漫画家を目指す人へ

漫画家を目指す人へ参考になれば。

絵に関する「何」が好きなのか

2012-01-31 20:09:33 | ■絵に関するお仕事って

「進路の考え方」の中で軽く触れていただけだったのですが、某質問サイトでなんだか見ていて不安を感じることが多かったので、わかる範囲ですが、ここに別途わけました。

私自身、いろいろやってみたり考えてみたりしたことがあるので、参考になればと。

 

 

さて、最初に。

絵が好きだから絵に関する仕事・・・・というところまではなんとなく考えている人が多いと思いますが自分が絵に関する「何が」好きなのかは、早くから意識して考えておいたほうがいいと思います。

 

一つは仕事のジャンル的なことです。

たとえば、たまに聞くのが「絵が好きなのでデザイナーになりたいです」という志望です。
なんとなく似たカテゴリで考えているのでしょう。
確かに、まったく無関係ではありません。が、今「デザイナー」と呼ばれる人の、大半は絵は描きません。
せいぜいデザインのラフ画くらいでしょうね。絵というか図みたいなものですが。
ですので、「絵を描くのが好きだからデザイナーに」と考えていると、アテが外れることになるかもしれません。

また、私の知人で、「絵が好きなので漫画家になりたい」と言って、何年も投稿を繰り返し、メジャー誌で担当がつくまでになった人がいますが、担当がついたとたん漫画家志望をやめてしまいました。

担当がつくと、自分のペースで好き勝手に作品は描けません。プロットやネームを詳細に詰めて、何度も何度もつくりなおします。なかなか作画にすすめなくなります。

「絵が描けないのがこんなに苦痛とは思わなかった、自分が本当に描きたいのは漫画じゃなくて絵だった。やっぱりイラストレーターになる」と言って、実際イラストレーターに転向してしまいました。

残念ながらイラストレーターとしてはうまくいかなかったらしくて、今は結婚し、趣味でたまに同人誌のみの活動をしているようですが。

こういう話は割りとききます。

 

あと、もう一つは「自分の作品をつくるのが好き」なのか、「その仕事が好き」なのかということです。

 

当たり前ですが、「仕事に就く」までは、基本「自分の作品」しか作れないんですよね。学校の課題にしても、コンペに出す作品にしても、基本は「自分の作品」です。だから、絵の仕事を目指す人の多くは、仕事に就くまでに、この二つの差は残念ながら、あまりわかりません。私もわからなかったです。

 

たとえば。

「絵が好き」だから「アニメーター」になってみたけど、中割動画を何百枚もえんえん機械のように描く作業に耐え切れず、「もっと自分の好きに描きたい」とやめてしまう人もいますし、「ゲームとイラストが好き」だから「ゲーム会社のイラストレーター」になったけれど、実際仕事をしてみたら、深夜までドットを打ち続ける仕事で、「こんなのゲームでもイラストでもない」と、半年でやめてしまった人もいます。

アニメーターやゲーム会社社員になるなら、「自分の好きな絵やイラストを描く」ことではなく、「アニメやゲームを、組織の一部として制作する」という「仕事」に喜びを感じられる人でなければ、もたないわけです。

イラストレーターにしても漫画家にしても、またかなり自由に見える画家やアーティストですら、「仕事」である以上、「自分の好きな作品」にこだわり続けることは非常に難しいです。

 

また、この系の仕事の難しいところは、たいてい拘束時間が生命にかかわるレベルで長いとか、待遇が極端に不安定で兼業しなきゃいけないとかで、「仕事は仕事と割り切って、好きな作品は趣味でつくる」ってことができないことにあります。

要は趣味なんかできる時間はないってことですが。ほんと仕事と、あとは生命を維持するだけで精いっぱいって感じになるので。

なので、「本当に好き」なことなのか、よくよく考えて仕事にしないと「仕事も思ったほど好きでもない」「かといって仕事が激務すぎて好きなこともできない」「おまけに待遇悪い」という最悪な状況になってしまいます。そのうえ、ツブシきかないですからね~、方向転換も大変です。

「自分の好きな作品をつくる」ことにこだわりがある人は特にきっついと思います・・・。

 

 

こういうのは難しいところで、いくら知識として事前に知っていても、実際に仕事としてやってみないと、自分が本当にやりたいことなのか、あっているのか、わからないということがよくあります。
また、目指しているうち、やっているうちに時代が変わってしまったということもままあります。
ITやネットによって、世の中の流れは非常に速くなってしまいましたから。

