のような親子が犠牲になってしまうケースが多いのでは・・・と思います。これはあくまで推測です。データに基づいたものではありません。

でも、某質問サイトでも、漫画専門学校を検討している子、入ってしまってから後悔している子の多くが上記に当てはまります。

漫画の専門学校は上記のような無力な親子を狙っているとしか思えません。

ある専門学校は学費を調べようとすると、いきなりローンのページにとびました。「お金がない?大丈夫!ローンもあります!」というわけです。こういう学校を検討する家庭の多くが裕福でないことを知っているのでしょう。

でも、経済力も判断力も実力もない子供が、借金を負ってそんな学校に進んでしまったら・・・どうしようもないじゃないですか。莫大な学費と使えない学歴、つぶされる就職・・・。

最近は奨学金をかえせなくて自己破産するニュースもありました。奨学金は借金です。確実に就職できるような学校のためにしか、奨学金なんて借りちゃいけないんです。

親も無力なら、子供を助けてやれません。むしろ子供が就職して親を助けないといけなかった家庭の子だっています。そんな子を、そんな学校にやらせたら家庭崩壊します。

多少でも漫画業界のことがわかる人間なら、上記のようなことは絶対わかります。学校の経営陣はわかっていてやっているんです。

そりゃ、詐欺とまではいいませんよ。専門学校だって別に「必ず漫画家になれる」と確約しているわけではないですし、実際になれる人も数人ですがいます。約束したカリキュラムはちゃんとこなすのでしょうし。それに対してお金を払うかどうかは生徒側の自己責任です。

でも、多少なりとも子供の将来を真面目に考えている大人なら、絶対にやらないことであるのは、間違いないです・・・。(なお、私がここで非難したいのはあくまで経営陣です。講師職員の皆さんを攻撃するつもりはありません。現場の方はおそらく少しでも学生の方の役に立つ内容をと日々苦心されているものと信じています)

社会的弱者につけこみ、子供の夢につけこみ、その子の夢どころか人生を壊してしまう・・・そこが私がこういう学校を嫌う一番の理由かもしれません。

別に親が低学歴だとか貧乏だとか、本人の勉強ができないだとか、そういうことが悪いといってるわけじゃないです。そんなことは漫画家になるにあたってはどうでもいいのです。関係ないのです。問題はそういう資質を持った親子だと、情報力・思考力・判断力もないことが多く、さらにだまされたとき人生のリカバリができないことです。お金持ちと違い取り返しがつかないのです。

だから、別に金持ちにならなくていいし、成績もあげなくていいので、情報を集めてください。ちゃんと考えてください。判断できる力を培ってください。現実を見てください。

とにかく漫画を描いて持ち込んでください。

あなたがちゃんと日ごろ漫画を描いていれば、漫画について勉強していれば、本気で漫画家になるための情報を集めていれば、ちゃんと物事を考えていれば、自分でちゃんと判断できるはずです。一年二年ちょこちょこ学校に数時間通っただけで、プロになれるような仕事じゃないことくらいわかるはずです。講義で教えられることなんて本当に一部でしかないことや、その一部はネットや本で数千円程度で学べることであることも。多くの漫画家は専門学校など出ていないことも。

どこの誰とも知れぬ他人が用意した甘い道にだまされないでください。他力本願しないでください。

今この瞬間にも、あなたが漫画を描いている人なら、専門学校なんか行かなくても自分で道を拓けます。数百万のお金を捨てることはありません。

今この瞬間まで、あなたが漫画を描いていない人なら・・・・少なくとも、「専門学校に行けば道が拓ける」ことはありません。そういう場所じゃないんです。

何もしていない人が、「学校にさえ行けば何か素敵なことがある」と思うのは、「努力できない人の現実逃避の妄想」です。

弱者ビジネスの犠牲にならないでください。つけこまれないでください。大人を信用しすぎないでください。

2015.2.28


専門学校の利点も一応

2011-06-24 09:35:01 | ■漫画専門学校について

なお、一応専門学校の利点についても記載しておきます。

1.堂々と漫画だけに専念できる時間を二年間手に入れられる。

個人的には一番大きい利点です。社会的には「専門学校生」なのですから、働いてなくてもいいし、学校でも家でも堂々と漫画を描いて漫画のことだけ考えていられる。人生でそういう期間はそうありません。でも多少の世間の冷たい目に我慢できるなら、学費分で二年間ニートを決め込んで、アシスタントと持ち込みしまくる方が、漫画家デビューは絶対早いです。

2.地方住みの場合は上京のきっかけになる。

別に地方住みでも漫画家にはなれますが、できれば編集部に近いほうが持ち込みや打ち合わせに便利だし、アシスタントの口もたくさんあります。でも、持込もできない、アシスタントもできないレベルの人には意味はありません。また、親が生活費を出してくれない場合も、バイトで漫画どころでなくなるので、利点にはなりません。