しかし、進路のところで書いたように、今の日本は、一度学生という身分を捨てて(卒業して)世に出てしまうと、転職が容易ではなく、何度もやりなおしができません。
「やってみてあわなかったからやめて、他の仕事につく」ということが、かなり難しいのです。
1回はなんとかなりますが、何度もやりなおしをしていると、人生の難易度はかなりハネあがります。


ですので、なるべくそういうことにならないように、やっぱりできるだけの準備はしておくといいかと思います。

幸い、絵や漫画を描く、デザインをつくる、ということは、学生のうちからやることができます。
学生からプロになれてしまう人もいますが、そこまでなれなくても、プロに近いことをやることはできます。
少なくとも、自分が本当にその作業を好きなのか、最低限レベルの能力はあるのか、そういった判断の目安くらいにはなると思います。
私が漫画において、「とにかく自力で一作持ち込め」と書いているのも、その目安になるからというのが大きいです。

 

結局は仕事にしてみてからしか、わからないことは多々あるとは思いますが、一作も漫画を描いたこともないのに、なんとなく漫画専門学校に入った後で、「自分は漫画を読むのは好きだけど、描くのは別に好きじゃなかった!でもいまさらどうしよう」なんてことにならないように、やれることは、どんどんやっておいて、「予行練習」をするとよいと思います。

なお、これは他の仕事でも一緒です。
結局やってみないとわからないんですよ。
だから学生でもできる限り、なるべくいろいろな仕事をどんどんバイトで経験するのをおすすめします。

 

自分が好きなのが「絵画」なのか「イラスト」なのか「漫画」なのか「アニメ」なのか「ゲーム」なのか。

そういったものを「見る」のが好きなのか「作る」のが好きなのか「関わる」だけでいいのか。「自分の作品」としてでなく、「仕事」として好きでいられるのか。

自分にそういった能力や適性があるのか。

 

たいして待遇いい業界でもないし、不安定だったり、激務だったりするし、好きじゃなかったらとうてい持たないです。
人気業界なんで、入るだけでも大変ですしね・・・。

 

うかつに美術系にしか行けないような進路をとる前に、できるだけのことは実際に動いて体験しておきましょう・・・。


絵を「描く」仕事

2012-01-30 19:13:36 | ■絵に関するお仕事って

さて、「絵に関する仕事」というのは実はそんなにないです。
特に「絵を描く仕事」というのは少ないですね。

絵を「描く」仕事
●画家
●イラストレーター
●絵本作家
●アニメーター・アニメ背景画家
●漫画家

ちょっと変わったところでは
●警察内の似顔絵作家
などもあるようです。

一つ一つの仕事については、わかる限り(私がわかる部分ってほとんどないんですけど・・・)別に書きますね。

最後の警察については公務員になるので別とします。また、アニメーターも会社に所属しますので、別としますが、それ以外の仕事の共通点は、「ほぼ自営業である」ということと、「本当に1部の人間しかそれ専業では食べていけない」ということです。

この一部というのは、職業にもよりますが、「絵の上手な人が10人いたとしたらそのうち1人」というような生易しいレベルではなく、「何千人~何万人に1人」とかそういうレベルの話です。

 

よく、「1部の人しかなれない厳しい仕事なのはわかっていますが、目指したいんです!!」と言っている人がいますが、たいていそういう人はわかってません。

本当にわかっていて、その「1部の人」に自分がなれると思っている人は、中高生くらいから、すでに何らかの才能を発揮して、実際に活動をしてるもんなんですよ。

漫画やイラストや絵画なら受賞しているとか、すでにデビューしているとか、デビュー予備軍で担当がついてるとか。

最低でも、それくらいのレベルにいなければ、「そういう業界で一部の人になる」というのがどういうことかはまずわからないと思います。

 

そういう活動もしていない、実績もない人が「わかっています!!」とアピールしている場合、「自分が何をわかっていないのかすら、わかっていません!!」と言っているようなもんです。

 

近所の山すら登ったこともないのに「今からエベレストに登ります!厳しいのはわかっていますが、やる気はあります!頑張れば登れるはずです!!」と宣言しても、とうてい信用できないですよね。

近所の山にすら登ったことがない、登山経験がない人が登山の厳しさ・・・まして命に係るエベレストの厳しさの、何をわかっているというのでしょうか。

そしてやる気がある、頑張る、というなら、なぜ近所の山くらいに登っておかなかったのでしょうか。そんなに難しいことじゃないですよね?ちょっと調べて、ちょっと道具を揃えたら、できるはずのことです。

それすら自力でできなかった、あるいはやろうとしなかった人間が、「やる気はあります!!」と言って、誰が信じるでしょうか。
そして、こんな人がいきなりエベレストに挑戦したら、どうなってしまうでしょうか。

 

わかっていないならわかっていないでいいのです。
中高生くらいなら、わかっていないことがたくさんあるのは当たり前です。
怖いのは、わかっていないものをわかった気になっていることです。

 

自分がわかっていないと自覚できる人間は、自分の無知を知ったうえであれこれ準備したり努力することができます。
いきなりエベレストを目指すのではなく、まず近所の山に登る努力をするでしょうし、自分がひょっとしたらエベレストに到達できるような人間ではないかもしれないことも、うかつに挑戦すると命を落としてしまうことも、わかるでしょう。
自分の無知すら知らない人間は、そういう判断すらできません。

漫画を一作も描いたことがないような論外レベルの子が「厳しいのはわかっています!!」とドヤ顔で宣言しながら、漫画専門学校に入学して、数百万と自分の進路をドブに捨てる結果になったりするのは、そのせいです。
本当に厳しいのをわかっている人なら、専門に入学するような年齢で漫画を一作もかけなかった時点で、自分はその厳しい世界で生きていけるだけの才能も根性もないことはわかります。
才能も根性もないならないなりに、保険をかけながら目指すとか、諦めて別の道に行くとか、そういう判断ができるのです。

 

こういった仕事を本気で目指すなら、口先で何を言っても意味がないです。とにかく「実績」です。

「本気です」とか「努力します」とか口でいちいち言わなくていいので、自分が実際に何をしているのか、どういう結果を出しているのか、それはプロの世界で通用する結果なのか、常に意識しておきましょう。

また、才能においても努力においても実績においても、「人並み」「普通」レベルではまったくダメなことを理解しておきましょう。

「数千~数万人に一人になる」つもりなら、少なくとも何百人しかいない学校などでは、ダントツで一位でなければならないはずです。
あなたは今いる学校の中で、間違いなく一番絵が上手ですか?一番誰よりも努力していますか?何らかの社会的な評価を得ていますか?


もし、そうでないなら、そうなれるように必死で努力してください。
そして、「友達にほめられた」「親に上手って言われた」というレベルのところからさっさと抜け出して、プロの世界にアプローチして、プロの世界で評価を得るようにしてください。

まだ中学生だから、高校生だから、という甘えは捨ててください。
中学生でも高校生でもプロになる人はいます。「そういう人は特別な人だから自分とは違う」と思わないでください。
そういう特別な人しか生きていけない業界なんです。あなたが特別な人でないなら、最初から諦めてください。
中途半端な気持ちでエベレストに向かっても死ぬだけです。

 

あと・・・・こういう仕事を目指すにあたって、もう一つ非常に重要なことは、「実家が経済的に支援してくれる」「万一ダメだったときに実家のバックアップがある」ということです。実は。

たまに、母子家庭だったり実家が生活保護を受けてたりする人が、こういう道を志そうとしているのを見ます。なかには奨学金(借金)を受けてまで、イラストだか漫画だかの専門学校に行こうとしていたりする人がいます。

こういう道は、実力次第才能次第であるのは間違いないとはいえ、上記のように「ほとんどの人が食っていけない、食っていけるようになるような人でも、数年単位で食っていけない期間ができる」ような仕事です。

その「食っていけない」のをどうやって克服するかというと、ほとんどの場合実家の支援に頼るしかありません。

もちろん中には、複数バイトをこなしたりして、なんとか自力で生活しながらのしあがる人もいなくはないと思いますが、ただでさえ難易度がバカ高いこういった道で、さらに難易度がハネ上がるという恐ろしいことになります。

家が貧乏だから夢を諦めろとは言い難いのですが、よっぽどの才能を発揮していて、「これは数千人に1人くらいには確実になれる」という確信がある程度ない場合には、少なくとも借金してまで美術系の進路一本に絞るのはおすすめしません。

よっぽどの才能を発揮している人は、美大や芸大にトップの成績でパスできると思います。学費は無料になります(施設使用費とかは払わされるので、完全無料になるわけではないです)。せめてそれを目指してください。


絵を「描く」お仕事あれこれ(画家)

2012-01-29 19:23:47 | ■絵に関するお仕事って

●画家…言うまでもなく、絵を描いて売って生活する人です。

自営業であり、学歴は関係ない・・・と言いたいところですが、実際画家として活躍している人のほとんどは、有名美大・・・もっと言うなら、東京藝大出身です。

なので、東京藝大を目指すのが画家になる一番の近道と言えるでしょう。東京藝大は東大よりはるかに難しいとされ、現役合格できるようなのは、本当に日本全体のトップレベルの画力の持ち主だと思いますが、画家として食べていけるのは、東京藝大卒業生の数よりぐっと少ないはずですので、それくらいは突破しなければ、どのみち画家になれる可能性は非常に低いってことでいいと思います。