3.編集者以外にネームチェックしてくれる人を確保できる。

これも、講師が「アタリ」なら大きな利点です。編集者は担当がつくまでは完成原稿でしか原稿を見てくれません。問題は「アタリ」講師に出会えるかどうかです。確率は非常に低いと思ってください。別に講師の方々が無能って話じゃなく、自分との相性や、雑誌との相性もあるので。事前にオープンキャンパスなどで実際に原稿やネームを指導してもらい、講師の力量を確かめておくのもいいです。これも自力で原稿が描けない人には意味のない利点ですけど。

4.友人ができる。

「同じ夢を持つ仲間」という意味では・・・専門にはあまりいませんよ。だって漫画描いたこともない子が多いし。漫画の能力別に、普通のオタク友達ならできるかもしれません。

志望者仲間なら、ネットなどで自分と同じくらいのレベルの人を探した方がいいですよ。雑誌に投稿して受賞レベルの人は、ツイッターやブログなどやってることもあります。漫画家志望ってレベル違うと話あわないし。

5.学校によっては専門卒の学歴が手に入る。

この記事に書いたように、基本使えない学歴です。でも、何の専門かまで書かなくていいような場では、「高卒」よりは多少見栄えがします。また、「専門卒以上」で応募をかけている会社に一応応募はできます。それは利点といえば利点です。できれば、履歴書に書く学歴には「デザイン」とかの名称で書けるところがいいですね。漫画とかコミックとか書いてあると、結局学歴としては非常に使いにくいので。

6.入学が楽

難しい受験勉強、デッサンの訓練、漫画の能力、何一ついりません。必要なのはただ一つ、お金だけ!!どんなお馬鹿さんでも、どんな下手っぴさんでも入れます。ただそういう学校の授業が、どういうレベルなのかは考えておいた方がいいです。

7.漫画の基礎くらいは教えてもらえる

何もわからなかった人でも、2年かけて四コマ漫画の一本くらいは描けるようになるかもしれませんね・・・。Gペンで絵が少し描けるようになるかもしれないし・・・。消しゴムのかけかたとか、枠線の引き方も覚えられるかもしれませんね。

 

思いつくのはこれくらいかな。

 

これらの利点のために、最終学歴と300万犠牲にしてもいいと思えるなら・・・・。強くはとめません。
ただ、その場合は自分で働いて学費出してくださいね。多分自分で払うとなると、半年くらいで退学したくなると思います。そんなもん親に払わせないでください。気の毒すぎます。

現実的な専門学校の使い方としては、本来の進路と並行し、ダブルスクールという形で専門学校のカリキュラムを部分的にとるという形で試してみるというものもあります。
どうしても専門学校に行ってみたい、独学に限界を感じる…という場合ですね。
この方法ですと最終学歴を犠牲にすることもなく、金銭的な犠牲もまだ少なくてすみます。

ただ、漫画家デビューって、本当に「かろうじて土俵にはあがった」レベルのことです。
この程度のことが独学でできない人間は、例え何か奇跡がおこって土俵にあがれたとしても、その後土俵で勝ち抜いていけるとは到底思えません。


なので、独学でデビューすらできないという時点で、漫画家をあきらめた方が、本人にとっていい人生になるとは思うのですが、まあやるだけやってみたい場合は、この方法でどうぞ。

 


それでも専門学校に行きたい場合

2010-06-26 08:30:24 | ■漫画専門学校について

デメリットは十分わかったけれど、それでもどうしても専門学校に行きたいんだ、という人もいるでしょう。

その場合の学校選びですが、私は以下のようなことを考慮して選ぶと良いのではと思います。

 

1.東京近郊に住める。

地方住みの人の場合、「上京できる」は大きなメリットです。編集部に通いやすくなるからです。アシスタントにも入りやすくなります。ただし、これは親が学費・生活費を出してくれる場合に限ります。バイトしないと生活できないような場合は、地方でも実家にいた方がいいです。東京でバイトで生活しようとすると、間違いなく漫画を描く時間がありません。

 

2.学費が安い

この記事で書いたとおり、基本は無駄な学校です。少しでも安いにこしたことはありません。なお、奨学金で行くのだけはホント薦めません。やめて。未来の自分に恨まれますよ。

 

3.デザイン科など就職できそうな学科に転科できる制度がある

可能性は広めにとっておきましょう。デザイナーなら専門出身でも(実力次第とはいえ)就職は可能です。漫画の専門行って、周囲のレベルの低さに、あるいは自分のレベルの低さに愕然として、退学するかどうか悩んでいる人はけっこういます。

 