実際、日曜美術館などで、「画家」として少なくともテレビでとりあげられる人の経歴などを見ると、たいてい小学生くらいから大人顔負けの絵を描き、中学生くらいではそこらの美大生と変わらないレベルの絵を描いています。ピカソなんか14歳くらいでプロ画家レベルの絵を描いていますから・・・。まあ、そういう人しかやっぱりなれないものなんでしょうね。「特別な人しかなれない」と繰り返し言ってますけど、まさに特殊中の特殊な人だけがなれるシロモノだと思います。

私の周囲に画家で生計をたてている人はおらず、詳細はまったく不明なのですが、基本はコンクールや公募展などに応募し、有名な展覧会(日展とか院展とか)で受賞をし、名をあげ、画歴を積んでてゆく…というのが、一般的な道らしいです。

そしてとにかく有名になり、美術団体などに属して横のつながりもつくり、自分の価値・・・ひいては自分の絵の価値をあげてゆく、という、なんだかもう獣道みたいな厳しい道筋をたどらなければならないようです。

画力は当然大事ですが、コネが非常にモノ言う世界でもあるようです。確かに絵が上手かどうかより、有名な先生に師事したかどうかの方が重要であるとかいう話も聞いたことがあります。

あと、日本は美術にお金を投資するという考え方があまりないので、海外の方が成功しやすいという話も聞いたことがあります。

こちらも、基本的にこれ専業で食べていけるような人は非常に少なく、また食べていけるようになるにしても、そこまでがかなり長いと思われます。

なので、副業として何らかの仕事をするか(美術教師とか、卒業した美大で助手やってるとかそういう人が多いですよね)、実家に食べさせてもらうか、ってことになるでしょうね。

 

検索してたら、こんなものも見つけました。

http://trendnews.yahoo.co.jp/archives/067831/

学校の宣伝ですが、絵を教える学校ではなく「絵を売り込む」方法を教える学校のようです。

 

私も一応美術系の大学にいましたけど、本気で画家目指してる人は周囲にはいなかったですね。まあデザイン学科だったのもありますが・・・。たまにそこそこ有名なアーティストが来て、講演してくれたりしましたが、だいたいですね、共通してるのは「金持ちの坊ちゃん嬢ちゃん」ってことですよ(苦笑)。あと、親戚や家族内に有名な芸術家がいる人も多いです。

漫画家やイラストレーターも大概ですが、画家は食べていけるようになる難易度が非常に高いですね。想像つかないです、すみません。

 

 


絵を「描く」お仕事あれこれ(イラストレーター)

2012-01-28 20:23:16 | ■絵に関するお仕事って

●イラストレーター…イラストを売って生活する人。まんまですね。

私はイラストレーター業界については基本門外漢です。
「基本」という言葉をつけたのは、一応デザイナー時代に兼業でイラストレーターを名乗っていた(というか会社に名乗らされた)時期があったのと、今の事務員になってからもSNS経由などでイラストの仕事をちょこちょこしたことがあるからです。

しかし、がっつりイラスト専業で生活したこともなければ、しようと思ったこともない(一応少しはあるのですが、ちょっと調べてすぐ諦めました)ので、「基本門外漢」ということで・・・。

イラストレーターといってもいろいろな媒体、タッチがありますが、このサイトを見ている人のほとんどはコミックテイストのイラストを描く方だと思います。
ですので、ここではコミックテイストのイラストを想定して話をします。


イラストレーターについては、大きく二つの就業形態があります。

1.会社員として勤める
2.自営業

ただ、大きな問題がありまして・・・。

1.会社員として勤める→イラストレーター専業の就職なんてほとんどない。

2.自営業→いきなり自営業にして食べていけるイラストレーターなんてほとんどいない。

つまり、「どっちも無理じゃん!」という現実があるのです。

 

えええ、じゃあ普段私たちが見ているイラストレーターさん達はいったいどうしてるの!!??

という疑問が湧いてくるかと思います。もちろん人によっていろいろですが・・・。

1.他の職業と兼業している。

これが一番多いと思います。特に多いのはデザイナーなどではないでしょうか。デザイナーだと私がやっていたように仕事の中でイラストを描くことも可能ですので、働きながら実績やノウハウ、人脈を作れるからです。将来的にイラストレーターとして独立を考えている人の場合、そちら目当てでまずデザイナーとして就職する人もいるようです。美術教師や、美術系専門学校の講師などをする方もいます。

あと若い子だとフリーターをしながらというのも多いと思いますが、まあ博打ですね・・・。そのまんま、ただのフリーターで、気づけば三十路って可能性もありますから・・・。

2.ゲーム会社のグラフィッカーになる。

多くの子が「コミック系イラストレーターとして就職したい」と思う場合、コレしかないと思います。しかし、最初に「ほとんどない」と書いたとおり、非常に狭き門だと思っておいてください。学校出れば就職できる~なんて思っていたらオオハズレです。専門学校でダントツトップくらい上手な子で、なんとかなるかどうか??くらいだと思います。たいして上手でもないのに、ゲームやイラストの専門行ったって、まず無理ですよ。

今はSNSゲームなどの流行で一時的に増えていますけれどね。なお、地方だとほとんどないと思います。東京に集中しているんじゃないかな。

3.親や配偶者に経済的に頼っており、自分の稼ぎだけで生活していない。

こういう人も多いですね。若い人なら実家住まいが多いし、あとイラストレーターには女性が多いんですが、理由としては単純で「旦那さんが生活費稼いでくれるから」というのがあります。ただ結局職業人としては自立できていないということなので、若い人がいきなり目指すものではないですね。

4.上記1~3などの過程を経て、十分に稼げるようになってから独立(自営業)する。

今、独立してやっている人の多くがコレですね。広告会社やゲーム会社、アニメーターなどを経て、十分実績やノウハウ、人脈を築いてから独立するというものです。もちろん全然関係ない仕事をやりながら、イラストはイラストでフリーランスでやり続けて、イラストで独立する人もいます。

 

ということは・・・、上記のうち自立できていない3を除けば、「非常に狭き門」を目指してグラフィッカーとして就職するか、他の職業に就職するか、まずはどちらかしかないってことになります。

イラストレーターになりたい人は、高校のうちから、どちらを目指すのかよく考えておいた方がいいと思います。

というのは、どちらを目指すかによって進路が変わってきますので。

 

■グラフィッカーになりたい場合

美術系の進路を選ぶことになると思います。

私は、本当にコミック系グラフィッカーだけになりたい場合は、よほどお金に余裕があるおうちの子なら美大や芸大もいいと思いますが、そうでなければゲームやイラストの専門学校でいいと思います。コミック系イラストは美大や芸大では学ばないし、もし学んでもあんまり意味ないし、美大・芸大はとにかく学費が高いのでもったいないです。ただし、デザイナーなども視野に入れたいなら、大学の方が就職では有利になります。

なお、一部の大企業(スクエア・エニックスなど)はそもそも専門学校卒だと応募できないということがあります。目標とする会社が決まっているなら、必ずその会社の採用条件を調べておいてください。
また、専門学校によっては認可されていなければ、学歴とみなされないことがあります。これもちゃんと調べてください。
せっかくお金と時間をかけて専門学校に通ったのに「高卒」扱いとなってしまい、会社に応募できないという事態になってしまうかもしれません。

あと、重要なこととして・・・ゲームやイラストの専門学校からまともに就職できる子なんてほとんどいないと言います。なので、グラフィッカーになる目的で専門に行く場合は、これも相当の博打である覚悟が必要です。上述のとおり、「専門に行く前からプロレベルで上手な子」でないと意味はないと思いますね。そういう子なら、就職への足掛かりとして専門に行く価値は一応あるでしょうが、「たいして上手じゃない子」の場合は足掛かりとしても使えないので、どうしようもないです。なので、「自分は間違いなく専門ではトップレベル、日本全体の同年代の子の中でもトップテンくらいには入る自信がある」くらいの子じゃないと、そういう専門には行かない方がいいと思います。

グラフィッカーになりたい場合は、進路をどうこう以前に、独学でプロに匹敵するレベルになっておく必要があるってことですね。

ちなみに私の知人男性で、「ふつうの子に比べたらそこそこ上手だけど、プロレベルじゃない」くらいの人が、ゲーム専門学校に行って、当然就職なくて、フリーターしながらイラスト系就職活動をずっとやっていたけど、やっぱり就職なくて、気が付いたら20台後半になってたので、あわててふつうの就職探したけど、もうそれもなくて、工場派遣をずっとやっていたけど派遣切りにあって、30代になったら派遣の仕事もなくなってきて、仕方なくコンビニバイトをしていたけれど、30代半ばなのに大学生バイトからバカにされる生活に耐えられなくなって、アラフォーで無職・・・という人がいます。当然結婚もできない実家も出られない・・・です。怖いですが、これが現実の一つです。私はこの人の例を知っているので、ゲーム系の専門学校のリスクはどうしても高いように思ってしまいます・・・。