4.その学校のカリキュラムが自分にあっているか調べる

週にどれくらい授業があるのか、何をどれだけ学ぶことになっているのか、わかる限り調べましょう。

高い学費をとっておきながら、週1~2日しか授業がないなんて学校もあります。

デザインと漫画とアートがごっちゃになっていて、それぞれを細切れでわずかしか学べない学校もあります。(2年しかない専門で、あれもこれもやろうとすると、そりゃそうなります)

何の役に立つのかわからん抽象的な講義が多い学校もあります。

たいていは「漫画制作実習」とか「CG演習」とかそういう何をするのかよくわからない名目になっているので、オープンキャンパスや問い合わせなどで、具体的な授業内容をできるだけ聞きましょう。(講師に任せていれば、学校側ではわからないこともあるかも)そのうえで、自分にその授業が必要なのか、考えてみるといいでしょう。

ただ問題は、カリキュラムから、その学校が自分に必要かどうか考えるには、自分が漫画家を目指すにあたって、何が課題で、何を学べばいいのかある程度把握してなければならないんですよね。そしてそれを把握していたら、たいていの専門学校は不要だってわかるんですけどね。座学で学べるようなもんじゃないからね。

漫画を描いたこともない~ってレベルの人はそんなこともできないので、やっぱり漫画を描いたことがないレベルの人は、専門はやめておいた方がいいって思いますね。学校選びの判断すらできないのでは、危険すぎです。

ちなみに私がカリキュラムをいくつか見てみた感想はこちら・・。

 

5.その学校の実績を調べる

その学校でデビューしている人がどれくらいいるのか調べましょう・・・といっても、載せてない学校も多いですけれどね。載せてない場合は、「ほとんどいないんだろうな」と思っておいて間違いないと思います。

気をつけないといけないのは、「デビュー●名!」と華々しく載せているけれど、分母を載せていない場合です。ヒュー●ンとかそうですけれど。あんな全国20校くらいあり、夜間も通信もあるような学校で、創立以来のデビュー人数載せられても、さっぱりわかりません。ざっくり分母を想定したら、結局100人に1人くらいでしたけど。

問い合わせる場合は「昨年度のみ」など絞って聞くといいでしょう。またデビューといっても、小さい企業のチラシに四コマ漫画載せてもらったとか、そのレベルも入れている学校が多いので(デビューには間違いありません)そのあたりも考慮しましょう。

もし学年のうち三分の一くらいデビューしている学校があれば、それはある程度学校に力があると考えていいと思うんですけど、見たことないですね。たいてい80~100人に1~2人くらいで、「学校がなくても自然にデビューする」と思われる数を超えてはいないです。

 

6.その学校の講師にネームを見てもらう

できるものならば、これが一番確実です。専門学校で唯一と言ってよい利点、それは「担当編集がつく前のレベルでも、プロットやネームをチェックしてくれる人がいる」ということです。

ネームチェック力が優れた講師がいるならば、それはかなり力強い味方となります。ただ、そういう人は多くはありませんので、期待はしないように。

本来、プロットやネームのチェックで一番確実で頼りになるのは「編集者」です。しかし、編集者はもともと普通のサラリーマン、必ずしも漫画指導のプロではありません。彼らが確実であるのは「自分がデビューしたい編集部に属する人間だから」というのが大きいです。デビューしたい雑誌に必要とされているジャンル、絵柄、作風、編集長の好み、雑誌の傾向などをリアルタイムで把握しているのは彼らだけです。それらをもって、原稿をチェックしてくれるので、一番頼りになるのです。

しかし、純粋に漫画を教えるだけとなると、ひょっとしたらもっと優れた人が講師にいるかもしれません。どうせ専門に入るなら、そういう講師のいる学校がいいに決まっています。

オープンキャンパスや学校見学に、完成原稿でもネームでも持ち込んで、実際にチェックしてもらいましょう。その批評が自分に役に立つと思えるなら、その講師がいる学校を選ぶのも一つだと思います。

ただ、これを断ってくる場合は・・・まあ、そういう学校だということで。あと、講師って簡単に辞めちゃうことも多いので、入学してみたらいない、ってこともあるかもね。

これまた、独学では原稿描けません!って人には無理な判断方法ですが、だからそういう人は専門行っちゃいけないんですって。

 

7.実際に編集者にみてもらえる機会がどれくらいあるか

最近の専門は、漫画雑誌の編集部と提携して、編集者を定期的に呼び寄せて批評会などを開いているようです。

この記事にも書きましたけど、それは本来志望者が無料で自力でできることです。なので、そのために何百万の学費を払って学校に行くのは無駄なのは間違いないです。

でもそれでもどうしても行きたいってなら、せめて編集部に見てもらえる機会が多い学校を選びましょう。漫画家になるためには編集部に漫画を見てもらわないと話になりません。

 

2015/6/26