 

■他の職業と兼業する場合

その職業にあった進路を目指すことになると思います。

デザイナーなどならデザイン系の専門学校か美大・芸大ですね。ただし、コミック系のイラストレーターの場合、普通のデザイン会社や広告会社での兼業は難しいと思います。仕事上でコミック系イラストってそれほど描くこともないだろうし、クリエイティブ系の仕事は、たいてい深夜残業が当たり前など超激務なので、会社終わってからイラスト活動もほとんどできない可能性があります。

だから、本当は一番いいのは「安定していて堅実で、拘束時間が少ない仕事」なんですよね。事務職とか。そういう仕事につきたいなら、地道に高偏差値の国立大学でも目指すのが一番良いと思います。

でもイラストレーターになりたいって子は、なかなか「イラストレーターじゃ食べていけないから、まずは事務職を目指して、高偏差値の大学をめざします」とはならないんですよね。夢がないし、大学では絵の勉強したいから。

でも、長い目で見たときに、こういう道の方が長く堅実に絵を描き続けられるということもあるので、検討してみてください。

コミック系イラストレーターの場合はアニメーターや漫画家などとの兼業も多いですね。ただ、アニメーターはアニメーターで生活できない給料だし、漫画家はこのサイトに書いてるとおり、やっぱり大変な仕事です。なので、「イラストレーターでは生活できないから」という理由でこのあたりと兼業するのを目指すのは、あまり現実的じゃないかも。結果的に兼業になっていった、みたいな人が多いと思います。

あと、漫画が上手な人なら、二次創作の同人などを売って、生活費にあてる場合もあるようです。これは売れる同人誌が描ける人ならありでしょうが、生活費にできるほど売れる同人誌というのも、簡単に描けるようにはならないと思うので、こちらも最初から目指すようなものではないと思います・・・。腕に自信ありなら、これでいけるかもしれませんけどね。

 

で、就職や進路については、そういう考え方になると思いますが、副業でやるにしても専業でやるにしても、会社員イラストレーターでない限りは、自営業(フリーランス)での活動になると思います。

 

■自営業の活動

この記事にも書きましたが、自営業は会社からお金をもらう働き方ではなく、お客さんから直接お金をもらう働き方です。自分でイラストを出版社やゲーム会社などに売り込んで、自分で仕事をとります。

ちなみに、この働き方は学生でもできます。(高校生以下の場合、保護者の許可が必要だったり、会社によってはダメかもしれませんが)

なので、将来的に兼業だろうとグラフィッカーだろうと、とにかくなるべく早いうちから、実際にこういう活動をしていくと、イラストの実力も早く身に付くでしょうし、業界のこともわかっていくと思います。

・ポートフォリオを持ち込む・郵送する。

・イラストレーター登録サイト等に登録する。

・PixivやTINAMIなど宣伝効果があるSNSに投稿してランキングに入る。

・デザインフェスタなどの大きいイベントに出展する。

・自分のサイトを作って仕事を募集する。

・個展を開くなどして宣伝する。

↑こういうことをやって、自分で自分の絵を、クライアントにアピールするのが重要です。

 

 

ただフリーランスでイラストレーター専業でやるというのは相当に厳しいと思います。
よっぽど太いクライアントさんをガッチリつかめたら別ですが、コミック系イラストでは難しいでしょうね・・・。


これは、そもそもイラストレーターという職業が完全に労働集約型の仕事であるのに加え、近年IT化がすすみ、ちょっとしたイラストなら素人でも簡単に描けるようになって価値が大幅に下がったこと、特にコミック系のイラストはもともとまともな金額を出せるクライアントが少ない上に、需要過多で相場が下がっているからです。

Pixivなどをやっている方ならわかるでしょうが、高校生や学生、主婦でも、ちょっとしたプロレベルのイラストを趣味で描いてしまいます。

たとえば私など本業は会社員ですが、pixivなどを通して、SNSゲームや乙女ゲームのイラストの依頼が来ます。
びっくりするくらい安い値段で(笑)。まあ向こうも素人相手の相場で出してきているのでしょうが。

しかし「神撃のバハムート」レベルの絵を1枚すべて込みで5000円でといわれたときは驚いたなあ。さすがに断りました。イラスト仕事て打ち合わせや細かい修正対応もありますからね。
私の技量だと時給100円以下になりそうだったので・・・。こういうことを平気で言うクライアントさんが普通にいる業界なわけですよ・・・。


おまけに近年、日本よりずっと生活費が安い海外組まで進出してきましたからね。昨年だったかの電撃大賞の受賞者は確か韓国人とタイ人でしたから・・・。
Pixivをやっていますと中国の方(台湾が多いですね。中国はネット規制があるので)にも相当のレベルのイラストを描く方がたくさんいるのがわかります。

たとえば、日本の半額で生活できる国の人なら、イラストの値段だって日本人の半分で十分ということで、日本人よりずっと安い値段で、日本人と変わらないクオリティのイラストを描いちゃったりするわけです。そうなると、ますますイラスト価格の相場は下がるでしょうね。


イラストレーター専業というのは、漫画家として成功するより何倍も難しいと思っておいたほうがいいと思います。

漫画家は狭き門とはいえ、連載作家になれば連載が続いている間くらいは生活できる程度の収入は入りますし、一つでも人気連載をこなせば、印税がはいって、一時的であれ多く稼いでおくということもできますし、次の連載の話もくるでしょう。アニメ化されるような大人気の長期連載でもやれば、それこそ一生分稼いでおくのも可能っちゃ可能なわけです。
ハイリスクな反面、ハイリターンもあるわけです。

しかし、イラストレーターは連載という定期収入を得るのも難しいですし、連載があっても、漫画家のように毎回何十ページもあるわけじゃないですし。せいぜい小説のカット数点とか、イラストレポの1~2ページでしょう。
印税もないですから、一度描いたらその分のお金しかもらえませんしね。ラノベの表紙だって、相場5~10万くらいです(印税ほとんどないんですって)挿絵まであわせて20万あればいい方と聞いたこともあります。何百万部売れたって、イラストレーターには一ヶ月生活できるどうか、レベルのお金しか入ってこないわけです。ハイリスクですがローリターンという、鬼畜な仕事だと思います。

考えれば考えるほど、こんな仕事で一生生活なんて、どうするんだろう?と私なんかは疑問に思います。
私が知らないだけで、できる人はできるのかもしれませんが・・・。

ともあれ、完全フリーランスでイラストレーターを目指すならば、「生活費はどうするのか」「将来・老後はどうするのか」をある程度は真剣に考えておかないといけないと思います。
私はムリだと書きましたが、何らかの方法でちゃんと一生分お金を稼ぐ道をつくれるなら、もちろんそれでいいと思います。

 イラストレーターとして成功する、というのは漫画家以上に決まった道筋がありません。

ですので、気になる方は、自分が目標とするイラストレーターさんがどういう道筋をたどってそこまで行き着かれたのか、どうやって生活されているのか(こんなことは調べてもわからないかもしれませんが・・・あ、間違ってもご本人に問い合わせたりしないでくださいね。ものすごく失礼ですから・・・)多数調べてみるといいと思います。
何十人か調べれば、だいたいの傾向はわかるのではないでしょうか。

 


 

 補足


ネットの記事で気になったのものを見つけましたので。

主に法廷画家として活躍されている榎本よしたかさんの10年間のイラストレーターへの道を描いたエッセイコミックです。

トコノクボ

実をいいまして、私は芸術系の大学を出て、デザイン事務所に入って、漫画家でデビューして…という絵の関係をあっちかじりこっちかじりしているせいで、そういう仕事についていたり、目指したていたりという人は身近にたくさんいたし、今もいるんですけど、30代半ば以下(バブル以降にイラストレーターを目指した世代)でイラストだけで家族を養えるようになった人を一人も見たことがありません。

というか、自分一人ですら養えている人を知りません。(衣食住を実家や配偶者に依存していない人という意味)

なので、これは希少な経験談だ!と思い、ここで紹介させていただきます。実際にイラストで生活できている方の自伝ですので、非常に参考になると思います。

 

残念ながら(というのも変ですが)この方の基本は、いわゆる本当の漫画のようなコミック系ではなく、メインの仕事はリアル系の絵である法廷画、その他の仕事でも、イラスト系の仕事ではまだ一番需要があるキッズ・ファミリー系の絵柄のため、コミック系イラストレーターを目指す人の希望の星というわけではないのですが・・・。(キッズ・ファミリー系のイラストなら、太いクライアントさえつかめば、まだ生活できるようになる可能性は高く、コミック系の非ではないのです…)

ただし、タッチが何であろうと、フリーランスのイラストレーターがやらなければならないことはそう変わりませんので、この「トコノクボ」をずっと読んでいくと、大変参考になると思います。

だいたい、フリーランスのイラストレーターが仕事を増やすためにやっていることを、スタンダードにやっていってらっしゃいます。将来イラストレーターになりたい、っていう子は、これが上記2.のフリーランスでやる場合の、「イラストレーターのなり方」だと思っておくと、わかりやすいと思います。

たまに、人と話すのが苦手なのでイラストレーターになりたいとか言ってる子がいますが、それじゃとても務まらないのはよくわかるでしょう。

 

しかし、環境に非常に恵まれず、ハングリー精神だけでやってきたような方ですね・・・。忙しさだけなら、会社員時代は私も似たような状況でペンを握っていたことがあるので、状況はなんとなくわかりましたが、家族からかけられる金銭的・精神的負担の大きさは想像もつきません・・・。

ただ、自分の経験から、「この状況からなんとか抜け出してやる」というマイナスからのエネルギーというのは、プラスのエネルギーよりよほど強い場合が多いです。

今マイナスの状況にあると思う方は、そのエネルギーをすべて創作にむけてがんばってください。

 

この方の場合は、CADの専門スキルがあったこと、絵画教室という別の収入手段を確保したことなどに加え、法廷画家というニッチなジャンルを開拓してゆけたことが大変大きかったと思います。フリーランスで仕事をされる方は、やったことのない仕事、やれるかわからない仕事でも、とりあえず「やります!」と引き受けて、なんとかやりとげると良いと思います。

そしてやっぱり、イラストだけでは収入に限界があるようですね…。

これはしかたないと思います。

イラストレーターという職業は、イラストの単価が高くないと成り立たない仕事なんです。個人でやっている以上量産に限界がありますし、需要自体がそれほどあるわけじゃないから、量産すればいいってもんでもない。でも、今や高い単価のイラスト仕事なんて多くないです。バブル崩壊あたりからだだ崩れなので…。

収入につながりやすいのは、やっぱり印税というものがある、漫画の分野になると思います。そういうあたりを考えてこのように漫画にも挑戦されているようです。

生き残るのは強い生物でも賢い生物でもなく、変化に適応できる生物だといいますね。

世の流れや自分の状況などをよく考えて、生活手段を確保してゆく姿勢というのは大切だと思います。

 


絵を「描く」お仕事あれこれ(絵本作家)

2012-01-27 22:51:05 | ■絵に関するお仕事って

●絵本作家…絵本を描く人。作画だけの人や、お話しだけの人などいますが、作画だけの場合は絵本作家というより「イラストレーター」に入ると思いますので、除きます。

すみませんが、ぜんっぜんわかりません。(なら書くなよという話ですが、一応項目にあげちゃったもので)

絵本作家については、なんというか、基本的に「目指してなる」タイプの仕事ではないのでは?というのが個人的な感想です。

まず、イラストレーター同様、専業で食べていける道というのがほとんどない。

絵本作家として生きている人のほとんどは、主婦や幼稚園の先生、普通の会社員など、もともと別に生活の糧を得る道があり、副業として始めたものが、たまたま人気が出てベストセラーになり、結果的に絵本作家として生きていけるようになった・・・というような感じです。

正直、宝くじで数億あてるのに近い感覚ではと思います。

宝くじで数億あてて、結果としてそれで生活できるようになった人がいるのは事実だけど、最初から宝くじで数億あてるつもりで、そのお金だけを頼りに生活する人はいないですよね。

ほとんどの人はあたらないし、万一当たることがあったとしても、当たるまでだって生きるのにお金はかかるのですから。

そういうレベルの話だと思います。

 

絵本は、イラストレーターと違い、あたれば大きいです。印税が入り続けるからです。

たとえば「ぐりとぐら」など、何十年もずっと読み続けられる絵本などは、何十年も印税が入り続けるわけですから。

しかし、その「あたれば」というのは、漫画家が大ヒット連載をとばすのよりはるかに低い確率と思っていいと思います。

 

ですので、絵本作家になりたいという方は、まずは他に食べていける職を確保する、というのが現実的な道だと思います。

で、絵本作家になる方法ですが、これは出版社や雑誌(MOEとか?)などがやっている公募などに応募して、地道に世に出る道を探るしかないのではないでしょうか。

あとは漫画や小説と同じく、出版社にじかに持ち込むという方法もあるようです。

 

こちらも、私にはまったくわからないので…「絵本作家」「なり方」で検索すると、実際に絵本作家を目指してらっしゃる方のブログなどが出てきますので、そちらを読んだ方がいいかも・・・。

丸投げでスミマセン。